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ルークの部屋のキリンス 3

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 今……?
「これ、今自分で動いたよな?」
「動きましたね」
「僕は詳しくないんだけど、植物って自分で勝手に動くものなの? 」
「一般的には動かないことで知られていますけど、動くものもありますよ。ただ、僕の知ってる限りでは何者かに触られたり食べられたり刺激があった時に動くのがあるくらいですかね。あと気温が高くなると動く植物もあります。だけど……」
「だけど?」
「キリンスがこんなふうに動くの初めて見ました」
「結構大きな動きだったよね」
「はい」
「しかも僕らがイチャイチャして、愛を囁きあった後だった」
「ルーク様……」
「ノエルも僕のこと愛してくれてるんだよね」
「……はい」
 ルークはぼくの返事にスーッと息を吸い込んで、幸せをかみしめるような表情になった。

 ルークの掌がぼくの頬に触れる。
 愛おしそうに何度も擦った後、その手は後ろに回りぼくの髪を何度も撫でた。
 そして自然と近くなる唇。
 一度重ねあったせいか、もう2人に遠慮はなかった。
 そっと触れたあと何度も啄まれて、そして甘く舌を絡めあった。

 唇が離れ、ルークがぼくの頬を撫でながら目を合わせた。
 隣でまたキリンスが、さわさわと音を立て始めた。まるで全身で嬉しいと表現し、踊っているようにも見える。

「やっぱり僕らを祝福しているように見えるよ。なあ、ノエル。……急かすことではないと思うけど、僕は今すぐ婚約したい」
「………」

 ぼくはその言葉を嬉しいと思う反面、どうしても首を縦には振れなかった。
 だって気になるんだサラのことが。ルークはサラのことが怖いとか違和感があるとか言っていたけれど、もしそれが単なる思い過ごしとかではなくて秘密があるのだとしたら?
 それを解決しなければ、もしかしたらまたぼくは同じような目に遭うかもしれない。そう思ったら、とてもじゃないけど「はい」とは言えない。

「もうちょっとだけ待ってください。……どう説明していいかわからないのでうまく言えないんですけど、気になることがあるんです。それを解決することさえできたら、ちゃんと返事をします」
「それは僕と幸せになることが前提だと思っていいのかい?」
「もちろんです」

 まだ何もわからない。だけど今回の巻き戻りは、やり直すチャンスかもしれないんだ。

 また婚約を破棄されて、辛い思いをするくらいならルークと関わりたくないと思っていた。ルークから逃げた方が幸せになれると思っていた。だけど――できなかった。流されたような形にはなっていたけれど、結局ルークのそばに居るのを決めたのはぼくだ。

 それならば、
 本気で諦めるのはあとでいい。今は抗って見せる。自分とルークの幸せのために。

「わかった、そういうことなら信じて待つよ」
「ありがとうございます」


 風のないこの部屋で、キリンスの葉がサワリと揺れた。
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