わたしを追い出した人達が、今更何の御用ですか?

柚木ゆず

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第8話 返事の返事 エミリー視点(2)

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「…………。え」「…………。え」「…………。え」
「よく考えてみたらお父様とお母様にも良い思い出はありませんし、誰かを追い出してまで戻るのは寝覚めが悪いですよね。元々この家族は3と1でしたから、この先も3人で仲良く暮らしてください」

 考えが正反対の人が一緒に暮らすと、様々な問題がありますもんね。考えが同じ人たちで固まって、楽しく過ごしてもらいましょう。

「いやいやいやそう言わないでくれ!! エミリーっ! 一緒にお屋敷に戻ろう!」
「一緒に過ごして償わせて頂戴っ! ねっ、ねっ、エミリーっ。お母さんとお父さんと一緒に暮らしましょうっ? 悪い思い出は全部、良い思い出で塗り替えるからっ!」
「いいえ、結構です。貴方がたの償いは望んでおらず、反省も要りません。良い思い出に変えていただかなくて構いませんよ」

 そもそも、塗り替えは不可能です。だって悪い思い出は、数えきれないほど大量にあるのですから。

「そっ、そう言わずに! 戻ろうっ! エミリーが戻らないと困るんだ!! 頼むから――」
「わたしが戻らないと、困る? なぜですか?」
「ぁっ。そ、それは、だな……」
「お父様達は、追い出しを後悔していらっしゃったのですよね? なのに、困る? おかしいですね……?」
「ちっ、違うんだよっ! それは………………そう! 使用人達に戻ってくると約束していて彼らは心待ちにしているんだよ! 使用人達が悲しませるから困る、の困るだったんだ!」

 あの方々は3人側の人達ばかりで、わたしを心配している人なんていません。お父様は焦るあまり、根本的な部分が抜け落ちてしまったようです。

「そうだったのですね。ですがそれでも、思いは変わりません。お屋敷に戻るつもりはありませんので、お引き取りください」
「エミリーっ! 待ってくれ!」
「お願いよエミリーっ! どうか私達に――」
「おとうさまぁ、おかあさまぁ。お姉様がそう仰ってるんですものぉ、どんなに食い下がっても結果は変わりませんわよぉ。お父様とお母様に、大事なお話もありますしねぇ。戻りましょうよぉ、お屋敷にぃ」

 マリオンはニコニコしていますが、その目は激しく充血しています。
 その様子なら、このあと楽しいことになりそうですね。

「マリオンもそう言っていますし、お引き取りください。もしこれ以上しつこくされるのであれば、強制的に出ていっていただきます」
「とエミリーさんは言っていますが、これ以上長居をされると迷惑です。強制的に退室していただきます」

 どうやらアレが済んで、次の段階へ進めるようになったみたいですね。部屋の前で待機してくださっていたリシャールさんがいらっしゃり、お屋敷の方々によって3人はお屋敷の外へと追い出されました。
 そうして、マリオン達を乗せた馬車は去っていき――









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