9 / 18
シーニアの町
しおりを挟む
荷馬車で1日半移動して、山道を下る。木々の間からシーニアの街が一望できた。街の広さはミルクテの倍以上ある。石造りの城の周りには民家が広がり、石造りの壁が街を囲む。2本の川の中洲にあるシーニアの街は難攻不落で10年前の魔王国軍も素通りして行ったと行商人のダンは語っていた。
シーニアの街は、行商人の手引きですんなり入ることが出来た。
「顔馴染みの門兵がいましてね。君たちのことは冒険者と行商見習いだと言って通しておきましたよ。また何かあれば言ってください」
「ありがとうございます。しかし俺たちは金がありません。お返しできるものがなくて」
「お金は結構。また何処かで私のことを見かけたら商品でも買ってください。では私はこれで」
「なんて良い人なんだぁぁ」
翔吾は号泣して手を振っていた。
「泣くなよ」
貰い泣きして俺も泣きそうだ。
「さぁ!とりあえずギルド。それから、街の情報収集ね」
「泣いてないで神村先輩を見習え。男ども!」
ギルドで翔吾と真帆の冒険者登録を済ませた。ギルドで適正を計りたいと尋ねると、魔法通り四番地の角にある雑貨屋を訪ねるといいと教えてくれた。
人に尋ねながら雑貨屋に着いた。外観は石造りで窓から蝋燭の灯りが揺らぐ薄暗い店内が見えた。ドアを開けると埃と湿気の臭いが鼻を襲う。
「くっさ!」
翔吾が思わず鼻を摘む。
「失礼でしょ」
神村先輩が叱る。
店内は床から本が山積みになり、棚という棚には紙の箱とスクロールがぎっしり詰まって、テーブルには乾燥した花や葉っぱ、腐った色のキノコに何らかの生物の臓器が入ったガラスの瓶が置かれていた。
蝋燭の灯りがふと店内の奥にいた三角帽子の店員に俺は見覚えがあった。
「アイラさん!」
「知り合い?」
「誰?」
「アイラ?」
初めて異世界転移した日に傭兵リュードと
魔法使いアイラに助けられた。そのアイラがいた。
「覚えていますか?転移して4回目だから30年ぶりになるのか。あの日魔獣から追われた時にリュードさんと助けてくれた」
アイラは俺の顔を近くで見た。少女だったアイラはもう中年の女性になっているはずだったがエルフ族は歳をとらない。姿形もあまり変わらない。30年前と変わらない少女がそこにはいたのだ。
「あぁ、あの時の」
「リュードさんは、元気してますか?」
「リュードなら奥にいるよ。リュード!」
カーテンで仕切られた奥の部屋から杖で体を支えながら歩く年老いた御老体が俺の前に現れた。筋肉隆々、日焼けして逞しい姿は数十年の歳月で失われた。今や骨と皮。シワだらけになった顔を向けてニチャリと笑った。
「リュード、覚えてる?私達が助けた青年」
「むにゃむにゃ。さぁー、いつ助けたぁ?」
「遠い昔。私は覚えてるよ」
「そぁか。んなら、助けたぁ」
「リュードはもうお爺ちゃんになった。覚えてないみたいだね。エルフ族は長生きだから寿命は300年以上はある。昔の記憶も余り忘れることはない」
「俺は一言お礼が言いたくて。あの時はありがとうございました!」
リュード爺はニカッと笑って杖とは反対側の手を挙げた。
「リュードも嬉しそうだ。ところで君たちはこんな寂れた店に何か用?」
ギルドから紹介されたことを伝えるとアイラは大きな水晶玉を奥の部屋から持ってきて机に置いた。
「適正や能力が知りたいなら、この水晶玉に手を置いてほしい」
「では、私からいいですか!」
真帆が挙手して、水晶玉に手を置いた。
真帆と対面する形でアイラが水晶玉に浮かぶ言葉を読む。そして真帆に告げた。
「魔力は殆どないに等しい。しかし身体能力はかなり高い」
「魔力なし!」
肩を落として落ち込む真帆を無視してアイラは続ける。
「身体能力はリュード以上にある。それに見切りや反射にも長けている。モンクや剣士の適正がある」
「モンク!拳で敵を貫く。魔法使いは諦めてモンクになります」
「次は翔吾。いってこい」
「はい!」
翔吾は水晶玉に手を置いた。
「魔力は並みにある。身体能力は並みにある。剣士、モンク、弓使い、魔法使い、シーフ、タンクなんでも器用にできるぐらい適正は高い」
次は神村先輩だ。
「魔力が私以上にある。国随一の魔導士並みの魔力量を持っている。間違いなく魔法使いを極めるべき逸材」
俺の番だ。水晶玉に手を置いてすぐアイラの顔つきが変わった。
「知ってたの?」
「何をですか?」
「君はマジックブレイカーだ」
「前にシュミルさんから聞いてました」
アイラは俺を少し睨んだように見えた。
「今まで何処にいた?マジックブレイカーは魔王、勇者、前国王しか持っていない特殊能力で前国王は崩御して、勇者は魔王に破れた。だから今は君と魔王しかマジックブレイカーは存在しない」
「そんな希少な能力でも俺には全く能力がない!」
「マジックブレイカーは決まって魔剣士だと知ってるかい?魔剣士は魔石やアイテムを体に吸収して、武器の強さによって能力が解放される。つまり、大量の魔石を吸収して良い武器で戦えば、相当な強さになる。だから魔王を倒す唯一の能力と言われている」
そういえば今までの戦闘はペティナイフとボロボロの剣で素振りしていた。武器が悪かったわけか。
「残念だけど、この水晶玉の情報は城の兵士と共有されているから、あと少しで兵士が来るよ」
「計ったのか!」
「違う。ようやく見つけた。みんなずっと待ち侘びてたのさ、魔王を倒せる逸材を」
アイラの言った通り、兵士がアイラの店の前に押し寄せ取り囲まれた。
仕方なくアイラの店を出て俺たちは兵士に連れられてシーニア城に連行された。
シーニアの街は、行商人の手引きですんなり入ることが出来た。
「顔馴染みの門兵がいましてね。君たちのことは冒険者と行商見習いだと言って通しておきましたよ。また何かあれば言ってください」
「ありがとうございます。しかし俺たちは金がありません。お返しできるものがなくて」
「お金は結構。また何処かで私のことを見かけたら商品でも買ってください。では私はこれで」
「なんて良い人なんだぁぁ」
翔吾は号泣して手を振っていた。
「泣くなよ」
貰い泣きして俺も泣きそうだ。
「さぁ!とりあえずギルド。それから、街の情報収集ね」
「泣いてないで神村先輩を見習え。男ども!」
ギルドで翔吾と真帆の冒険者登録を済ませた。ギルドで適正を計りたいと尋ねると、魔法通り四番地の角にある雑貨屋を訪ねるといいと教えてくれた。
人に尋ねながら雑貨屋に着いた。外観は石造りで窓から蝋燭の灯りが揺らぐ薄暗い店内が見えた。ドアを開けると埃と湿気の臭いが鼻を襲う。
「くっさ!」
翔吾が思わず鼻を摘む。
「失礼でしょ」
神村先輩が叱る。
店内は床から本が山積みになり、棚という棚には紙の箱とスクロールがぎっしり詰まって、テーブルには乾燥した花や葉っぱ、腐った色のキノコに何らかの生物の臓器が入ったガラスの瓶が置かれていた。
蝋燭の灯りがふと店内の奥にいた三角帽子の店員に俺は見覚えがあった。
「アイラさん!」
「知り合い?」
「誰?」
「アイラ?」
初めて異世界転移した日に傭兵リュードと
魔法使いアイラに助けられた。そのアイラがいた。
「覚えていますか?転移して4回目だから30年ぶりになるのか。あの日魔獣から追われた時にリュードさんと助けてくれた」
アイラは俺の顔を近くで見た。少女だったアイラはもう中年の女性になっているはずだったがエルフ族は歳をとらない。姿形もあまり変わらない。30年前と変わらない少女がそこにはいたのだ。
「あぁ、あの時の」
「リュードさんは、元気してますか?」
「リュードなら奥にいるよ。リュード!」
カーテンで仕切られた奥の部屋から杖で体を支えながら歩く年老いた御老体が俺の前に現れた。筋肉隆々、日焼けして逞しい姿は数十年の歳月で失われた。今や骨と皮。シワだらけになった顔を向けてニチャリと笑った。
「リュード、覚えてる?私達が助けた青年」
「むにゃむにゃ。さぁー、いつ助けたぁ?」
「遠い昔。私は覚えてるよ」
「そぁか。んなら、助けたぁ」
「リュードはもうお爺ちゃんになった。覚えてないみたいだね。エルフ族は長生きだから寿命は300年以上はある。昔の記憶も余り忘れることはない」
「俺は一言お礼が言いたくて。あの時はありがとうございました!」
リュード爺はニカッと笑って杖とは反対側の手を挙げた。
「リュードも嬉しそうだ。ところで君たちはこんな寂れた店に何か用?」
ギルドから紹介されたことを伝えるとアイラは大きな水晶玉を奥の部屋から持ってきて机に置いた。
「適正や能力が知りたいなら、この水晶玉に手を置いてほしい」
「では、私からいいですか!」
真帆が挙手して、水晶玉に手を置いた。
真帆と対面する形でアイラが水晶玉に浮かぶ言葉を読む。そして真帆に告げた。
「魔力は殆どないに等しい。しかし身体能力はかなり高い」
「魔力なし!」
肩を落として落ち込む真帆を無視してアイラは続ける。
「身体能力はリュード以上にある。それに見切りや反射にも長けている。モンクや剣士の適正がある」
「モンク!拳で敵を貫く。魔法使いは諦めてモンクになります」
「次は翔吾。いってこい」
「はい!」
翔吾は水晶玉に手を置いた。
「魔力は並みにある。身体能力は並みにある。剣士、モンク、弓使い、魔法使い、シーフ、タンクなんでも器用にできるぐらい適正は高い」
次は神村先輩だ。
「魔力が私以上にある。国随一の魔導士並みの魔力量を持っている。間違いなく魔法使いを極めるべき逸材」
俺の番だ。水晶玉に手を置いてすぐアイラの顔つきが変わった。
「知ってたの?」
「何をですか?」
「君はマジックブレイカーだ」
「前にシュミルさんから聞いてました」
アイラは俺を少し睨んだように見えた。
「今まで何処にいた?マジックブレイカーは魔王、勇者、前国王しか持っていない特殊能力で前国王は崩御して、勇者は魔王に破れた。だから今は君と魔王しかマジックブレイカーは存在しない」
「そんな希少な能力でも俺には全く能力がない!」
「マジックブレイカーは決まって魔剣士だと知ってるかい?魔剣士は魔石やアイテムを体に吸収して、武器の強さによって能力が解放される。つまり、大量の魔石を吸収して良い武器で戦えば、相当な強さになる。だから魔王を倒す唯一の能力と言われている」
そういえば今までの戦闘はペティナイフとボロボロの剣で素振りしていた。武器が悪かったわけか。
「残念だけど、この水晶玉の情報は城の兵士と共有されているから、あと少しで兵士が来るよ」
「計ったのか!」
「違う。ようやく見つけた。みんなずっと待ち侘びてたのさ、魔王を倒せる逸材を」
アイラの言った通り、兵士がアイラの店の前に押し寄せ取り囲まれた。
仕方なくアイラの店を出て俺たちは兵士に連れられてシーニア城に連行された。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~
平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。
※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる