2 / 21
異世界引き篭り誕生
しおりを挟む
心が痛い。怖い。逃げたい。
「起きろ!!」
俺は宿のベッドで震えながら一夜を過ごした。
一睡もしていない俺を叩き起こしたフィアリは荷物をまとめ始めた。
「パーティーを失った今、私は故郷に帰る。ソウダも好きに生きるがいい」
昨日、魔獣エギオラが去った後に俺はフィアリに引きずられて街に戻った。
フィアリはギルドに報告。
ギルドからエギオラ討伐隊が編成されたが、あれ以降エギオラは見つかっていない。
「宿は朝までだ」
フィアリは出て行った。
少し後、俺も宿の店主から追い出された。
無一文、無職、家無し。
完全に異世界で詰んだ。
ガックリと肩を落として、歩いて宿を探すが払える宿代がない。
門前払いで何処も相手にしてもらえず、ギルドも昨日のエギオラ出現で手一杯でギルドの受付は臨時休業していた。
街の決まりで夜間は街中で人の往来の禁止と外出禁止の法により宿のない俺は、街からエギオラみたいな野獣が現れるかもしれない草原に追い出された。
残酷なこの世界で剣士や冒険者の夢を捨てて、暗闇の草原を歩き始めた。
街からしばらく草原を歩いていくと、あばら屋があった。
小さくて今にも崩れ落ちそうな木造の平屋。3畳ぐらいはある。
誰もいない暗い木の床で、疲れが出て泥のように寝た。
それから数日ずっと引きこもり、完全にニート化した。
空腹と喉の渇きが極限に達したある日。
ドアを叩く音がして、起き上がった。
ドアを開いて腰から後ろに倒れた。
ドアの向こうには小さなモンスターがいた。エモイより大きい。チーターの子どもの頃のような姿をしている。
完全に捕食される。
モンスターは俺に近づいた。
「ん?」
脚から血が流れている。かなり痛そうだ。
俺は手をかざし、使ったこともない回復魔法をイメージした。
すると手から緑色の光がモンスターの傷口に当たり、傷口が閉じていく。
「嘘だろ……治った」
モンスターの傷が完全に治った。
やってしまった!
元気になったモンスターは俺を襲うに違いない。
モンスターは俺に近づいた。
そして前足が俺の足に乗り、膝に乗り、一歩一歩俺の顔に近づくとモンスターは口を大きく開き、俺の顔を舐めた。
舐め回されて懐かれた!
「お前……」
チーター風の小さなモンスターは散々顔を舐め回して体を擦ったり戯れた後、俺の膝に顔を乗せて寝た。
夜になり、モンスターは出て行った。
一安心して眠りについた。
朝、ドアを叩く音がして昨日のモンスターが家に入ってきた。
俺の服を引っ張り外に連れ出された俺の目の前には衝撃的な光景が広がっている。
家の前の草原に多数のモンスターが静かに座っている。
角の生えた馬みたいなモンスター。
タコみたいな軟体なモンスター。
頭が3つある獣。
綺麗な尻尾かと思ったら尻尾の先が蛇のモンスター。
数えただけで50体超!
どのモンスターの傷があった……。
「俺は獣医じゃねー!」
家に入ってドアを閉める。
突然、突風で家が崩れ落ちた。
モンスターが俺を囲みギラギラした目で俺を見下ろした。
「分かりました。治します」
半泣きになりながら、治療を始めた。
全てのモンスターを治療した。
モンスターは俺の首を掴んで持ち上げると角の生えた馬みたいモンスターの背中に乗せた。
いきなり走り出した。
それに続いて全てのモンスターが後を追う。
「何処に連れて行くんだよ!」
森を抜け、山を越え、また草原を抜けて黒い木が密集する森の中に入った。
森の中は太陽が燦々と照らす昼のように明るく不思議と森の中ということを忘れる。
モンスターの足が止まり、再び首を掴まれて下された。
森の奥から1人の人の姿をした者が現れた。
顔は人間だが姿は猫耳で手足は猫だが人のように二足歩行。背も高くスラリとして目は大きくかなりの美人だ。
「私はネキ族のキャティと申します」
「喋れるの!?」
「ええ。半獣ですから」
「半獣?」
「人と獣の間に生まれた者のことです。そして、私はネキ族とこの地の魔獣を従える長でもあります」
「ここに連れてきて、俺を煮て食べるの?」
「いいえ、そのような無礼はしません。ケトロから聞きました。ケトロを助け、多くの魔獣を助けたと」
「ケトロ……。あのチーターみたいなモンスターか」
「そこでお願いがございます。私達をこれからもお救い下さい」
「え?」
キャティが平伏すると魔獣も脚を崩して平伏した。
「でも君たちは人に狩られる側。俺は人で、君たちはモンスターだ」
「あれを!」
キャティが手を叩くと、俺の前に食べ物と水が並べられた。
「おもてなしする用意は出来ています」
喉から手が出るぐらい旨そうな匂いが漂う。
「でも……」
「あれを!」
俺の前に金の塊が置かれた。
「これは貴方の物。これ以上の富は貴方の物になります」
「分かりました!喜んでやります!」
キャティは笑顔になった。
「ありがとうございます!我がおうよ!我々のおうよ」
「おう?王ー!?」
「起きろ!!」
俺は宿のベッドで震えながら一夜を過ごした。
一睡もしていない俺を叩き起こしたフィアリは荷物をまとめ始めた。
「パーティーを失った今、私は故郷に帰る。ソウダも好きに生きるがいい」
昨日、魔獣エギオラが去った後に俺はフィアリに引きずられて街に戻った。
フィアリはギルドに報告。
ギルドからエギオラ討伐隊が編成されたが、あれ以降エギオラは見つかっていない。
「宿は朝までだ」
フィアリは出て行った。
少し後、俺も宿の店主から追い出された。
無一文、無職、家無し。
完全に異世界で詰んだ。
ガックリと肩を落として、歩いて宿を探すが払える宿代がない。
門前払いで何処も相手にしてもらえず、ギルドも昨日のエギオラ出現で手一杯でギルドの受付は臨時休業していた。
街の決まりで夜間は街中で人の往来の禁止と外出禁止の法により宿のない俺は、街からエギオラみたいな野獣が現れるかもしれない草原に追い出された。
残酷なこの世界で剣士や冒険者の夢を捨てて、暗闇の草原を歩き始めた。
街からしばらく草原を歩いていくと、あばら屋があった。
小さくて今にも崩れ落ちそうな木造の平屋。3畳ぐらいはある。
誰もいない暗い木の床で、疲れが出て泥のように寝た。
それから数日ずっと引きこもり、完全にニート化した。
空腹と喉の渇きが極限に達したある日。
ドアを叩く音がして、起き上がった。
ドアを開いて腰から後ろに倒れた。
ドアの向こうには小さなモンスターがいた。エモイより大きい。チーターの子どもの頃のような姿をしている。
完全に捕食される。
モンスターは俺に近づいた。
「ん?」
脚から血が流れている。かなり痛そうだ。
俺は手をかざし、使ったこともない回復魔法をイメージした。
すると手から緑色の光がモンスターの傷口に当たり、傷口が閉じていく。
「嘘だろ……治った」
モンスターの傷が完全に治った。
やってしまった!
元気になったモンスターは俺を襲うに違いない。
モンスターは俺に近づいた。
そして前足が俺の足に乗り、膝に乗り、一歩一歩俺の顔に近づくとモンスターは口を大きく開き、俺の顔を舐めた。
舐め回されて懐かれた!
「お前……」
チーター風の小さなモンスターは散々顔を舐め回して体を擦ったり戯れた後、俺の膝に顔を乗せて寝た。
夜になり、モンスターは出て行った。
一安心して眠りについた。
朝、ドアを叩く音がして昨日のモンスターが家に入ってきた。
俺の服を引っ張り外に連れ出された俺の目の前には衝撃的な光景が広がっている。
家の前の草原に多数のモンスターが静かに座っている。
角の生えた馬みたいなモンスター。
タコみたいな軟体なモンスター。
頭が3つある獣。
綺麗な尻尾かと思ったら尻尾の先が蛇のモンスター。
数えただけで50体超!
どのモンスターの傷があった……。
「俺は獣医じゃねー!」
家に入ってドアを閉める。
突然、突風で家が崩れ落ちた。
モンスターが俺を囲みギラギラした目で俺を見下ろした。
「分かりました。治します」
半泣きになりながら、治療を始めた。
全てのモンスターを治療した。
モンスターは俺の首を掴んで持ち上げると角の生えた馬みたいモンスターの背中に乗せた。
いきなり走り出した。
それに続いて全てのモンスターが後を追う。
「何処に連れて行くんだよ!」
森を抜け、山を越え、また草原を抜けて黒い木が密集する森の中に入った。
森の中は太陽が燦々と照らす昼のように明るく不思議と森の中ということを忘れる。
モンスターの足が止まり、再び首を掴まれて下された。
森の奥から1人の人の姿をした者が現れた。
顔は人間だが姿は猫耳で手足は猫だが人のように二足歩行。背も高くスラリとして目は大きくかなりの美人だ。
「私はネキ族のキャティと申します」
「喋れるの!?」
「ええ。半獣ですから」
「半獣?」
「人と獣の間に生まれた者のことです。そして、私はネキ族とこの地の魔獣を従える長でもあります」
「ここに連れてきて、俺を煮て食べるの?」
「いいえ、そのような無礼はしません。ケトロから聞きました。ケトロを助け、多くの魔獣を助けたと」
「ケトロ……。あのチーターみたいなモンスターか」
「そこでお願いがございます。私達をこれからもお救い下さい」
「え?」
キャティが平伏すると魔獣も脚を崩して平伏した。
「でも君たちは人に狩られる側。俺は人で、君たちはモンスターだ」
「あれを!」
キャティが手を叩くと、俺の前に食べ物と水が並べられた。
「おもてなしする用意は出来ています」
喉から手が出るぐらい旨そうな匂いが漂う。
「でも……」
「あれを!」
俺の前に金の塊が置かれた。
「これは貴方の物。これ以上の富は貴方の物になります」
「分かりました!喜んでやります!」
キャティは笑顔になった。
「ありがとうございます!我がおうよ!我々のおうよ」
「おう?王ー!?」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww
刺狼(しろ)
ファンタジー
ニートの主人公は一回50万の報酬を貰えるという治験に参加し、マッドサイエンティストの手によってサイボーグにされてしまう。
さらに、その彼に言われるがまま謎の少女へ自らの血を与えると、突然魔法陣が現れ……。
という感じの話です。
草生やしたりアニメ・ゲーム・特撮ネタなど扱います。フリーダムに書き連ねていきます。
小説の書き方あんまり分かってません。
表紙はフリー素材とカスタムキャスト様で作りました。暇つぶしになれば幸いです。
エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
ポリ 外丸
ファンタジー
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。
海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。
その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。
もう一度もらった命。
啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。
前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
『ヒヨコの加護』をもらい『焼き鳥』になるか、ならないか。石と己を磨いてスローライフ。
コヨコヨ
ファンタジー
下級貴族の青年、ニクスは成人になっても社会が怖いと言って騎士にならず家の中で石と剣の腕をずっと磨き続けていた。
ある日、父親に未開拓の土地へと送ると言われ、開拓して来いと命令される。
ニクスは無理だというも、騎士として働くか比較的自由な未開拓の土地に向うか選ばなければならなかった。どうしても働きたくなかったニクスは泣く泣く家を出る。
実家から遥か遠くの土地へと脚を運んだニクスは自由な生活を送るため、奮闘していた。
事が順調に運んでいるはずだったのだが……。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います
珈琲党
ファンタジー
人類が滅亡した後の世界に、俺はバンパイアとして蘇った。
常識外れの怪力と不死身の肉体を持った俺だが、戦闘にはあまり興味がない。
俺は狼の魔物たちを従えて、安全圏を拡大していく。
好奇心旺盛なホビットたち、技術屋のドワーフたち、脳筋女騎士に魔術師の少女も仲間に加わった。
迷惑なエルフに悩まされつつも、俺たちは便利で快適な生活を目指して奮闘するのだった。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる