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第四章【君との運命、いいえ約束です】
第52話「たくさん愛したいから覚悟してね?」
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「葉名たちが頑張って、葉緩に繋がった。……今度こそ俺が大事にしないと」
葵斗は腰から手を離し、立ち上がると葉緩のとなりに腰かける。
葉緩の手をとって唇を寄せると、流れのままに頬や額にキスをした。
心臓の高鳴りにムズムズして葵斗の肩を押すも、どんどん詰め寄ってしまいには葉緩を壁際に押し付けてしまった。
「たくさん愛したいから覚悟してね」
「はっ!? な、何をぅ……んっ……!」
とっくにトリガーの外れた唇のふれあいは、抵抗叶わずにあっと飲み込まれていく。
どれだけ重ねてもこればかりはなかなか慣れない。
ましてや好きな人と意識すればするほど、その熱は増していく。
じりじりと距離をつめられて、壁に手を押し付けられて、葉緩に逃げ場はなかった。
(この人、本当にキス魔! また壁に押し付けて! そんなに壁が好きなら壁にキスマークでもつけたらいいんです!)
壁に背を預けて、葵斗との距離が0になる。
これでは隠れているときにキスされる状態と、なんら変わりないと憤りに葵斗を叩く。
(本当に、ムカつきます。 心臓が破裂したら呪ってやる)
腹が立つわりに突き放すことが出来ないのは、惚れた弱みというもの。
葵斗にはずいぶんと甘くなるクセに不満を抱きながらも、欲張りな一面もあって葵斗の背に手をまわしてしまう。
――きっと葉名はめいっぱい甘えたかった。
蒼依を甘やかせてあげたいと思っていた。
唇が離れると、すっかり顔が火照ったようで恥ずかしさに葵斗の肩に顔をうずめる。
静かな部屋で葵斗が葉緩の背をやさしく叩いてくると、夜のか細さに膝を抱えた日々を思い出した。
さみしいという気持ちはこれまで白夜が埋めてくれた。
葉緩の友人であり、相棒であり、時に母や姉のような存在。
その白夜がいなくなれば、心にある塞ぎようのない空洞から目を反らせない。
恐れが葉緩を弱らせ、指先に震えが出た。
葵斗から感じるやさしい心音に目を閉じ、気持ちを整理するようにポツリポツリと白夜と過ごした日々を語った。
***
葉緩が生まれたときから傍には白夜がいた。
赤ん坊の時は喋ることが出来なかったが、言葉を覚え出し白夜を呼ぶようになって、周りから不審な目を向けられるようになった。
それでも葉緩には家族と同じように目に入るので、そこに白夜がいて当たり前のこと。
まわりの声を耳にせず白夜と仲良くしていると、家族は娘の不思議な行動に、忍び特有の何かがあるのかもしれないと追及はしなかった。
はたから見れば何もいないところで、一人喋っていることになる。
家の外に出れば、葉緩は近隣の人から奇異な目を向けられるようになった。
「ふわぁ、愛し合う夫婦とはなんと素晴らしいことでしょうね」
「なんだ? 理想の夫婦でも見たか?」
「いいえ、ただの憧れです」
「……そうか」
家の玄関口で道端に咲く花を眺め、花弁を突きながらニヤニヤと鼻息を荒くする。
やたらとご機嫌な葉緩に白夜が問いかけたが、そこに意味はなかったようで扱いに慣れぬと白夜は苦笑い。
鼻歌をうたいながら花の観察を楽しむ。
興味の対象はすぐに移り変わり、勢いよく立ち上がると白夜に振り返った。
「白夜に言わねばならないことがありました! 葉緩に弟が出来るのですよ!」
「弟?」
葉緩は一人っ子で、父と母の三人で暮らしている。
今よりも幼い頃、葉緩は両親以外になつかず、よく泣きわめいていた。
白夜が慰めにいくとすぐに落ち着くものだから、目に見えぬものを見る葉緩を不気味がる人も多かった。
周りの状況が良くないと白夜が離れようとしたこともあったが、葉緩が大泣きして暴れたのでつかず離れずの距離感となった。
白夜がそばにいてくれることで心の平穏を保っていた葉緩は、新しい家族が出来ることに浮足立っている。
「今がとても大切な時だそうです。子どもは大事に育てなくてはならないとお母様が言ってました」
そこにさみしさはない。
というより、表面に出てくるほど葉緩は自分の感情に自覚が薄かった。
「葉緩はお母様が大好きです。だから葉緩がお母様をお守りするのです」
「そうか」
苦いものを噛んで、渋くなる表情しか白夜は浮かべることが出来なかった。
葉緩の前で短い爪の生えた指を丸め、葉緩を抱き寄せて艶やかな黒髪を撫でた。
葵斗は腰から手を離し、立ち上がると葉緩のとなりに腰かける。
葉緩の手をとって唇を寄せると、流れのままに頬や額にキスをした。
心臓の高鳴りにムズムズして葵斗の肩を押すも、どんどん詰め寄ってしまいには葉緩を壁際に押し付けてしまった。
「たくさん愛したいから覚悟してね」
「はっ!? な、何をぅ……んっ……!」
とっくにトリガーの外れた唇のふれあいは、抵抗叶わずにあっと飲み込まれていく。
どれだけ重ねてもこればかりはなかなか慣れない。
ましてや好きな人と意識すればするほど、その熱は増していく。
じりじりと距離をつめられて、壁に手を押し付けられて、葉緩に逃げ場はなかった。
(この人、本当にキス魔! また壁に押し付けて! そんなに壁が好きなら壁にキスマークでもつけたらいいんです!)
壁に背を預けて、葵斗との距離が0になる。
これでは隠れているときにキスされる状態と、なんら変わりないと憤りに葵斗を叩く。
(本当に、ムカつきます。 心臓が破裂したら呪ってやる)
腹が立つわりに突き放すことが出来ないのは、惚れた弱みというもの。
葵斗にはずいぶんと甘くなるクセに不満を抱きながらも、欲張りな一面もあって葵斗の背に手をまわしてしまう。
――きっと葉名はめいっぱい甘えたかった。
蒼依を甘やかせてあげたいと思っていた。
唇が離れると、すっかり顔が火照ったようで恥ずかしさに葵斗の肩に顔をうずめる。
静かな部屋で葵斗が葉緩の背をやさしく叩いてくると、夜のか細さに膝を抱えた日々を思い出した。
さみしいという気持ちはこれまで白夜が埋めてくれた。
葉緩の友人であり、相棒であり、時に母や姉のような存在。
その白夜がいなくなれば、心にある塞ぎようのない空洞から目を反らせない。
恐れが葉緩を弱らせ、指先に震えが出た。
葵斗から感じるやさしい心音に目を閉じ、気持ちを整理するようにポツリポツリと白夜と過ごした日々を語った。
***
葉緩が生まれたときから傍には白夜がいた。
赤ん坊の時は喋ることが出来なかったが、言葉を覚え出し白夜を呼ぶようになって、周りから不審な目を向けられるようになった。
それでも葉緩には家族と同じように目に入るので、そこに白夜がいて当たり前のこと。
まわりの声を耳にせず白夜と仲良くしていると、家族は娘の不思議な行動に、忍び特有の何かがあるのかもしれないと追及はしなかった。
はたから見れば何もいないところで、一人喋っていることになる。
家の外に出れば、葉緩は近隣の人から奇異な目を向けられるようになった。
「ふわぁ、愛し合う夫婦とはなんと素晴らしいことでしょうね」
「なんだ? 理想の夫婦でも見たか?」
「いいえ、ただの憧れです」
「……そうか」
家の玄関口で道端に咲く花を眺め、花弁を突きながらニヤニヤと鼻息を荒くする。
やたらとご機嫌な葉緩に白夜が問いかけたが、そこに意味はなかったようで扱いに慣れぬと白夜は苦笑い。
鼻歌をうたいながら花の観察を楽しむ。
興味の対象はすぐに移り変わり、勢いよく立ち上がると白夜に振り返った。
「白夜に言わねばならないことがありました! 葉緩に弟が出来るのですよ!」
「弟?」
葉緩は一人っ子で、父と母の三人で暮らしている。
今よりも幼い頃、葉緩は両親以外になつかず、よく泣きわめいていた。
白夜が慰めにいくとすぐに落ち着くものだから、目に見えぬものを見る葉緩を不気味がる人も多かった。
周りの状況が良くないと白夜が離れようとしたこともあったが、葉緩が大泣きして暴れたのでつかず離れずの距離感となった。
白夜がそばにいてくれることで心の平穏を保っていた葉緩は、新しい家族が出来ることに浮足立っている。
「今がとても大切な時だそうです。子どもは大事に育てなくてはならないとお母様が言ってました」
そこにさみしさはない。
というより、表面に出てくるほど葉緩は自分の感情に自覚が薄かった。
「葉緩はお母様が大好きです。だから葉緩がお母様をお守りするのです」
「そうか」
苦いものを噛んで、渋くなる表情しか白夜は浮かべることが出来なかった。
葉緩の前で短い爪の生えた指を丸め、葉緩を抱き寄せて艶やかな黒髪を撫でた。
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