異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ

文字の大きさ
43 / 113
竜騎士になったよ

演習開始

しおりを挟む
とうとう、合同演習の日になった。

国王陛下、大貴族、招待された幸運な国民が満員で見に来ている大きな演習場に、壮麗な制服に身を包んだ騎士が千人、汎用竜と呼ばれる、一般の騎士用の茶色いドラゴンが数百匹ほどいる。騎士団の居並ぶ迫力は品があるながら猛々しいものがある。

騎士団は千人はいる大所帯だ。機動力があり、実力もある選ばれたエリート集団だという。それを統べるのはあのアンディ。紺色の騎士団の制服の中、一人だけ銀色の軍服のような衣装に身を包み、茶色い長髪を風になびかせ、一番前に立っている。ドがつく美形だけに、かなりカッコいい。

俺たちは群衆の見えないところで待機していた。

まてよ、その騎士団をたった5人で凌ぐ竜騎士って…一人あたり250人分以上?
当然俺は半人前の働きとしての計算…。いや、マイナスでもいいか。

そう思うと俺はエリアス達みんなの力が怖くなった。俺なんかが一緒にいるのは場違いじゃないのかな…。何も考えずに竜騎士になりに来たけれど、無知って怖いね!

騎士団が一斉に並んでるところに、このあと竜騎士が入場する。演習場はピリッとした空気が流れ、とうとう俺たち5人が入場するのだ。めちゃくちゃ緊張してしまって俺はガチガチだった。俺たちはまだ群衆の見えない幕の中で待機をしている。

エリアスは仕切るのに忙しそうだ、トゥルキもハムザも剣や武具のチェックをしている。何をしていいかわからない俺は挙動不審。

喉が乾いたけれど、 水を飲んで演習中にトイレに行きたくなったらどうしようとか、ラースとヘラクレス号が失敗したらどうしようとか…。しまいにはカタカタ手が震えだす。

でも、一口くらいは水を…とミネラルウォーターの入った瓶に手を伸ばすとうまく掴めずに倒しそうになった。

「あっ!」

しまった、と思った俺の手が瓶を掴むと同時にフィリックスの手も重ねられた。俺の手を掴んだまま、フィリックスは手の甲を自分の唇に当てる。柔らかな唇の感触が全身にぞくぞくしてしまう。

うおおおお、何これ!何?この王子様のようなフィリックスは…。

「震えてるじゃないか…」

フィリックスは俺を抱き寄せて、抱っこしたまま俺ごとすぐそばの椅子に腰かけた。そして俺の手をさすってくれる。ハムザがニコニコしながら俺とフィリックスを見ている。

「俺もさすってくれないか、トゥルキ。俺も震えてるから」

ハムザがトゥルキに手を差し出した。

「は?ハムザが震えてるならそれはただの飲み過ぎ」

トゥルキの言葉に、書類に集中していたはずのエリアスが吹き出し、肩が揺れている。

「昨日も演習の前夜祭だとか言って散々大暴れしたもんなぁ、ハムザ…」
「あとで大変だったんですよ。エリアス、ハムザと昨夜一緒にいたのなら飲むの止めてくださいね」
「無理だ、俺もハムザ怖いもん」

エリアスはそう言って笑い、フィリックスもくっくっと笑っていた。そんなに癖悪いのかハムザ…。

「トゥルキ、今夜はお前と後夜祭だ。今夜は離さないぞ」
「嫌だ!」

トゥルキの即答に一同笑ってしまった。

あれ?緊張がどこかに行ってしまったかな。フィリックスを見上げてから、自分の手を見るともう震えていない。

そんな俺を竜騎士のみんなは微笑んで見ていた。

…みんなで俺のために、俺の緊張をほぐすためにわざとふざけてくれたのかな?こんな真剣な仕事の前だというのに。

ありがとう…。

「それでだな、今夜の後夜祭なんだがな…」

ハムザがトゥルキに話し始める。
あっ…俺の中でいい話で締められる予定が。これ本気だったのか…。

「竜騎士、そろそろ入場です」

若い騎士が呼びに現れすぐに戻っていった。フィリックスは俺の頬にキスをする。

「緊張して当たり前だからな。でも、俺たちがついてる、大丈夫。ラースもヘラクレス号も、みんないるから」

俺はフィリックスの言葉に驚いた。誰しも初めての時があったとか、お前だけが緊張してるんじゃないとか、よくある言葉は言わなかった。

ただ、寄り添って安心感させてくれる。心の中のもやもやした不安がなくなっていくような気がした。

「シン?」

俺はフィリックスの胸に顔を埋めた。驚いたようにフィリックスが俺の顔を覗いた。トゥルキとハムザ、エリアスが幕から出ていこうとする。俺も顔を上げてそれを見て立ち上がろうとした、その時。

フィリックスが自身の肩に俺の頭を押し付けてキスをした。フィリックスの唇に俺の口がこじ開けられ、舌がするんと入る。
誰もいない幕の中。俺の舌をフィリックスのが絡めとっていく。

誰も知らない、ほんの数秒のことだけど、俺には何分も長く感じた。

フィリックスの秀麗な顔と、高い鼻が俺のゼロ距離にある!めっちゃカッコいい…ヤバイ…。大舞台前なのにドキドキが止まらない。

「んっ…!」

唇を離したフィリックスに、俺は俯くと、意を決したように顔を上げて言った。

「フィリックスが…フィリックスがこんなすごいキスするからぁ…」
「え?」

俺は目を丸くするフィリックスに手を差し出した。

「また震えが止まらなくなったじゃん!!」

そんな俺を見て、フィリックスは爆笑し、肩を組んで二人で幕を出た。


































しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...