白と黒の館へ

主道 学

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原型館 その二

21話

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「うーんと? まずは端っこ! 端っこへと行こう。そこになら700年も変わっていないものがたくさんあるんじゃないかな?」
 僕はそういうと、みんなと接触して……?
「ちょっと、待て。どこへ行くんだ」
 雲助が聞いてきた。
「え? えーと? あ、そうだ。黄金の至宝があった白と黒のドアに行こう。そこなら館の奥に近いかも知れない。それに確かドアがもう一つあったんだ」
 僕は黄金の至宝を念じて捻じった。


 木の香りが優しく鼻を包んでくれる。
 白と黒のドアの部屋。
 中央の植木以外は隅っこに机と椅子が置いてあるだけ。その机と椅子も木で出来ていた。その木の机には、メモが置いてある。

{私の生涯でたった一つのキラキラ光るもの……大切にしたい}

 そう書かれていた。

「木の匂いがとてもいいわ。この部屋にも多分、住人が居そうね。でも、居た……のかも知れない」
 ロッテは木の机の上のメモを読んでいる。

「こっちのドアへと行くのかい。気が付いたんだが特殊な亡霊が出たら、黄金の至宝を捻じって逃げるしかないのかい? おチビちゃん。さすがに俺でも特殊な亡霊は倒せるか解らないからな」
 コルジンが布袋を片手に濃い青いドアを指差した。

「そのようだな。特殊な亡霊に出会わないように祈るしかないよ」
 グッテンが呟く。

「絶対安全なところがあれば。亡霊に出会ったら一目散にその部屋へと移動出来るのに。それでも、亡霊がいなくなるまで、その安全な部屋で立ち往生……うーん」
 僕はこの黄金の至宝で館の亡霊対策を、グッテンとしないといけないことを実感した。
「そうだな。安全な場所……。例えばコルジンの部屋や私の部屋に行って、館の亡霊がどこかに行くのを待つしかないかも知れない」
 グッテンは黄金の至宝からの緊張から解放されだした。慣れてきたのだろう。
「そうだわ! 爆弾があるわ! 父は爆弾を幾つか持っているの!」
 ロッテはニッコリして言った。

「爆弾?」

 僕たちは驚いた。

「館は魔法が掛っているから壊れないし。亡霊だけが吹き飛ぶわ。父は医者だけれど同時に発明家なのよ」
「それは素晴らしい。この原型館の魔法なら耐えうるはず」
 と、グッテン。僕には爆弾がこの館にもあるのが意外なのさ。一体……普段は何に使うのかな?
「亡霊に出会ったら私の部屋へと行きましょう」
「凄いや。ロッテ」
「ヨルダン。爆弾って何だ?」
 雲助は爆弾を知らないようだ。
「簡単に言うと人為的に爆発をする物体だ」
「ふーん。人間は賢い」
 グッテンの説明に雲助は六本足の一本で僕の顔を軽く引っ掻いた。少し感心したようだ。
 僕はもう怖いものなしで旅を楽しめるんだな。そして、館の端っこ。きっとあるはず。そこにはどんなものがあるんだろう。

 僕たちはゆっくりと、大きい水の音がする濃い青いドアを開けた。
「こりゃ」
 コルジンと同じ気持ちに、たちまち僕たちは驚いた。
 目の前には広大な滝があった。滝は大きな部屋の天井から床へと流れて、滝壺を巨大な穴の開いてある床に作っていた。膨大な水飛沫が僕たちを濡らす。その水飛沫は滝の麓に虹を作りだしていた。
「凄いところね」
 ロッテは水飛沫に両手をかざして一時の涼を得る。

「向こうにはベージュ色のドアがあるぞ」
 コルジンも涼を得ながら言った。
「しばらくここで涼しんでいたい」
 ロッテが軽やかな口調でみんなを足止めした。
「本当にこの館を造った人物は狂人だな」
 コルジンの言葉に、
「ジェームズ・ハントはそれと同時に魔法使いだったようだ」
 グッテンの言葉を聞いて僕は雲助の言葉を思い出した。

「グッテン。この館を作ったジェームズ・ハントは魔女狩りにあったんだよね?」
「俺の知識だ。けれど断片的」
 雲助と僕はグッテンに聞こうと、グッテンの顔を見る。

 グッテンは急に顔に熱が入った。
「そうだ。ジェームズ・ハントは大昔……700年以上前に魔法の実験をしていた。それは時間や空間……そして……因果律を変化させる魔法の研究で人体実験までやっていたのだ。その頃はこの館の近辺にはクロイス協会というのがあって、その機関は魔女狩りを積極的にしていたのだ。その機関に見つかったジェームズ・ハントはそれぞれの大き過ぎる館を……この近辺だけだが……を魔法の力も使ってくっつけた。そして外……いや外界だな……を遮断したと古文書に書いてある。今ではクロイス協会にその断片的な建造物が存在していると書かれていた……。何のことやら解らないが……。」
「グッテン。因果律って何?」
「原因があって結果がある。そういうことだ。必然なのだよ。恐らくジェームズ・ハントはその不可逆な因果律をひっくり返すことをしようとしていたのだろう」
 コルジンはまた柔和な表情をしている。


 ロッテはグッテンの話に感心をして拍手をしている。
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