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魔王の右腕
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ザイアス、リネットとも再会した。ザイアスとリネットはいつの間にか結婚していて、結婚報告に俺は落ち込んだ。しかし数十年共に冒険者仲間をしていれば恋仲になる事も不思議ではないと自分に言い聞かせた。
「ザイアス、リネットのどこが気に入った。リネット、ザイアスのどこに惚れた」
俺は仲良く2人で椅子に座るザイアスとリネットの肩越しに質問を繰り返していた。
「連司先輩怖いですよ」
「レンジ、そろそろ作戦会議を開く。座ってくれ」
部隊長のシュミルは魔王国南部の遺跡にあるゴブリンの武器製造拠点の襲撃を計画していた。
魔王国に連れてこられた人々を中心に抵抗勢力を結成したシュミルは勇者一行が来たことで反転攻勢を仕掛けようとしていた。
武器製造拠点にいる仲間の知らせではゴブリンが200体、労働力の人族やドワーフなどが20人いる。ゴブリンを倒してドワーフ魔族以外を助け出すのが今回の作戦だった。
翌日。シュミル、ザイアス、リネット、俺、神村先輩、翔吾の精鋭部隊で遺跡に潜入した。
石造りの広い空間に炉や作業台を作り、鉄を流して固めただけの粗悪な武器を量産している。
「いくぞ!」
シュミルが弓でゴブリンを一体倒したのを合図に突撃した。
ゴブリンは奇襲に慌てて右往左往している。救出にきたとすぐに察したドワーフたちは武器を取り反撃にでた。
半分ほどゴブリンを倒したところでゴブリン達は引いて行った。ところが遺跡の奥からゴブリンより俺たちよりも数倍も大きな高さがある鎧を着た巨人が現れると、ゴブリン達は巨人の後ろに隠れてギィギィと鳴いて威嚇した。
「魔王の右腕、オルデカンが何故こんな南部の遺跡に!」
シュミルが驚愕していると、シュミル目掛けて長さ5メートル、幅2メートルの巨大な剣をオルデカンは振り下ろした。
衝撃で地面の石畳は吹き飛び、土埃が舞う。
「姉貴!」
「大丈夫だ!避けた」
シュミルは避けていた。オルデカンの巨剣の攻撃は大振りでゆっくりしていた。
弓を構えて放ったがオルデカンには無傷。
「またくるぞ!」
シュミルが叫んだ。先程より少し早くなった振り。大振りとはいえ、なかなか間合いに入れない。
俺はオルデカンの動きに注意しながら、ゴブリンから落ちた魔石を吸収していった。
神村先輩が炎の火弾を数発浴びせる。少し後ろに後退するオルデカンだが、鎧は黒く焦げるだけでダメージにはなっていない。
今度はザイアスに巨剣が襲う。速さが増している。ザイアスは間合いに入りすぎていた。そこにリネットが割って入って盾で巨剣の軌道を変えた。盾は粉々に砕け、リネットの腕は脱臼した。だらりと下がるリネットの腕。リネットをザイアスは支えて一時後退した。
「まずいな」
シュミルが呟く。
俺はあらかたゴブリンから落ちた魔石を吸収してオルデカンと対峙した。目の前にいる巨大の頭は見上げるほどに高い。巨剣も目の前にすると思ったより長く太い。
「後方支援は任せて」
神村先輩が親指を上げる。俺はそれに合図した。
オルデカンは横に薙ぎ払い、飛んで避けた。またオルデカンが巨剣を振り上げて俺に振り下ろした。
俺は魔力を全身に巡らせて剣に集中する。
重い!オルデカンの一撃を止めて、オルデカンの剣に沿うように飛んで吸収した魔石の全ての力を解放してオルデカンの腹を叩き切った。
真っ二つになったオルデカンはゆっくりと地面に倒れた。
終わった。案外弱かった。俺はオルデカン
から後方にいる皆の方を振り返った。
「おい!治癒魔法は!傷薬とかないのか!」
珍しく翔吾が叫んでいる。
俺も一瞬何が起きたのか分からなかったが、振り返った先には肩から血を流して正座した状態で俯く神村先輩の姿だった。
なんで?頭がパニックになる。確かに俺は一撃を止めた。
オルデカンの狙いは最初から俺ではなく神村先輩だったのか。巨剣を止めた先端に神村先輩はいた。
「先輩!神村先輩!シュミルさん!」
シュミルは首を横に振る。
俺が急いで神村先輩の元に駆け寄った時には先輩の息は絶え絶えだった。
「連司くん・・・ごめん。・・・あなたに近付き過ぎて、怪我しちゃた」
神村先輩の右肩から胸元まで深い斬り傷で血が止まらない。
「先輩!」
俺は泣いた。俺がしっかりガード出来ていれば神村先輩は深傷を負わなくて済んだ。
「今、治癒魔法使いの所へ連れて行きます」
「レンジ。もう手遅れだ。助からない」
シュミルが残酷な宣告をする。
「私はもう・・・帰ったら台所の、引き出しの、ノートを読んで。これは私の最後の力」
神村先輩は血のついた左手で俺と翔吾の頬を軽く触った。その瞬間、俺は会社のエレベーターに戻っていた。
チン!エレベーターが階に止まる音がしてドアが開く。
「どうなっているんだよ!翔吾!」
「分かりませんよ俺だって!神村先輩は?今さっきまで目の前にいた先輩は?」
「元の戻ってしまった・・・」
しばらくしてエレベーターのドアが閉まると俺は泣き崩れた。
「連司先輩!立ってください!神村先輩が伝えた台所のノート探しに行きましょう」
翔吾は俺の腕を掴み、立たせた。台所の引き出し。神村先輩と同棲していた時に俺のマンションで毎日料理を作ってくれた。その台所の引き出しのことだろうか?翔吾と俺はマンションに急いだ。
「ザイアス、リネットのどこが気に入った。リネット、ザイアスのどこに惚れた」
俺は仲良く2人で椅子に座るザイアスとリネットの肩越しに質問を繰り返していた。
「連司先輩怖いですよ」
「レンジ、そろそろ作戦会議を開く。座ってくれ」
部隊長のシュミルは魔王国南部の遺跡にあるゴブリンの武器製造拠点の襲撃を計画していた。
魔王国に連れてこられた人々を中心に抵抗勢力を結成したシュミルは勇者一行が来たことで反転攻勢を仕掛けようとしていた。
武器製造拠点にいる仲間の知らせではゴブリンが200体、労働力の人族やドワーフなどが20人いる。ゴブリンを倒してドワーフ魔族以外を助け出すのが今回の作戦だった。
翌日。シュミル、ザイアス、リネット、俺、神村先輩、翔吾の精鋭部隊で遺跡に潜入した。
石造りの広い空間に炉や作業台を作り、鉄を流して固めただけの粗悪な武器を量産している。
「いくぞ!」
シュミルが弓でゴブリンを一体倒したのを合図に突撃した。
ゴブリンは奇襲に慌てて右往左往している。救出にきたとすぐに察したドワーフたちは武器を取り反撃にでた。
半分ほどゴブリンを倒したところでゴブリン達は引いて行った。ところが遺跡の奥からゴブリンより俺たちよりも数倍も大きな高さがある鎧を着た巨人が現れると、ゴブリン達は巨人の後ろに隠れてギィギィと鳴いて威嚇した。
「魔王の右腕、オルデカンが何故こんな南部の遺跡に!」
シュミルが驚愕していると、シュミル目掛けて長さ5メートル、幅2メートルの巨大な剣をオルデカンは振り下ろした。
衝撃で地面の石畳は吹き飛び、土埃が舞う。
「姉貴!」
「大丈夫だ!避けた」
シュミルは避けていた。オルデカンの巨剣の攻撃は大振りでゆっくりしていた。
弓を構えて放ったがオルデカンには無傷。
「またくるぞ!」
シュミルが叫んだ。先程より少し早くなった振り。大振りとはいえ、なかなか間合いに入れない。
俺はオルデカンの動きに注意しながら、ゴブリンから落ちた魔石を吸収していった。
神村先輩が炎の火弾を数発浴びせる。少し後ろに後退するオルデカンだが、鎧は黒く焦げるだけでダメージにはなっていない。
今度はザイアスに巨剣が襲う。速さが増している。ザイアスは間合いに入りすぎていた。そこにリネットが割って入って盾で巨剣の軌道を変えた。盾は粉々に砕け、リネットの腕は脱臼した。だらりと下がるリネットの腕。リネットをザイアスは支えて一時後退した。
「まずいな」
シュミルが呟く。
俺はあらかたゴブリンから落ちた魔石を吸収してオルデカンと対峙した。目の前にいる巨大の頭は見上げるほどに高い。巨剣も目の前にすると思ったより長く太い。
「後方支援は任せて」
神村先輩が親指を上げる。俺はそれに合図した。
オルデカンは横に薙ぎ払い、飛んで避けた。またオルデカンが巨剣を振り上げて俺に振り下ろした。
俺は魔力を全身に巡らせて剣に集中する。
重い!オルデカンの一撃を止めて、オルデカンの剣に沿うように飛んで吸収した魔石の全ての力を解放してオルデカンの腹を叩き切った。
真っ二つになったオルデカンはゆっくりと地面に倒れた。
終わった。案外弱かった。俺はオルデカン
から後方にいる皆の方を振り返った。
「おい!治癒魔法は!傷薬とかないのか!」
珍しく翔吾が叫んでいる。
俺も一瞬何が起きたのか分からなかったが、振り返った先には肩から血を流して正座した状態で俯く神村先輩の姿だった。
なんで?頭がパニックになる。確かに俺は一撃を止めた。
オルデカンの狙いは最初から俺ではなく神村先輩だったのか。巨剣を止めた先端に神村先輩はいた。
「先輩!神村先輩!シュミルさん!」
シュミルは首を横に振る。
俺が急いで神村先輩の元に駆け寄った時には先輩の息は絶え絶えだった。
「連司くん・・・ごめん。・・・あなたに近付き過ぎて、怪我しちゃた」
神村先輩の右肩から胸元まで深い斬り傷で血が止まらない。
「先輩!」
俺は泣いた。俺がしっかりガード出来ていれば神村先輩は深傷を負わなくて済んだ。
「今、治癒魔法使いの所へ連れて行きます」
「レンジ。もう手遅れだ。助からない」
シュミルが残酷な宣告をする。
「私はもう・・・帰ったら台所の、引き出しの、ノートを読んで。これは私の最後の力」
神村先輩は血のついた左手で俺と翔吾の頬を軽く触った。その瞬間、俺は会社のエレベーターに戻っていた。
チン!エレベーターが階に止まる音がしてドアが開く。
「どうなっているんだよ!翔吾!」
「分かりませんよ俺だって!神村先輩は?今さっきまで目の前にいた先輩は?」
「元の戻ってしまった・・・」
しばらくしてエレベーターのドアが閉まると俺は泣き崩れた。
「連司先輩!立ってください!神村先輩が伝えた台所のノート探しに行きましょう」
翔吾は俺の腕を掴み、立たせた。台所の引き出し。神村先輩と同棲していた時に俺のマンションで毎日料理を作ってくれた。その台所の引き出しのことだろうか?翔吾と俺はマンションに急いだ。
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