わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

柚木ゆず

文字の大きさ
29 / 41

第16話 アントナン達は ~奇跡が起きる時~ 俯瞰視点(3)

しおりを挟む
「嘘だ!! アイツが撤回するはずがない!! お前は嘘を吐いている!! 俺らをぬか喜びさせて!! 嗤おうとしてやがるな!?」
「ちっ、違います!! 聖女様は実際にそう仰っております!! こちらが証拠となっております!!」
「なんだって!? ………………ほ、本当だ……。そう、書いてある……」

 ――5人に対して宣告していた退位を撤回し、現状の維持を認める――。

 宰相トーマスが持ってきた書類には、その旨がシュザンヌのサインと拇印つきで記されていました。

「……た、確かに、書いておる……。と、トーマスよ、どうなっているのだ……!? なにが起きた……!?」
「聖女様が特にお気にかけられている孤児院に、問題発生の半年前に王家から――国ではなく個人的な『私財』による寄付が行われていたと、昨夜聖女様がお気づきになられました。そちらによって『良い一面もあった』と感じられるようになり、寛大な判断がくだされることとなりました」
「……そう、だったのか……! 奇跡だ! お前達っ、奇跡が起きたぞ……!」
「ええ、父上……!! 奇跡が起きました!!」
「そうね! 奇跡が起きたわ……!」
「はい……!! 奇跡です……!!」
「やった……! やったよ……!! 奇跡が起きたぁ……!!」

 とある別件で、高位貴族に発生しかけていた『不満』を和らげるため――という他意まみれではありましたが、アントナン達は実際に個人的な寄付を行っていました。

 判断理由は理路整然としているし、なによりシュザンヌのサインと拇印がある。

 それらによって『事実』が確定し、5人は飛び上がって喜び始めました。

「やったっ! やったぞ! 父上母上ニックライナー!! 俺達はこの先も国の頂点に立てるんだ!!」
「うむ!! 我々の時代はまだまだ続く!!」
「この先もずっと享受できるだなんて!! 最高だわ!!」
「こんなことって、あるんですね!! この上ない幸せを、感じています……!!」
「努力は報われるんだね!! やったぁ!! ばんざーっい!! うやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 ライナーは諸手をあげながらテーブルの周囲を走り回り、ニックはその場に崩れ落ちながら歓喜の涙を流し、ザダルとヴァーレアは抱き合って感情を爆発させ、アントナンはテーブルに乗って高々と右の拳を突き上げました。

「俺達は救われた!! 苦しみから解放された!! 宴だ!! みんなっ、宴を開くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ああ!!」「ええ!!」「はい!!」「うん!!」

 アントナンの音頭でやがて豪華な『奇跡ありがとうパーティー』が開催され、5人は美味しい料理やお酒に舌鼓を打ちます。

「美味い!! 最高だ!!」
「今日は格別だ!!」
「そうね、あなた!」
「こんなに美味しい食べものを食べたのは、初めてです!」
「おいしいいいいいいいいいいいい!! うひゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 アントナン達の宴は5時間が経過しても終わる気配はなく、むしろまだまだ盛り上がっていたのですが――。そんな幸せに満ちたパーティーは、思いもよらない形で突然幕を閉じることとなりました。

「「「「「ん……?」」」」」


「陛下! 妃殿下! アントナン殿下! ニック様! ライナー様!」


 どこからともなく、現在この場には居ないはずの宰相トーマスの声が聞こえてきて――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...