7 / 38
第3話 直後に起きていたこと~驚き~ エミリー視点(1)
しおりを挟む
「……………………」
お屋敷を追い出されてしまってから、僅か3分後。わたしは道で棒立ちになり、目を丸くしていました。
――いつか、追い出される日が来てしまうはず――。
あのお屋敷にいるのはマリオンのような人間と、そんな人を可愛がるお父様とお母様。常識、正論が通用しない人達です。
いずれそういうことが起きると嫌な確信を持っていて、そんな時に備えて、密かにおばあ様の親族にお手紙を送っていた――路頭に迷ってしまった時は、身を寄せさせてもらえるようにしていました。ですのでその方のもとに向かうべく、寄り合いの馬車に乗ろうとしていたのですが――
「こんにちはお嬢さん。おひとりでどちらに行かれるのですか?」
――そうしていると突然目の前に馬車が停まり、銀髪の男性が――表向きは同じ絵の会に所属する特に親しくはないメンバーのひとり、実際は唯一無二の親友である、チュワヴァス子爵令息リシャールさんが降りてきたのです。
「……………………。どうして、リシャールさんがここに……?」
「道の真ん中で立ち話もなんだしね。詳しい話は中でするよ」
「は、はい。あ、ありがとうございます」
リシャールさんにエスコートされて馬車に乗り込み、わたしが腰を下ろすと馬車がゆっくりと動き出す。そうして御者さんに指示を出した後、対面に座っているリシャールさんは小さく咳払いをしました。
「じゃあ、さっきの続きを話そうか。僕がどうしてこの場にいるのかと言うと、エミリーさんを迎えに来たんだよ」
「……え? わたしを、迎えに……?」
「前に写生会で会った時、この国の流行の話をしていたでしょ? アレで僕もマリオンがおばあ様の形見に目をつけると確信していて、それによって最悪追い出されると予想していた。だから面倒なことになる前に、エミリーさんがお屋敷を出られるようにしようとしていたんだよ」
お父様とお母様に会い、用意していたお金を提示する――わたしが家族の縁を切って、リシャールさんが居るチュワヴァス子爵邸で暮らせるように交渉を行う。そちらを行うために、お屋敷を目指している最中だったそうです。
「……シャール、さん……」
「運よく先月、新しい『武器』ができたでしょ? それを使って父上や親族を説得していて、今日ようやく許可が下りたんだ。やっと、本当にやっと、『口だけ男』の汚名を返上できるよ」
あんな人間に囲まれていたら、酷いことしか起きない――。こんなこと間違っている――。これからマリオン達に気付かれないようにコッソリ動いて、いつかエミリーさんを助けるよ――。
会のメンバーで集まって、リシャールさんの13歳のお誕生日をお祝いしていたあの日――偶然マリオンの本性とお父様とお母様の溺愛を知った4年前から、リシャールさんはずっとそう言ってくれていました。
ですが、リシャールさんもわたしも貴族の一員。独断で動ける問題ではなく、しかも内容が内容だけに、実現はほぼ不可能だとお互い感じていたのでした。
お屋敷を追い出されてしまってから、僅か3分後。わたしは道で棒立ちになり、目を丸くしていました。
――いつか、追い出される日が来てしまうはず――。
あのお屋敷にいるのはマリオンのような人間と、そんな人を可愛がるお父様とお母様。常識、正論が通用しない人達です。
いずれそういうことが起きると嫌な確信を持っていて、そんな時に備えて、密かにおばあ様の親族にお手紙を送っていた――路頭に迷ってしまった時は、身を寄せさせてもらえるようにしていました。ですのでその方のもとに向かうべく、寄り合いの馬車に乗ろうとしていたのですが――
「こんにちはお嬢さん。おひとりでどちらに行かれるのですか?」
――そうしていると突然目の前に馬車が停まり、銀髪の男性が――表向きは同じ絵の会に所属する特に親しくはないメンバーのひとり、実際は唯一無二の親友である、チュワヴァス子爵令息リシャールさんが降りてきたのです。
「……………………。どうして、リシャールさんがここに……?」
「道の真ん中で立ち話もなんだしね。詳しい話は中でするよ」
「は、はい。あ、ありがとうございます」
リシャールさんにエスコートされて馬車に乗り込み、わたしが腰を下ろすと馬車がゆっくりと動き出す。そうして御者さんに指示を出した後、対面に座っているリシャールさんは小さく咳払いをしました。
「じゃあ、さっきの続きを話そうか。僕がどうしてこの場にいるのかと言うと、エミリーさんを迎えに来たんだよ」
「……え? わたしを、迎えに……?」
「前に写生会で会った時、この国の流行の話をしていたでしょ? アレで僕もマリオンがおばあ様の形見に目をつけると確信していて、それによって最悪追い出されると予想していた。だから面倒なことになる前に、エミリーさんがお屋敷を出られるようにしようとしていたんだよ」
お父様とお母様に会い、用意していたお金を提示する――わたしが家族の縁を切って、リシャールさんが居るチュワヴァス子爵邸で暮らせるように交渉を行う。そちらを行うために、お屋敷を目指している最中だったそうです。
「……シャール、さん……」
「運よく先月、新しい『武器』ができたでしょ? それを使って父上や親族を説得していて、今日ようやく許可が下りたんだ。やっと、本当にやっと、『口だけ男』の汚名を返上できるよ」
あんな人間に囲まれていたら、酷いことしか起きない――。こんなこと間違っている――。これからマリオン達に気付かれないようにコッソリ動いて、いつかエミリーさんを助けるよ――。
会のメンバーで集まって、リシャールさんの13歳のお誕生日をお祝いしていたあの日――偶然マリオンの本性とお父様とお母様の溺愛を知った4年前から、リシャールさんはずっとそう言ってくれていました。
ですが、リシャールさんもわたしも貴族の一員。独断で動ける問題ではなく、しかも内容が内容だけに、実現はほぼ不可能だとお互い感じていたのでした。
56
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
悪役令嬢が残した破滅の種
八代奏多
恋愛
妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。
そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。
その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。
しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。
断罪した者は次々にこう口にした。
「どうか戻ってきてください」
しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。
何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。
※小説家になろう様でも連載中です。
9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる