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マイプレシャス、ユアアイズライト

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 あの子が「私は夜の闇が大嫌い」と言いました。「闇に見えることをしなくなり、日の下で、わたしたちは手を出せば与えられるモノとなっている。それが大嫌い」
「夜明けは暗いというけれど」と、彼が言いました。
「なに、金言格言、先人の知恵でも言いたいの?どうぞ」
「夜明け前の一陣の風は、気持ちいいよ」
「なに、それ、知らないわ、日が昇れば観光客すら外に出ないわ、それがわたしの国だもの」


「僕は闇が怖くないんだ。真っ暗い闇は、白い壁で覆われた作業監視塔や頭脳競技場の無作為な恐怖心もなくしてくれる。でもね、ある日、僕はこっそりと屋上に登って夜明けの風を頬に受けたんだ」
「ああ、ケニー君はその目に希望を見たんだね」
「それほど大したものでもないのだけどね」
 と、ケニーは照れながら笑っていました。
「ああ、君の美しい瞳の輝きは唯一私に喜びをもたらしてくれる。You're my precious one.Mon rayon de soleil.君は私の繋がれた小指だ」


 来客が来るのは決まった時間。
 彼女は風車小屋のそばの椅子に座っています。
「父さんは夜明け前の風が好きだと言っていた、悪くない」
 風上の娘。
 夜明けの明るみ。
 それらすべてを微感覚で捉え、体を震わせるのでした。 


 
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