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首席騎士様は、状況を見守る
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一転、厳しい目をした学長様は、正座のまま顔をゆがめている学年主任の前に立つ。そして、あたし達には視線を向けないままでこう言った。
「大丈夫、バツも弁償も、このザブレット教授が責任をもって引き受けてくれるからねぇ、君たちは安心なさい」
「なっ……!」
「ザブレット教授、君の態度は教育者としてあるまじきものだ」
学年主任を見下ろすその表情は、これまでの優しさなど幻だったかのような苦々しいものだった。
「そんな! 闘技場を破壊したのはこの娘ではないですか! 制御もできないくせに能力が開花しただの、素晴らしい才能だの、片腹痛い言い草だ。この一年でなにを学んできたんだか」
学長がこれまで見たこともないような威圧感を放っているというのに、学年主任はツバを飛ばしながら反論している。結構あたし酷い言われようなんだけど、なんかもうそれが気にならないくらい、学長のオーラが怖い。
「学長も傍系とはいえ同じ魔術の名門ユルグス家の一派なのですから分かるでしょう! 一年も鍛錬して魔力の扱いさえまともにできない者など、もはや教える価値もない落ちこぼれだ」
「なるほど」
「一年もかけてやっと魔力を放出できたと思えば、こんな甚大な被害を引き起こすなど……! 奨学生だと聞きましたが、国庫の無駄遣いでしかありません。即刻、退学させるべきです」
学年主任は長~いどじょう髭をこよりのようにヨリヨリとよりながら、あたしを睨みあげてニヤリと嫌な笑いを浮かべる。
背筋が寒くなるような気持ちでゾッとしたけれど、それを察したらしいリカルド様がさりげなく背中にあたしを庇うように動いてくれて、学年主任の視線から隠してくれた。
学年主任の目がどこか狂気じみているように感じてしまって怖かったから、少しホッとする。
リカルド様の影になってもうあたしから学年主任の姿は見えない。でも、学長はとても悲しそうな目で学年主任がいるあたりを見つめていた。
「そうだねぇ、確かに国庫の無駄遣いは許されないことだ」
「そうですとも! 優秀な魔術師を多数輩出してこそ、名門ユルグス家の価値が上がるというものです」
自慢げにどじょう髭をヨリヨリしてるんだろうなぁ、と簡単に想像できる弾んだ声の学年主任。確かユルグス家って、アリシア様もそうだよね。上流貴族って、なんでこんなに人を人とも思ってないような発言ができるんだろう。
能力がないと生きてる価値もないって言いたいのか。
「もうよい」
学長様が、ため息のように言った。ようやく聞こえる程度の小さな呟きは、なぜか重く深く、闘技場に響く。
「大丈夫、バツも弁償も、このザブレット教授が責任をもって引き受けてくれるからねぇ、君たちは安心なさい」
「なっ……!」
「ザブレット教授、君の態度は教育者としてあるまじきものだ」
学年主任を見下ろすその表情は、これまでの優しさなど幻だったかのような苦々しいものだった。
「そんな! 闘技場を破壊したのはこの娘ではないですか! 制御もできないくせに能力が開花しただの、素晴らしい才能だの、片腹痛い言い草だ。この一年でなにを学んできたんだか」
学長がこれまで見たこともないような威圧感を放っているというのに、学年主任はツバを飛ばしながら反論している。結構あたし酷い言われようなんだけど、なんかもうそれが気にならないくらい、学長のオーラが怖い。
「学長も傍系とはいえ同じ魔術の名門ユルグス家の一派なのですから分かるでしょう! 一年も鍛錬して魔力の扱いさえまともにできない者など、もはや教える価値もない落ちこぼれだ」
「なるほど」
「一年もかけてやっと魔力を放出できたと思えば、こんな甚大な被害を引き起こすなど……! 奨学生だと聞きましたが、国庫の無駄遣いでしかありません。即刻、退学させるべきです」
学年主任は長~いどじょう髭をこよりのようにヨリヨリとよりながら、あたしを睨みあげてニヤリと嫌な笑いを浮かべる。
背筋が寒くなるような気持ちでゾッとしたけれど、それを察したらしいリカルド様がさりげなく背中にあたしを庇うように動いてくれて、学年主任の視線から隠してくれた。
学年主任の目がどこか狂気じみているように感じてしまって怖かったから、少しホッとする。
リカルド様の影になってもうあたしから学年主任の姿は見えない。でも、学長はとても悲しそうな目で学年主任がいるあたりを見つめていた。
「そうだねぇ、確かに国庫の無駄遣いは許されないことだ」
「そうですとも! 優秀な魔術師を多数輩出してこそ、名門ユルグス家の価値が上がるというものです」
自慢げにどじょう髭をヨリヨリしてるんだろうなぁ、と簡単に想像できる弾んだ声の学年主任。確かユルグス家って、アリシア様もそうだよね。上流貴族って、なんでこんなに人を人とも思ってないような発言ができるんだろう。
能力がないと生きてる価値もないって言いたいのか。
「もうよい」
学長様が、ため息のように言った。ようやく聞こえる程度の小さな呟きは、なぜか重く深く、闘技場に響く。
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