わたしを追い出した人達が、今更何の御用ですか?

柚木ゆず

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第4話 1か月と2日後の、おかしなこと エミリー視点(1)

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「エミリーさん。今、時間もらってもいいかな?」
「はい、もちろんです。少々お待ちください」

 清潔感のあるベッド、新品の家具、品のある明かりや絨毯がある広いお部屋――およそ1か月前にいただいた、わたしの新しいお部屋。窓際で椅子に座って絵の本を読んでいると、ノックと共にそんな声が聞こえてきました。

「……お待たせいたしました、リシャールさん。どうかされましたか?」
「うん。マリオン達の『あの件』への対応を、少し変更することにしたんだ」

 恐らくわたしの追放を、正当化するためなのでしょう。念のためランファーズ家の動きを監視してくださっているリシャールさんが、わたしの悪評が撒かれていっていると気付きました。

『またまた、3人らしいことをしてきたね。でも安心して。彼女達に好きにはさせないから』

 しばらく泳がせて、悪評を広めている人間を特定して捕まえ、大勢の前で元凶の正体を吐かせる。そうやってマリオン達の動きを利用して、それが根も葉もない噂だと――更には追放騒動の真実を、世に広めようとしてくれていたのです。

「計画の第1段階が済んで、そろそろ第2段階に入ると仰ってましたよね? なにか不都合が発生したのでしょうか……?」
「不都合ではなくて、ちょっと不思議なことが起きたんだ。あちらの動きが、急に止まったんだよ」

 毎日どこかしらで、少しずつ撒かれていた悪評。そちらが、突然なくなったそうです。

「ばら撒きの指示を出しているのはあの3人で、反省して止めるはずがない。となると、悪評が広がったら困ることが、起きていると見ていいね」
「そうですね。わたしもそう思います」

 気に入らない人間、邪魔な人間は、嵌めて潰してしまえばいい。そんな考えを持ち、平然と実行してきた人達です。
 自分達の都合以外、有り得ません。

「その『何か』を活かしたら、面白いことになりそうだよね。夕方『会』に顔を出した後、その理由を調べてみるよ。進展があったらすぐに報告するね」
「お願いします。リシャールさん、いつもありがとうございます」

 状況を把握できていないと不安だよね――。そんな理由で、何かしらの変化があったらすぐに教えてくれるんです。
 あの時も、今も。リシャールさんには、頭が上がりません。

「もうすぐエミリーさんも、また『会』に参加できるようになるよ。あと少しだけ辛抱してね」

 ここでもまた気遣ってくださったあとお屋敷を発たれ、それから僅か5時間後のことでした。帰りが遅くなると言っていたリシャールさんが、急に戻ってこられて――


「どうして悪評のばら撒きが止まったのか分かったよ。マリオン達は今、必死になってエミリーさんを探しているんだ」


 ――予想外なことを、仰ったのでした。

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