【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

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35 新しい依頼 ライバル?

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 サザンクロス聖国に戻ってきて数日が過ぎ、グラストリム帝国の情報が少しずつ入ってきました。
 どうやらデイヴィット王太子は暫く表舞台には立てなくなり、当分は現国王が退位する事は無いようです。
 そしてどこからともなく現れる虫ですが、冒険者と協力して被害は減ってきたとか。

 それは安心しました。

「ねぇフラン、両親は大丈夫だったの~?」

「ええ大丈夫です。わたくしの事を心配していましたが、今回の事でわたくしは無罪となり、逆に聖女の親として発言力が増したようです」

「え? それってつまりグラストリム帝国に聖女を呼ぼうって魂胆じゃねーの?」

「その可能性を残したんだろうね。すぐには無理でも、将来的な希望を残しておきたいんだと思うよ」

 そう考えるのが妥当でしょう。
 虫の被害も目途が立ちましたし、当分戻る事は無いでしょうが。

「そろそろ落ち着いた事だし、久しぶりに依頼を受けに行くか?」

「賛成!」

 レッドの提案に全員が手をあげました。




「お久しぶりですね。今日から冒険者再開ですか?」

「ええ、しばらく休んだことですので、身も心もリフレッシュされました」

「ふふふ、こちらの依頼ですね、受付しますので少々お待ちください」

 依頼書を受付に持って行くと、受付嬢が笑顔で再開を喜んでくれました。
 実力は付いてきましたが、まだまだレッドには勝てませんし、ネオにも負けました。
 もっと努力をしなくてはいけませんね。



「え~っと? 道どっちだっけ? この地図わっかんねーよ!」

「落ち着いて~マット。地図の上下が逆だよ~」

「え? ああこうか」

 いつものやり取りを聞きながら、わたくし達は馬車に揺られていました。
 今回の依頼は隣街の山で取れるという薬草の採取です。
 採取とは言いますが、山は高く危険度の高い依頼になります。

 この薬草は高山にしかなりませんが、様々な薬の元となる大変便利な物です。

 隣町に到着し、必要な道具や食料を買いそろえます。
 明日の朝に出発したら途中まで馬車で行き、後は歩き出の登山になるでしょう。
 


「たっか……」

「高いのは分かってただろ? ほら行くよ」

「このまま馬に乗っていきてぇ」

 マットがぼやいていますが、その気持ちも分かります。
 なにせ山のテッペンは雲の上にあり、わたくし達はその近くまで行かねばなりません。
 10日で帰ってこれればいいのですが。

 馬車を山途中の村に預け、歩いて登山を開始します。
 するとどうした事でしょうか、もう1組の若い冒険者が一緒に出発しました。
 このパーティーも山に登るのでしょうか。

 山を登り始めて暫く、そろそろ冷えてきたので上着の準備をしていたら、一緒に出発したパーティーが横を通り過ぎて行きました。
 なぜかわたくし達を見てニヤニヤしていました。
 はて? 何かあったのでしょうか。
 
 上着を着こみ少し暖かくなりましたが、すぐに寒くなるでしょう。
 中腹以上には雪が積もっていますからね。

 ペースを崩さずに歩き続けていると、さっきわたくし達を抜いて行ったパーティーが居ました。
 休憩中でしょうか。
 距離が近づき、そろそろ表情も見える距離になりました。

「寒いんだから早く準備しろよ!」

「なんだよお前だって早くしろ!」

 何やら言い争っていますが……大丈夫なのでしょうか。

「あの、大丈夫ですか? この先は雪も積もっていますし、かなり冷え込むと思いますよ?」
 
 ロビーが心配して声をかけましたが、どうやらお気に召さなかった様です。

「こ、こっちの心配はしなくていいよ。俺達は慣れてるんだからな!」

 だそうなので、わたくし達は先へ進むことにしました。

 そうこうしているうちに少し暗くなってきました。
 暗くなる前に、早めにキャンプを張りましょう。
 テント2つに分けて入り、夕食を取り、沢山のぬるま湯を飲みます。
 寒いからというよりも、とても喉が渇くのです。
 高い山に登る時はこうなるので、きっと乾燥しているからでしょう。

 食事が終わり休もうかという時、外が騒がしくなりました。
 どうやら先程のパーティーが到着したようです。
 もう外は暗いのですが、今から準備をするのでしょうか。

 しかし今度はうるさい事もなく、粛々と準備をしているようです。
 下手に声を掛けると文句を言われそうなので、お互い不干渉としましょう。

 夜が明けて、わたくし達はテントから出て驚愕しました。
 あのパーティーはテントを張らず、寝袋だけで寝ていたのです。
 何と危険な事を……しかし慣れていると言っていましたから、彼らはこれで良いのでしょうか。

 朝食の準備をしていると、彼らが目を覚ましました。
 ……鼻水を流していますが、大丈夫なのでしょうか。
 わたくし達はとても厚着をしているので平気ですが、あ、彼らが寝袋から出てきました。
 ……本当に大丈夫なのでしょうか……薄い上着を羽織っているだけでした。

 他のパーティーの事ですが、何故だか不安になってきました。
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