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伝説のゆくえ
魔族にはじめて会う
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エリアスとカイザー号があまりにも速いので、俺とラースはヘラクレス号に乗って移動していた。
「この先に何がいるの?」
俺の質問にラースが答えた。
「あのね、モンスター集団がこっちに向かってるんだって」
「でも、オスカーのところのモンスターはもう来ないじゃん?じゃ、モンスターは完全に魔族の手先だよね?」
「そうなるね…それって…」
ラースが言いかけてふと、言葉を止める。突然俺の腰を後ろからがっちり掴むと勢いよくヘラクレスの背中から飛び立った。ふわりとした浮遊感のあと、すぐに振り回されるような激しさに目が回る。
「なっ!?」
そのとたん、目の前からすごい早さですぐ隣を炎の塊が駆け抜けた。ヘラクレスとラースは瞬時の判断で二手に分かれてそれをよけたのだった。俺はラースの背中に乗り移ると魔剣を握ってピアスのガラ、指輪のオスカーに魔力供給を指示した。
目の前に見たこともない凶悪そうなモンスターの集団がいる。フィリックスとエリアスはもう戦闘に入っていた。
その中に黒い獣の足を持ち、上半身は人のようなモンスターが一匹いて、そいつが俺をめがけて飛んでくる。
「ハーフドラゴンの匂い…お前か…!」
ニヤリと舌なめずりをしてそいつの赤い口が嗤う。俺の背筋が凍りついた。
「食いごろはもう少し先か?青いな…熟れるまで待つか…?」
そいつはそう言って俺たちを見た。
は?こいつが魔族!?するとラースが歯軋りをしてそいつに向かって威嚇した。
「食いごろって何だよ!熟れるまで待つって、シンは果物じゃない!もう既に美味しいんだぞ!」
ラースがそいつに向かって叫ぶ。
いや、そういうことじゃないと思うよラース…。
「ドラゴン族の使役か…こいつもうまそうだが、まだ青い…覚醒しきってからでもいいか…」
そいつはラースを見ながらまた嗤う。
「青い青いって!僕たちの青くて何が悪い!2人とも恋人に美味しく頂かれてるのに!青いのが綺麗だってみんな言ってくれるもん!他の色になんてならない!」
またラースがキレた。
ラース…ちょっと黙ろうか。絶対違うぞそれ…。
俺は遠くでモンスターと戦うフィリックスとエリアスを見た。こっちに来ようとしているのがわかるけれど、そうはさせてくれそうにないのが見てとれた。
その時ギラッと指輪が光り、オスカーが実体化した。
ラースより少し大きな、美しい銀色のドラゴンの姿をしているのに驚いた。
「ドラゴン族か…しかし、若くはないな」
「年寄り扱いはしないほうがいい、魔族よ、何故人間界にいる?」
オスカーはその魔族に冷たい瞳で尋ねると、そいつはニヤリと笑って答えた。
「人間界に追放されたんだが、魔界へ争いを起こそうと思っていたところ、ハーフドラゴンの匂いがするじゃないか…その力を手にすれば魔界に戻って復讐を遂げられる…だから食わせろ」
冷たく赤い目で見つめられ、俺の背筋に汗が流れた。生理的に思った、こいつキライ!
ヘラクレスが口を開け、そいつに閃光波をあびせる。ラースと俺も反対側から冷凍ビームを炸裂させ、オスカーも同じように衝撃波を浴びせる。俺たちの集中攻撃にそいつは目の前で爆発した。
はずだった。
「!?」
もうもうとした冷気の中から全く無傷なそいつが見える。
次の瞬間、横殴りに飛んできた巨大な稲妻がそいつを飲み込んだ。エリアスの攻撃だ。モンスターを片付けたらしい。
間髪いれず青い炎がそいつを爆発させた。オリオン号が近づいてくる。フィリックスの炎だ。
でも、煙の中からそいつの光る目が見えた時、全員凍りつくように言葉を失った。
俺たちの集中砲火に耐えられるのか…こいつ!?
「魔族すげえ…!」
「褒められると、照れるな…」
俺の呟きにそいつはまた嗤った。
「ほめてないわ!このくそタフめ!」
エリアスがギリギリとそいつを睨む。
「ハーフドラゴン、お前は味方が多いな…なかなか手こずりそうだ、今日は出直すかなー」
腕組みをして俺たちをぐるっと見回すと、そいつはククッと笑い、今度はエリアスとフィリックスを見る。
「?」
エリアスとフィリックスがそいつを不審げに睨み付けた。
「…竜騎士エリアスにフィリックスか…帰ろ…モンスター達も殺されたしな」
そう言うと、腕を広げて胸の前から黒い球状のものを発生させる。それが一気に大きくなり、そいつはそこへ飛び込むなり球がかき消えて、そいつもいなくなった。
「俺たちを知ってる…?それに次元を曲げられるのか…?」
エリアスが悔しげにそいつが消えた空間を睨んで呟いた。
「あいつは魔族だな…はぐれ魔族かもしれん、ここ近年、魔界を追放された魔族がいないかわかるかオスカー?」
フィリックスがオスカーに尋ねると、オスカーは静かに首を振った。
「すまん…ドラゴン族からも離れていた俺はそんな情報はないんだ」
「そうか、ものすごい長い引きこもりだったもんなお前…」
「引きこもりじゃない。千年、シンシアを想い続けてただけだ」
「うわぁ…!自宅警備員千年勤務…!」
エリアスがポロッと突っ込み、オスカーは舌打ちをした。
伝説の竜騎士と敵だったドラゴン族が普通に仲良く話してる光景に俺は少しだけ笑ってしまった。
俺が魔族に狙われているというのはこれで事実になった。
気になるのは、そいつが誰なんだってこと。
「この先に何がいるの?」
俺の質問にラースが答えた。
「あのね、モンスター集団がこっちに向かってるんだって」
「でも、オスカーのところのモンスターはもう来ないじゃん?じゃ、モンスターは完全に魔族の手先だよね?」
「そうなるね…それって…」
ラースが言いかけてふと、言葉を止める。突然俺の腰を後ろからがっちり掴むと勢いよくヘラクレスの背中から飛び立った。ふわりとした浮遊感のあと、すぐに振り回されるような激しさに目が回る。
「なっ!?」
そのとたん、目の前からすごい早さですぐ隣を炎の塊が駆け抜けた。ヘラクレスとラースは瞬時の判断で二手に分かれてそれをよけたのだった。俺はラースの背中に乗り移ると魔剣を握ってピアスのガラ、指輪のオスカーに魔力供給を指示した。
目の前に見たこともない凶悪そうなモンスターの集団がいる。フィリックスとエリアスはもう戦闘に入っていた。
その中に黒い獣の足を持ち、上半身は人のようなモンスターが一匹いて、そいつが俺をめがけて飛んでくる。
「ハーフドラゴンの匂い…お前か…!」
ニヤリと舌なめずりをしてそいつの赤い口が嗤う。俺の背筋が凍りついた。
「食いごろはもう少し先か?青いな…熟れるまで待つか…?」
そいつはそう言って俺たちを見た。
は?こいつが魔族!?するとラースが歯軋りをしてそいつに向かって威嚇した。
「食いごろって何だよ!熟れるまで待つって、シンは果物じゃない!もう既に美味しいんだぞ!」
ラースがそいつに向かって叫ぶ。
いや、そういうことじゃないと思うよラース…。
「ドラゴン族の使役か…こいつもうまそうだが、まだ青い…覚醒しきってからでもいいか…」
そいつはラースを見ながらまた嗤う。
「青い青いって!僕たちの青くて何が悪い!2人とも恋人に美味しく頂かれてるのに!青いのが綺麗だってみんな言ってくれるもん!他の色になんてならない!」
またラースがキレた。
ラース…ちょっと黙ろうか。絶対違うぞそれ…。
俺は遠くでモンスターと戦うフィリックスとエリアスを見た。こっちに来ようとしているのがわかるけれど、そうはさせてくれそうにないのが見てとれた。
その時ギラッと指輪が光り、オスカーが実体化した。
ラースより少し大きな、美しい銀色のドラゴンの姿をしているのに驚いた。
「ドラゴン族か…しかし、若くはないな」
「年寄り扱いはしないほうがいい、魔族よ、何故人間界にいる?」
オスカーはその魔族に冷たい瞳で尋ねると、そいつはニヤリと笑って答えた。
「人間界に追放されたんだが、魔界へ争いを起こそうと思っていたところ、ハーフドラゴンの匂いがするじゃないか…その力を手にすれば魔界に戻って復讐を遂げられる…だから食わせろ」
冷たく赤い目で見つめられ、俺の背筋に汗が流れた。生理的に思った、こいつキライ!
ヘラクレスが口を開け、そいつに閃光波をあびせる。ラースと俺も反対側から冷凍ビームを炸裂させ、オスカーも同じように衝撃波を浴びせる。俺たちの集中攻撃にそいつは目の前で爆発した。
はずだった。
「!?」
もうもうとした冷気の中から全く無傷なそいつが見える。
次の瞬間、横殴りに飛んできた巨大な稲妻がそいつを飲み込んだ。エリアスの攻撃だ。モンスターを片付けたらしい。
間髪いれず青い炎がそいつを爆発させた。オリオン号が近づいてくる。フィリックスの炎だ。
でも、煙の中からそいつの光る目が見えた時、全員凍りつくように言葉を失った。
俺たちの集中砲火に耐えられるのか…こいつ!?
「魔族すげえ…!」
「褒められると、照れるな…」
俺の呟きにそいつはまた嗤った。
「ほめてないわ!このくそタフめ!」
エリアスがギリギリとそいつを睨む。
「ハーフドラゴン、お前は味方が多いな…なかなか手こずりそうだ、今日は出直すかなー」
腕組みをして俺たちをぐるっと見回すと、そいつはククッと笑い、今度はエリアスとフィリックスを見る。
「?」
エリアスとフィリックスがそいつを不審げに睨み付けた。
「…竜騎士エリアスにフィリックスか…帰ろ…モンスター達も殺されたしな」
そう言うと、腕を広げて胸の前から黒い球状のものを発生させる。それが一気に大きくなり、そいつはそこへ飛び込むなり球がかき消えて、そいつもいなくなった。
「俺たちを知ってる…?それに次元を曲げられるのか…?」
エリアスが悔しげにそいつが消えた空間を睨んで呟いた。
「あいつは魔族だな…はぐれ魔族かもしれん、ここ近年、魔界を追放された魔族がいないかわかるかオスカー?」
フィリックスがオスカーに尋ねると、オスカーは静かに首を振った。
「すまん…ドラゴン族からも離れていた俺はそんな情報はないんだ」
「そうか、ものすごい長い引きこもりだったもんなお前…」
「引きこもりじゃない。千年、シンシアを想い続けてただけだ」
「うわぁ…!自宅警備員千年勤務…!」
エリアスがポロッと突っ込み、オスカーは舌打ちをした。
伝説の竜騎士と敵だったドラゴン族が普通に仲良く話してる光景に俺は少しだけ笑ってしまった。
俺が魔族に狙われているというのはこれで事実になった。
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