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第7話 悪夢 父ケヴィック視点(3)
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「なん、だって……。向かわない……? ルシアンっっ、エリオッツ!! じゃっ、じゃあ! どこに向かうんと言うんだっっ!!」
「その答えは、サンテールズにある別邸。貴方が自身のためだけに建てた、あの自己顕示欲に塗れた建物に向かうのですよ」
「当主ケヴィックは大きな病が発覚し、全権を実弟に委ねて一生涯療養をするために。ね」
………………。………………。
「貴方のような人間を放っておいたら、必ずや暗殺などの復讐を計画する。家族や親族およびヴィッケルたちの身を守る防ぐべく、そちらの地位や権利も譲っていただくのですよ」
「もちろんこの件に関しては僕が、すでに剥奪および継承に関する根回しを行っています。商会頭の地位喪失に連動し、そちらが承認されるようになっているのですよ」
…………。そんな……。
ここでも……。俺が知らない間に、話が動いていた……。
「あちらでの生活は、最低限のものが保証されます。兄上、ご安心を」
「最低限だとっ!? あっ、安心できるか!!」
そんなラインの毎日にっ、人生にっ、耐えられるはずがない!
だっ、だから! 俺は右斜めへと首を動かし――
「アンっ、どうにかしてくれ! コイツらを止めてくれ!」
――娘にっ。先導者共が大切にしている娘に、助けを求めた。
「俺がトップに居ないと我がフェリルーザ家は衰退してしまうっ! 『家』の繁栄を第一とするお前には見過ごせない問題のはずだっ! この者達を説得してくれ!!」
「……お父様は、私利私欲の権化です。むしろお父様の不在は、フェリルーザ家にとって有益となりますよ」
「っっ! そんなことは――そっ、そうだ! 俺がそんな目に遭ったらクラハは――お前の母親はあの世で悲しむぞ!! 自分が愛した男がむごい目に遭うのだからな!! お前はお前が大好きな人が悲しむのを良しとするというのか!?」
「……確かにお母様はお父様を愛していましたし、お父様はお母様を愛していました。でもそれは、かつての話。床に臥せると『金を食う疫病神』と呼ぶようになり、面会も滅多にしなかった人が。死後も事あるごとに罵るような人が、どうなろうと悲しむはずがありませんよ」
必死に見つめると、返ってきたのは冷たい。淡々とした視線が返ってきて、
「だそうですよ、叔父上。……よくもまあ、そんな台詞を吐けましたね」
「こちらの予想、その更に下を行く発言だな。……色々と言いたいことはあるが、言うだけ時間の無駄というものだ。リアン、この者を積み込んでくれ」
「まっ、待て! 待ってくれ!! 違うんだ!! あれにはちゃんとした理由があってぐああっ!」
馬車から出てきた男によって、後ろ手に縛られ……。まるで荷物を扱うかのように、乱暴に車内に放り込まれた。
そして……。そして…………。
「アンっ、頼むっ!! 助けてくれっ!! 助けてくれ!! アルセルっ、ジョンっ、考え直してくれ!! ルシアンっ、エリオッツっ、やめてくれ!! いやっ! いやなんだああああああああああああああああああああ!!」
涙を流しながら懇願して――し続けたものの、意味はなかった。
俺は監視下に置かれたまま、馬車で移動をさせられて――
「その答えは、サンテールズにある別邸。貴方が自身のためだけに建てた、あの自己顕示欲に塗れた建物に向かうのですよ」
「当主ケヴィックは大きな病が発覚し、全権を実弟に委ねて一生涯療養をするために。ね」
………………。………………。
「貴方のような人間を放っておいたら、必ずや暗殺などの復讐を計画する。家族や親族およびヴィッケルたちの身を守る防ぐべく、そちらの地位や権利も譲っていただくのですよ」
「もちろんこの件に関しては僕が、すでに剥奪および継承に関する根回しを行っています。商会頭の地位喪失に連動し、そちらが承認されるようになっているのですよ」
…………。そんな……。
ここでも……。俺が知らない間に、話が動いていた……。
「あちらでの生活は、最低限のものが保証されます。兄上、ご安心を」
「最低限だとっ!? あっ、安心できるか!!」
そんなラインの毎日にっ、人生にっ、耐えられるはずがない!
だっ、だから! 俺は右斜めへと首を動かし――
「アンっ、どうにかしてくれ! コイツらを止めてくれ!」
――娘にっ。先導者共が大切にしている娘に、助けを求めた。
「俺がトップに居ないと我がフェリルーザ家は衰退してしまうっ! 『家』の繁栄を第一とするお前には見過ごせない問題のはずだっ! この者達を説得してくれ!!」
「……お父様は、私利私欲の権化です。むしろお父様の不在は、フェリルーザ家にとって有益となりますよ」
「っっ! そんなことは――そっ、そうだ! 俺がそんな目に遭ったらクラハは――お前の母親はあの世で悲しむぞ!! 自分が愛した男がむごい目に遭うのだからな!! お前はお前が大好きな人が悲しむのを良しとするというのか!?」
「……確かにお母様はお父様を愛していましたし、お父様はお母様を愛していました。でもそれは、かつての話。床に臥せると『金を食う疫病神』と呼ぶようになり、面会も滅多にしなかった人が。死後も事あるごとに罵るような人が、どうなろうと悲しむはずがありませんよ」
必死に見つめると、返ってきたのは冷たい。淡々とした視線が返ってきて、
「だそうですよ、叔父上。……よくもまあ、そんな台詞を吐けましたね」
「こちらの予想、その更に下を行く発言だな。……色々と言いたいことはあるが、言うだけ時間の無駄というものだ。リアン、この者を積み込んでくれ」
「まっ、待て! 待ってくれ!! 違うんだ!! あれにはちゃんとした理由があってぐああっ!」
馬車から出てきた男によって、後ろ手に縛られ……。まるで荷物を扱うかのように、乱暴に車内に放り込まれた。
そして……。そして…………。
「アンっ、頼むっ!! 助けてくれっ!! 助けてくれ!! アルセルっ、ジョンっ、考え直してくれ!! ルシアンっ、エリオッツっ、やめてくれ!! いやっ! いやなんだああああああああああああああああああああ!!」
涙を流しながら懇願して――し続けたものの、意味はなかった。
俺は監視下に置かれたまま、馬車で移動をさせられて――
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