邪魔者の婚約者を消す方法

柚木ゆず

文字の大きさ
16 / 19

第7話 信じられない言葉が聞こえた シルヴァン視点(2)

しおりを挟む
「な、なぜ……ここ、に……?」

 父上は今日は朝から外出していて、『ロンダール』という街で知人に会っているはず。おじさんだって、私用で外出しているとジャクリーヌが言っていた。
 どうして、いる……?

「今日は、お前達が企てた計画が――タチアナ君の殺害が決行される日。その対応を行うために来ているのだよ」
「さっ、さつが!? これは違うんですよ!」
「そっ、そうですわ! ちょっとした戯れで――」
「シルヴァン、ジャクリーヌ君、どうやっても言い逃れは出来んぞ。我々は全てを把握しているのだからな」

 …………バカな…………。

 タチアナに殺意を抱いていること。
 そのための蜂を準備していたこと。
 この場所で仕掛けようとしていたこと。
 それと……。
 俺とジャクリーヌは相思相愛なこと。

 関係者が以外は知らない事実を、完璧に把握されていた……。

「「ど、どうして……?」」

 準備は絶対に裏切らない忠実な人間だけを使って行っていて、その際には露見しないように細心の注意を払った。俺とジャクリーヌの関係だって、絶対に悟られないようにしていた。
 バレるはずがないのに、なんで筒抜けになっているんだ……!?

「今まさにお前達を拘束している彼らが、報告してくれたのだよ。なにもかもをな」
「嘘だ! あり得ない!! だってコイツらは俺達に忠誠を誓っている! 裏切るはずがない!」

 父上達に告げられたら悲劇が待っている。地獄を回避するために俺達は協力者を厳選したんだ!
 選りすぐりの者達が伝えるだなんて――

「タチアナ君を捕えて殺せという命令を実行せず、逆にお前達を拘束している。すでに裏切られているのだがな?」
「! そ、そういえば……!」

 そうだ。そうだ!
 そうだった!!

「……父上ではなく俺に『王』を感じ、忠誠を誓っている連中なのに……。なぜだ……」「……お父様やお母様ではなくて、わたくしを第一に考えてる者達なのに……。なぜ……」

 フリや世辞ではない。この者達はずっと前から――もう5年以上、俺に傅(かしず)いていた。
 父上や家のためではなく、俺のためだけに動く存在。
 思い込みじゃなくて! 実際そういう場面をこれまで何度も見て来たんだぞ……!?
 そりゃあ今まで殺害に加担させたことはなかったがっ、俺のためなら平然と手を汚せるようなヤツらなんだ。たとえ大金を積まれても即座に蹴れるようなヤツらなんだ。

 どうなっている……!?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう無理だ…婚約を解消して欲しい

山葵
恋愛
「アリアナ、すまない。私にはもう無理だ…。婚約を解消して欲しい」 突然のランセル様の呼び出しに、急いで訪ねてみれば、謝りの言葉からの婚約解消!?

契約通り婚約破棄いたしましょう。

satomi
恋愛
契約を重んじるナーヴ家の長女、エレンシア。王太子妃教育を受けていましたが、ある日突然に「ちゃんとした恋愛がしたい」といいだした王太子。王太子とは契約をきちんとしておきます。内容は、 『王太子アレクシス=ダイナブの恋愛を認める。ただし、下記の事案が認められた場合には直ちに婚約破棄とする。  ・恋愛相手がアレクシス王太子の子を身ごもった場合  ・エレンシア=ナーヴを王太子の恋愛相手が侮辱した場合  ・エレンシア=ナーヴが王太子の恋愛相手により心、若しくは体が傷つけられた場合  ・アレクシス王太子が恋愛相手をエレンシア=ナーヴよりも重用した場合    』 です。王太子殿下はよりにもよってエレンシアのモノをなんでも欲しがる義妹に目をつけられたようです。ご愁傷様。 相手が身内だろうとも契約は契約です。

ある愚かな婚約破棄の結末

オレンジ方解石
恋愛
 セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。  王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。 ※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。

診断書を提出してください。

ファンタジー
元々平民で人格者であった祖父が男爵位を賜ったことにより、「成金の偽善者」と陰口を叩かれるセドリック・トリエ。 それは婚約者である伯爵令嬢カテリーナ・ラドゥメグも例外ではなく、神経をすり減らす日々を送っていた。 そいてラドゥメグ伯爵家を訪れたセドリックと、父クレマンが切り出したことは……。 ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

魔女の笑顔

豆狸
恋愛
アレハンドロはカルメンの笑顔を思い出せない。自分が歪めて壊してしまったからだ。

エデルガルトの幸せ

よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。 学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。 彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。 全5話。

見切りをつけたのは、私

ねこまんまときみどりのことり
恋愛
婚約者の私マイナリーより、義妹が好きだと言う婚約者ハーディー。陰で私の悪口さえ言う彼には、もう幻滅だ。  婚約者の生家、アルベローニ侯爵家は子爵位と男爵位も保有しているが、伯爵位が継げるならと、ハーディーが家に婿入りする話が進んでいた。 侯爵家は息子の爵位の為に、家(うち)は侯爵家の事業に絡む為にと互いに利がある政略だった。 二転三転しますが、最後はわりと幸せになっています。 (小説家になろうさんとカクヨムさんにも載せています)

【完結】もうすぐ春が来るようです~あの人達の頭の中は一足先にお花畑で蝶々が飛んでいる様ですね〜

山葵
恋愛
今、私は学園内で噂の的になっていた。 どうやら私の婚約者であるベンジャミン様が編入生の男爵令嬢と急接近しているというのだ。 2人の仲を知る人は、私に婚約破棄を言い渡す日も近いのでは…と言ったと聞く。 その噂が本当なら…あぁ私は……なぁーんてハッピーなの♪

処理中です...