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ダイチのいいところ
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「お前、今帰りか?」
「あ、うん」
「元気そうだな」
「そう、だね…」
たったそれだけの会話だけど、懐かしさでなぜか泣けてきた。
「な、なんだよお前…」
「あ、ごめん…」
◇◇◇
どうしようか迷ったけれど、今はダイチは他校生だという気楽さもあって、わたしはシュウ君についての気がかりなことを話すことにした。
とりあえず、小学生のとき、ダイチやほかの友達と一緒に遊んだ公園に行った。
といっても、もうけっこう暗くなっているので、遊具で遊んでいる子はいない。
わたしたちはブランコをいす代わりにして腰かけた。
「そうか…」
ダイチはゆっくりスイングしながらわたしの話を聞いて、一言だけそう言った。
別にいか代わりなんだから、揺らす必要はないんだけど、ブランコに乗ると、漕がずにいられないんだろう。
なんだかダイチらしいなと思った。
「わたしが考えすぎかもしれないんだけどさ…」
「いや、そういう直感みたいなのって大事なんじゃね?」
「直感?」
「ほら、俺、お前にふられたじゃん?」
「こんなとき、そんな話しなくても…」
「いいから聞けって。あのとき『乱暴で短気なのは無理』って言われてショックだったけど、何かそれだけじゃないっていうかさ…」
「うん…」
「それからは、俺なりに頑張って、少しは直さなきゃなって思ったんだよ」
わたしは内心「あれで?」と少し思ったけれど、黙って聞いていた。
「でさ、耳が痛いこともちゃんと言ってくれるいいやつだって思えてきて、やっぱ好きになってよかったなって思った」
「そうだったんだ…」
「だから、そんなお前がそんなことで悩んでんのって見てられねえよ」
「うん…」
「もしそれでそいつとダメになったら、いつでもオレんとこに来いよ。あんときの答え、なかったことにしてやっから」
「ダイチったら」
わたしは声を出して笑った。この頃シュウ君と話していると、愛想笑いばかりになっていることを思い出しながら。
「それは『おうごん』じゃなくて、『こがね』って読むんだよ」
「ごめん。その作家さんのことはよく分からない」
「みんないい子だよ。友達の悪口を言われるのは気分が悪いよ」
本当はこんなふうに言いたかったし、時には本気で笑ったり怒ったりしている「わたし」を見せたかったんだ。
久々に言いたいことを言えて、わたしの気持ちはかなり晴れ晴れとしていた。
ダイチはやっぱりいいやつだったんだな。
だから「嫌いじゃなかった」んだった。
「あ、うん」
「元気そうだな」
「そう、だね…」
たったそれだけの会話だけど、懐かしさでなぜか泣けてきた。
「な、なんだよお前…」
「あ、ごめん…」
◇◇◇
どうしようか迷ったけれど、今はダイチは他校生だという気楽さもあって、わたしはシュウ君についての気がかりなことを話すことにした。
とりあえず、小学生のとき、ダイチやほかの友達と一緒に遊んだ公園に行った。
といっても、もうけっこう暗くなっているので、遊具で遊んでいる子はいない。
わたしたちはブランコをいす代わりにして腰かけた。
「そうか…」
ダイチはゆっくりスイングしながらわたしの話を聞いて、一言だけそう言った。
別にいか代わりなんだから、揺らす必要はないんだけど、ブランコに乗ると、漕がずにいられないんだろう。
なんだかダイチらしいなと思った。
「わたしが考えすぎかもしれないんだけどさ…」
「いや、そういう直感みたいなのって大事なんじゃね?」
「直感?」
「ほら、俺、お前にふられたじゃん?」
「こんなとき、そんな話しなくても…」
「いいから聞けって。あのとき『乱暴で短気なのは無理』って言われてショックだったけど、何かそれだけじゃないっていうかさ…」
「うん…」
「それからは、俺なりに頑張って、少しは直さなきゃなって思ったんだよ」
わたしは内心「あれで?」と少し思ったけれど、黙って聞いていた。
「でさ、耳が痛いこともちゃんと言ってくれるいいやつだって思えてきて、やっぱ好きになってよかったなって思った」
「そうだったんだ…」
「だから、そんなお前がそんなことで悩んでんのって見てられねえよ」
「うん…」
「もしそれでそいつとダメになったら、いつでもオレんとこに来いよ。あんときの答え、なかったことにしてやっから」
「ダイチったら」
わたしは声を出して笑った。この頃シュウ君と話していると、愛想笑いばかりになっていることを思い出しながら。
「それは『おうごん』じゃなくて、『こがね』って読むんだよ」
「ごめん。その作家さんのことはよく分からない」
「みんないい子だよ。友達の悪口を言われるのは気分が悪いよ」
本当はこんなふうに言いたかったし、時には本気で笑ったり怒ったりしている「わたし」を見せたかったんだ。
久々に言いたいことを言えて、わたしの気持ちはかなり晴れ晴れとしていた。
ダイチはやっぱりいいやつだったんだな。
だから「嫌いじゃなかった」んだった。
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