やさしいひと

あおみなみ

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高校入学

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 ダイチとは結局、友達同士のまま中学校を卒業して、わたしたちは別々の高校に行った。
 わたしは(親父の機嫌を取るために頑張って勉強して)市内でも難しい方の学校に入学し、ダイチはわりと普通の学校に行った。

 やっぱり勉強できる人が多いせいか、男子も女子もみんな落ち着きがあって、ちょっと大人っぽい気がする。
 同じクラスで、一番最初に指定された席で隣同士になった藤原ふじわらシュウ君という男の子が、目が合ったらにこっと笑いかけてきて、ちょっとかっこいいって思ってドキッとした。

 担任の先生の提案で、自分についてのPRをB5の用紙に書き込んで、掲示板に貼った。
 イラストでもいいし、文章でもいいし、写真を貼ったり、コラージュしたりしてもいいぞっていうから、相当自由度高い。
 これを見て趣味が合いそうな人に声をかけたりして、友達づくりに役立ててくださいって。
 実際、お笑い芸人とかアーティスト、アニメ、ゲーム、いろんな名前をみんな書き入れて、それを見て「〇〇さんも好きなの?」って声かけ合ったりしてる。友達になるかならないかはその人たち次第だろうけど、きっかけづくりとしては悪くない。
 何だかネット通販でやたら「おしゃれ 普段使い かわいい」とかって商品名と一緒に入っていることがあるけど、アレみたい。どれかが自分のにひっかかったら、チェックしたり、買ったりするでしょ?

◇◇◇

 わたしの書いたのを見た藤原君が、好きな小説家のことで話しかけてきた。

「え、藤原君も読むの?」
「うん、まあ…」
「どんなのが好き?」
「『黄金おうごんの騎士』かな、やっぱり」
「ふうん…?」

 そのタイトルは本当は「こがねのきし」と読むのだけれど、「おうごん」でも漢字の読み方としては合っているから、間違える人は多い。アニメ化とかもされて、一番人気のシリーズなんだけどね。

 まあいいやと思ってほかの作品のタイトルを出しても、「それは知らない」「読んでない」というのが続いて、「ところでさ…」と、自分の好きなほかの作家やアーティストの話に突然話題を変えられた。

 そっちはわたしは全く知らないことばかりだったので、ただ黙って聞いていたり、興味が出たら質問したりしたら、ニコニコと話し続けてくれたので、ちょっと退屈だったけど、ほっとした。
 この優しい笑顔はステキだと思う。

 藤原君とはこんな感じで少しずつ仲良くなって、「連休に一緒に映画を見にいかない?」って誘われて、お付き合いするようになった。
 そしてわたしは彼を「シュウ君」と呼ぶようになった。
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