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サラってこんな人だった?
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馬車から降りてお兄様と2人で登校していると、ぼくらの少し先をルークとクリスが歩いていた。
「おはようございます。ルーク様、クリス」
ハロルド兄様が僕の手を引っ張りながら、 2人に挨拶をする。
「おはよう。今日もいい天気だね」
「おはようございます」
みんなが談笑しながら歩く中、ぼくは一人だけ、昨日のルークとのキスを思い出して頬を熱くしていた。
「ん? どうしたノエル。少し顔が赤いぞ。体調悪かったか?」
「いえ、大丈夫です。ちょっと暑いだけです」
「そうか?」
お兄様が首をかしげる。ルークを見ると、ルークの頬も少し赤くなっていた。
「体調が悪くないならいい。でも気をつけろよ」
「ありがとうございます」
お兄様はそれににこりと頷いて、二年の教室は向こうだからといってぼくらと別れた。
「お2人の仲が進展していたようで良かったです」
「えっ?」
何もかもお見通しといったようなクリスの言葉に、ぼくの頬がまたボンッと熱くなった。
「おい、クリス。からかうんじゃないよ」
「ははは、すみません。でも初々しくていいですね」
「……まったく」
「ルーク様ー、助けてくださいー!!」
「えっ?」
何事かと思うくらいの大声が背後からやってくる。驚いた3人が振り返ると、すごい勢いでサラがルーク様めがけて走ってくる。
そしてあと少しという距離まで近づいてきたとき、まるで何かにつまずいたように大声を上げて、サラがダイブするように倒れてきた。
え? 何につまずいたの? 石も何もないよ。
「危ない!」
ええっ?
ルークがぼくを思いっきり引き寄せて抱きしめた。思いもよらない展開だ。おかげでそのまま地面に激突しそうになったサラの腕を、とっさにクリスが引き上げる。
ええっと、今危なかったのはルークに見えたんだけど。でも、ルークの目にはぼくが危ないように見えたんだろうか?
「大丈夫か?」
クリスがよろめくサラの体を支えながら、しっかりと立たせた。
「大丈夫ですわ」
サラの態度は、どうみても助けてもらったもののする態度ではなかった。明らかにルークに助けてもらえなくて不服だと顔に書いてある。しかもお礼すら言っていない。
ルークもぼくと同じことを思っているのだろう。表情が曇っている。
それにしてもなんだろうこのわざとらしさ、サラってこんな人だった? 前はあんまり印象なかったんだけど……。
「 行こうか、クリス。じゃあ君も気をつけて」
「待ってください、ルーク様!」
「――なんだい?」
「私、ストーカーに狙われているみたいなんです。助けると思って、恋人のふりをしてくださいませんか?」
「それはできないな」
ぴしゃりとルークが即答した。そのつれない返答に、サラの声が大きくなる。
「どうしてですか?」
「どうしてって……、もうすぐ婚約が決まるんだ。余計な波風は立てたくない」
ルークの視線がぼくに向かった。直視できないくらいのとろけそうな表情だ。
「……は?」
サラの表情が瞬時に変わった。ギリギリと音がしそうなくらいに恐ろしい表情でぼくを睨む。
「じゃあ悪いけど、そういうことだから。君のクラスの担任に相談してみたらどうだろう? 必要なら警護かなにかつけてくれるかもしれないよ」
呆然とするサラをそのままに、ルークは僕とクリスを促して1年の校舎へと向かった。
「おはようございます。ルーク様、クリス」
ハロルド兄様が僕の手を引っ張りながら、 2人に挨拶をする。
「おはよう。今日もいい天気だね」
「おはようございます」
みんなが談笑しながら歩く中、ぼくは一人だけ、昨日のルークとのキスを思い出して頬を熱くしていた。
「ん? どうしたノエル。少し顔が赤いぞ。体調悪かったか?」
「いえ、大丈夫です。ちょっと暑いだけです」
「そうか?」
お兄様が首をかしげる。ルークを見ると、ルークの頬も少し赤くなっていた。
「体調が悪くないならいい。でも気をつけろよ」
「ありがとうございます」
お兄様はそれににこりと頷いて、二年の教室は向こうだからといってぼくらと別れた。
「お2人の仲が進展していたようで良かったです」
「えっ?」
何もかもお見通しといったようなクリスの言葉に、ぼくの頬がまたボンッと熱くなった。
「おい、クリス。からかうんじゃないよ」
「ははは、すみません。でも初々しくていいですね」
「……まったく」
「ルーク様ー、助けてくださいー!!」
「えっ?」
何事かと思うくらいの大声が背後からやってくる。驚いた3人が振り返ると、すごい勢いでサラがルーク様めがけて走ってくる。
そしてあと少しという距離まで近づいてきたとき、まるで何かにつまずいたように大声を上げて、サラがダイブするように倒れてきた。
え? 何につまずいたの? 石も何もないよ。
「危ない!」
ええっ?
ルークがぼくを思いっきり引き寄せて抱きしめた。思いもよらない展開だ。おかげでそのまま地面に激突しそうになったサラの腕を、とっさにクリスが引き上げる。
ええっと、今危なかったのはルークに見えたんだけど。でも、ルークの目にはぼくが危ないように見えたんだろうか?
「大丈夫か?」
クリスがよろめくサラの体を支えながら、しっかりと立たせた。
「大丈夫ですわ」
サラの態度は、どうみても助けてもらったもののする態度ではなかった。明らかにルークに助けてもらえなくて不服だと顔に書いてある。しかもお礼すら言っていない。
ルークもぼくと同じことを思っているのだろう。表情が曇っている。
それにしてもなんだろうこのわざとらしさ、サラってこんな人だった? 前はあんまり印象なかったんだけど……。
「 行こうか、クリス。じゃあ君も気をつけて」
「待ってください、ルーク様!」
「――なんだい?」
「私、ストーカーに狙われているみたいなんです。助けると思って、恋人のふりをしてくださいませんか?」
「それはできないな」
ぴしゃりとルークが即答した。そのつれない返答に、サラの声が大きくなる。
「どうしてですか?」
「どうしてって……、もうすぐ婚約が決まるんだ。余計な波風は立てたくない」
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「……は?」
サラの表情が瞬時に変わった。ギリギリと音がしそうなくらいに恐ろしい表情でぼくを睨む。
「じゃあ悪いけど、そういうことだから。君のクラスの担任に相談してみたらどうだろう? 必要なら警護かなにかつけてくれるかもしれないよ」
呆然とするサラをそのままに、ルークは僕とクリスを促して1年の校舎へと向かった。
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