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第3話 必然と偶然の出会い リリアーヌ視点(1)

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 それは、今からおよそ4年前――わたしが聖女になって、3年目の夏のこと。毎年7月1日――この国に初めて『聖女』が誕生した日から3日間フリーダ国内で行われる、聖女の生誕パレードでのことでした。

((……あっ。あそこにいる、男の子と女の子……!))

 パレード2日目――この日のための特別な馬車に乗って『ランドラーナ』という街を進んでいたわたしは偶然、観客の中に『黒いモヤ』に包まれている兄妹が居ることに気付くのでした。

「リリアーヌ様? あちらが、どうかなさいましたか?」
「……はい、マリア様。あそこの……わたしと同い年くらいの、女の子をおんぶしている男の子。あのふたりは、呪われています」

 聖女の力のひとつ、『可視の力』。それによってわたしは本来不可視の呪いを視ることができ、すぐに気付けたのでした。

「呪い、でございますか。となるとフリーダの民ではなく――ああそうですね。パレードに合わせて入国された、隣国ラティーラの方のようです。しかし、この時代に呪いだなんて……。遥か昔に滅んだ負の技術だと思っておりました……」
「わたしも、ビックリしています。ですので、聖女でなければ解けません」

 歴代の聖女55名が誰一人として『解呪』の力を使ったことがないくらい、遥か昔に消滅したものだそうです。ですので当然解呪に関する技術もなくなっていて、そちらを再現できない。
 もし再現できたとしても相当な時間がかかり、実行できる前に命を落としてしまうのです。

「……わたしはこの国の民や大地を護るために、フリーダ様から力を預かっています。ですがきっと、フリーダ様は許してくださるはずです」
「……ふふ。フリーダ様が貴方様をお選びになられた理由を、改めて実感しております。わたくしも、そう感じておりますよ」

 これまで一度も行っていないことをする。そちらを酷く嫌う方が多く存在していて、様々なご意見・・・をいただくことになるでしょう。
 でも、それでも、無視できるはずはありません。幸いにも神殿の長であるマリア様が背中を押してくださり、わたしは停まった馬車から急いで降りました。

「「「「「聖女様が降りられた……!?」」」」」
「「「「「な、なんだなんだ……!?」」」」」
「すみません、そちらの兄妹さんにお話があるんです。ええと……こっちに来てもらえますか」

 周りに人が沢山居たら、上手く解呪を行えません。ですのでお二人を離れた場所に誘導し――長く時間を取ると関係者の皆様が心配されるので、急いで始めます。

「も、もしかして……。聖女様はマノンを――僕の妹を救ってくださるのですか!?」
「妹さんだけじゃなくて、お兄さんもお救いします。まずは、より危険な妹さんから始めますね。妹さんを地面に仰向けに寝かせて、男の子さんは離れていてください」

 解呪は『わたしと対象者』以外が、半径5メートル内に居たら行えません。ですのでそうお願いをして、解呪を実行する。
 力を込めると妹さんを真白の光が包み込み、禍々しい呪いはあっという間に消えた、のですが――。

 その、直後……。
 とある予想外が、わたしを襲うのでした……。


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