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第6話 移動した、その先で ~不思議なこと~ アルマ視点(3)

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「今の光が気になっていると思うけど、馴染ませるために3分くらいは心と体を穏やかにしておく必要があるのよ。詳細を伝えてしまうと、そうね。特に心の方が波立ってしまうからあとにして、その間に準備をしておくわ」

 マイユールと顔を見合わせていると、女性はゆっくりと部屋の中央へと移動。まずはその場でしゃがんで床に触れ、立ち上がったあと何かを呟き始めた。

「――――。――――。――――――。――――――」

 ちゃんと聞き取れているのに、理解のできない言語。この国の言葉ではない――近隣国でも使用されていない言葉を、30秒ほど唱えた。

「…………はあ。たったこれだけのことをするのに、こんなにも手順を踏まないといけなんてね。こっちは不便だわ」
「え? こっち……?」
「ふふ、何でもないわ。そんなことよりアルマ、マイユールも。前方にご注目よ」

 と言われたので、わたし達は女性が指さす方向へと視線を動かしてみた。そうすると――あ! 空間がぐにゃりと歪み始めて………………一瞬だけその地点が眩く輝き、まぶしい光が収まると、そこでは5メール超の大きな鏡が浮遊していた。

「安心して頂戴。貴女が今抱いている驚きは、波立つには入らないわ」

 おもわずハッとしていたらクスリとした微笑みが返ってきて、女性は再び鏡へと視線を戻した。

「これはね、不思議な不思議な鏡。好きな場所の光景と、そこで発生している声や音を映し拾える鏡なの」
「「……………………」」
「ふふ、期待通りの驚き顔をありがとう。じゃあ最高のリアクションのお礼に、細かく説明していくわね」

 ちょうど3分経ったし、あちらも動き始めた・・・・・ことだしね――。と続けた彼女は、改めて鏡を指差した。

「なぜ貴女が輝く必要があったのか? あれにはどんな意味があったのか? その全ての理由――原因・・は、この者達にあるわ」

 そう言い終わったと同時に鏡から『ぷつり』『ざざ』という音が響き、それに合わせて鏡の中に景色が現れてゆく。
 まるで、霧が晴れていくよう。段々と、その景色が鮮明になっていって――

「「えっ!?」」

 やがてハッキリ見えるようになったら、わたしとマイユールは揃って声を上げてしまった。
 だって……。そこには、


 殿下。陛下、妃殿下。第2第3王子殿下。神殿長様。ルナ神殿の聖職者。ハーザック公爵令嬢キュメット様。

 よく知っている人達が、いたのだから。


「……殿下達が、原因って……。どういうこと……?」
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