8 / 18
10年後
しおりを挟む
最近ストレスで疲れが全く取れません。神村先輩はトイレや風呂以外は常に俺と共に生活している。何がストレスって、仕事終わりに10kmのランニングと筋トレ。それに1時間の瞑想。残業よりも過酷なハードルーティンを毎日課すこと。
日曜日はさらに過酷で30kmのランニングと素振り、図書館に行って薬草やDIYなどあらゆる雑学の習得を目指した読書。
月曜日、出社時には2人で目の下にクマができる。
社内の同僚からは「あつあつー」などいじられる始末。違う意味でホットな日常を過ごしていますよこっちは!と叫びたい。毎日ハードトレーニング。ランニング、ランニング、座学な日々。
来たる異世界転移のその日まで繰り返される毎日。
ハードなトレーニングを始めて1ヶ月。
筋力、瞬発力、体力は向上した。しかし異世界ではどれほどのステータスが上がるのか謎のまま、その日はきた。
「おはよー」
「おはよう」
いつの間にか先輩とはタメ口で話すようになっていた俺は毎朝のルーティンである筋トレを始めた。
筋トレ後に朝食。そして出社。
エレベーターに俺と神村先輩が乗った瞬間、床が真っ黒になって落ちるような感覚が襲う。
一瞬目の前が暗転したかと思うと一瞬で草原にいた。
「連司やったよ!やっと来れたね」
見覚えがある山々の景色。異世界に違いない。
「この人達どうする?」
「へ?」
俺が振り返るとエレベーターに先に乗っていた後輩の佐田翔吾と同期の小早川真帆が地面に倒れていた。
「2人を起こそう。ここは危ないから、ミルクテの町に・・・」
ミルクテの町の方を向くと既に町は無くなっていた。塀や門が倒れた木材には苔や草が生え覆われていた。
「そんな・・・」
先輩は言葉に詰まった。
町がないということは先の戦いは負けたのだろう。
シュミル達は無事なのか心配しない日はなかった。町が無くても無事でいてくれと願った。
「おはようございます。神村先輩。あれ?さっき僕は会社に着いて・・・えー!ここは何処ですか!」
翔吾が起きた。
翔吾の大声で真帆も目を覚ました。
「ふぅー」
ため息混じりに服に着いた泥を払う真帆に対して翔吾はキョロキョロ、ソワソワ落ち着きがない。
「翔吾、真帆。ここは異世界だ」
「い、異世界!?」
「それでお二人は慣れているようですが、経験者ですか?」
真帆はメガネ越しに鋭い眼光で俺を見た。
「そうなのー。私は異世界転移2回目。やっと帰ってこれた」
「神村先輩は嬉しそうですね。私は仕事がありますから早く戻りたいです。何度か来たことがあるなら、帰り方ご存知ですよね?」
「それは、ねー」
俺と神村先輩は目を合わせた。
せっかく来れた異世界。町やシュミル達の安否、異世界情勢について探りたい。それに神村先輩は魔王討伐という目標を掲げている。
「どうしてもこっちの世界で知りたいことが付き合ってくれない?」
「私だけ帰す事は?」
「特定の誰かを帰す事は出来ない」
「人事部兼総務部の私の権限で全て有給扱いにするから、真帆ちゃんと翔吾くんは付き合ってくれるかなー?」
「それなら、いいですよ私は」
「あれ?翔吾は?」
見ないうちに翔吾は消えていた。
「あーーー!助けてーー!」
上空から翔吾の声が。大きな鳥の魔獣の足に捕まり、上昇途中だった。
「先輩!」
「杖はないけど、やってみる!」
「やるって何をですか?」
真帆は神村先輩が大鳥に向けて両掌を向ける姿に眉間に皺を寄せた。
「当てないように曲げるイメージで」
掌から僅かに離れた空間に火の玉が出来上がる。
真帆はあんぐりとしていた。
火の玉、火弾は物凄い速さで大鳥目掛けてて飛んでいく。弧を描き、やがて大鳥の翼に当たった。その瞬間、大鳥は翔吾を離した。
「ぎぁぁぁぁあぁぁぁ!」
落下するタイミングを見計らって、地上に大きな水のプールを生成し翔吾を受け止めた。
「助かったぁー。神村先輩ありがとうございます」
翔吾は濡れたスーツの上着を絞りながら、戻ってきた。
「助けられてよかったよ」
「魔法ですか?魔法が存在する世界ですか?ここはファンタジーな世界ですか?」
真帆の様子が明らかにおかしい。
「私も魔法使えますか?神村先輩みたいな魔法使いになれますか?」
「えーっと、適正があって。連司くんみたいに魔法が使えない人もいるの。真帆ちゃんが一度魔法の出し方教えてみるね」
神村先輩が丁寧に指導するも真帆は全く魔法を出せず、適正がなかった。
「真帆ちゃん。落ち込まないで。私の教え方が悪かったのかな」
「そんなことないです。私に才能がなかっただけです」
「違う人に教えてもらったら魔法使えるようになるかもしれないから、元気出して」
「はい・・・」
俺達はミルクテの町周辺の地理が分からない。草原の未舗装の一本道を荷馬車が走っていた。荷馬車を呼び止め、行商人に周辺の町やミルクテの町について尋ねた。
「もう10年も前か。魔王国軍がミルクテの町を襲い壊滅させたのは。数十人の冒険者が逃げたと聞いたが、殆ど魔王国に捕らえられ連れて行かれたそうだ。捕らえられた町人や冒険者の消息は分かっていない。噂では労働力として魔王国で働いているらしいが」
もしかするとシュミル達は捕まっているかもしれない。
「魔王国に行くには?」
「国境の警備は厳重で無理だ。やめておいた方がいい。それよりよかったら近くのシーニアの街まで運ぼうか?」
「それは助かります」
俺達は行商人の荷馬車に乗ってシーニアの街を目指した。
日曜日はさらに過酷で30kmのランニングと素振り、図書館に行って薬草やDIYなどあらゆる雑学の習得を目指した読書。
月曜日、出社時には2人で目の下にクマができる。
社内の同僚からは「あつあつー」などいじられる始末。違う意味でホットな日常を過ごしていますよこっちは!と叫びたい。毎日ハードトレーニング。ランニング、ランニング、座学な日々。
来たる異世界転移のその日まで繰り返される毎日。
ハードなトレーニングを始めて1ヶ月。
筋力、瞬発力、体力は向上した。しかし異世界ではどれほどのステータスが上がるのか謎のまま、その日はきた。
「おはよー」
「おはよう」
いつの間にか先輩とはタメ口で話すようになっていた俺は毎朝のルーティンである筋トレを始めた。
筋トレ後に朝食。そして出社。
エレベーターに俺と神村先輩が乗った瞬間、床が真っ黒になって落ちるような感覚が襲う。
一瞬目の前が暗転したかと思うと一瞬で草原にいた。
「連司やったよ!やっと来れたね」
見覚えがある山々の景色。異世界に違いない。
「この人達どうする?」
「へ?」
俺が振り返るとエレベーターに先に乗っていた後輩の佐田翔吾と同期の小早川真帆が地面に倒れていた。
「2人を起こそう。ここは危ないから、ミルクテの町に・・・」
ミルクテの町の方を向くと既に町は無くなっていた。塀や門が倒れた木材には苔や草が生え覆われていた。
「そんな・・・」
先輩は言葉に詰まった。
町がないということは先の戦いは負けたのだろう。
シュミル達は無事なのか心配しない日はなかった。町が無くても無事でいてくれと願った。
「おはようございます。神村先輩。あれ?さっき僕は会社に着いて・・・えー!ここは何処ですか!」
翔吾が起きた。
翔吾の大声で真帆も目を覚ました。
「ふぅー」
ため息混じりに服に着いた泥を払う真帆に対して翔吾はキョロキョロ、ソワソワ落ち着きがない。
「翔吾、真帆。ここは異世界だ」
「い、異世界!?」
「それでお二人は慣れているようですが、経験者ですか?」
真帆はメガネ越しに鋭い眼光で俺を見た。
「そうなのー。私は異世界転移2回目。やっと帰ってこれた」
「神村先輩は嬉しそうですね。私は仕事がありますから早く戻りたいです。何度か来たことがあるなら、帰り方ご存知ですよね?」
「それは、ねー」
俺と神村先輩は目を合わせた。
せっかく来れた異世界。町やシュミル達の安否、異世界情勢について探りたい。それに神村先輩は魔王討伐という目標を掲げている。
「どうしてもこっちの世界で知りたいことが付き合ってくれない?」
「私だけ帰す事は?」
「特定の誰かを帰す事は出来ない」
「人事部兼総務部の私の権限で全て有給扱いにするから、真帆ちゃんと翔吾くんは付き合ってくれるかなー?」
「それなら、いいですよ私は」
「あれ?翔吾は?」
見ないうちに翔吾は消えていた。
「あーーー!助けてーー!」
上空から翔吾の声が。大きな鳥の魔獣の足に捕まり、上昇途中だった。
「先輩!」
「杖はないけど、やってみる!」
「やるって何をですか?」
真帆は神村先輩が大鳥に向けて両掌を向ける姿に眉間に皺を寄せた。
「当てないように曲げるイメージで」
掌から僅かに離れた空間に火の玉が出来上がる。
真帆はあんぐりとしていた。
火の玉、火弾は物凄い速さで大鳥目掛けてて飛んでいく。弧を描き、やがて大鳥の翼に当たった。その瞬間、大鳥は翔吾を離した。
「ぎぁぁぁぁあぁぁぁ!」
落下するタイミングを見計らって、地上に大きな水のプールを生成し翔吾を受け止めた。
「助かったぁー。神村先輩ありがとうございます」
翔吾は濡れたスーツの上着を絞りながら、戻ってきた。
「助けられてよかったよ」
「魔法ですか?魔法が存在する世界ですか?ここはファンタジーな世界ですか?」
真帆の様子が明らかにおかしい。
「私も魔法使えますか?神村先輩みたいな魔法使いになれますか?」
「えーっと、適正があって。連司くんみたいに魔法が使えない人もいるの。真帆ちゃんが一度魔法の出し方教えてみるね」
神村先輩が丁寧に指導するも真帆は全く魔法を出せず、適正がなかった。
「真帆ちゃん。落ち込まないで。私の教え方が悪かったのかな」
「そんなことないです。私に才能がなかっただけです」
「違う人に教えてもらったら魔法使えるようになるかもしれないから、元気出して」
「はい・・・」
俺達はミルクテの町周辺の地理が分からない。草原の未舗装の一本道を荷馬車が走っていた。荷馬車を呼び止め、行商人に周辺の町やミルクテの町について尋ねた。
「もう10年も前か。魔王国軍がミルクテの町を襲い壊滅させたのは。数十人の冒険者が逃げたと聞いたが、殆ど魔王国に捕らえられ連れて行かれたそうだ。捕らえられた町人や冒険者の消息は分かっていない。噂では労働力として魔王国で働いているらしいが」
もしかするとシュミル達は捕まっているかもしれない。
「魔王国に行くには?」
「国境の警備は厳重で無理だ。やめておいた方がいい。それよりよかったら近くのシーニアの街まで運ぼうか?」
「それは助かります」
俺達は行商人の荷馬車に乗ってシーニアの街を目指した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
ギルド・ティルナノーグサーガ 『ブルジァ家の秘密』
路地裏の喫茶店
ファンタジー
あらすじ: 請け負いギルド ティルナノーグの斧戦士グラウリーは呪われた高山ダンジョン『バルティモナ山』の秘宝を持ち帰ってほしいと言う依頼を受けた。
最初は支部が違うメンバー同士のいがみ合いがあるものの冒険が進む中で結束は深まっていく。だがメンバーの中心人物グラウリーには隠された過去があった。
ハイファンタジー、冒険譚。群像劇。
長く続く(予定の)ギルドファンタジーの第一章。
地の文描写しっかり目。最後に外伝も掲載。
現在第二章を執筆中。
※2話、3話、5話の挿絵は親友に描いてもらったものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる