もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず

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第12話 疑問と覚醒と、思い出 ダヴィッド視点(3)

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((…………最悪だ。まさか、兄さんが心変わりをしていただなんて……))

 やけに帰りが遅い。父と母にその理由を聞かれても、濁している。
 そのため独自に調べてみたら、ロマニはアニーという女と浮気をしていることが判明した。しかも――

((サンドラの責任にして縁を切り、それを使って新たな関係を持とうとしている))

 そんなことまで企んでいて、最悪に最悪が重なる状況となっていたのだ。

((サンドラを裏切っただけではなく、陥れようとするだなんて……! 許せるはずがない。必ず白日の下に晒し、罪を償わせてやる))

 そうして僕は即座に動き出し、まずは証拠の確保に動く。
 僕は尾行によって浮気を知り、企みは――

『兄から賄賂を受け取り、父上に報告しなかったのですね?』
『主従が理由ならまだしも、金銭によるものと発覚すれば大問題ですよ?』

 ――協力者である従者たちを脅して、把握しただけ。
 浮気や企みは確証がないと罪には問えないため収集を試み、そうしている最中に手紙の入れ違いを知得した。

((これをうまく利用すれば――。いくつかの証拠を確保できて、サンドラにも真実を知らせられる。…………))

 最愛の人からの裏切りを伝えるのは、つらい。けれど伝えなければ彼女がもっと大変な目に遭ってしまう。
 そこで僕はリロレット伯爵家邸を目指し、

「リロレット卿、レテア様、アンナ様。突然のご無礼をお許しください。本日はすでにご覧になられている、そちらの説明を行わせていただきたく思います」

「引き続き愚兄の周辺を探って計画を突き止め、ソレが捏造だという証拠を手に入れる。その時まで、父への言及を待っていただきたいのですよ」

 これらを、提案。
 あの頃も今も最愛である人を守るため、動き出したのだった。

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