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第14話 予想外の出来事 エリーズ視点
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「そろそろ、始まる時間ですね」
「ああ、そうだな」
執務室にいたわたしとお父様は、揃って時計を眺めていました。
今日の午後4時。サンフォエル伯爵邸でサンフォエル家とダツレットス家の当主が会い、報酬が渡されるそうです。
「……その報酬を受け取って戻って、その日の夜。決行される……」
アンリ様のお父様は大仕事が成功した際には盛大にお祝いをするタイプで、その時は自分自身――だけではなく側近も交えてたくさんのお酒を飲むとのこと。それにより普段はならない『泥酔』状態に本人も周りも陥り、邪魔者が居なくなった隙をついて盗み出すそうです。
「わたしたちにできることは、もうありません。この場で成功を祈っていましょう」
「やれることは全てやった。きっと上手くいくさ」
「そうですね」
胸の前で両手を組んでいたわたしは頷き、両目を瞑って祈りを捧げます。
((…………上手くいきますように))
成功の祈りを捧げ、もうひとつ。お祈ります。
((…………アンリ様も、幸せになれますように))
『……できることなら僕自身も直接お詫びを行いたいのですが、その……諸事情がありまして、叶いそうもありません。このような形となってしまうことを、お許しください』
その内容は分かりませんが、あまりよくないことを考えていらっしゃるのは分かりました。
アンリ様だけが不幸になることが、ないように。もしわたしにできることがあれば、お力を貸すことができるように。
とにかくアンリ様もこれまでのように平和に過ごせますように、とお祈りをしました。
「エリーズ、私もアンリ殿は気に入っている。次にお会いした時に、できることがないか打診してみるつもりだ」
「お父様……」
「これでも説得は得意な方だ。任せておきなさい」
「はい。よろしくお願いします」
お父様のおかげで心が軽くなり、苦しさが和らいだ状態で時が流れていって、沈んだ太陽が再び昇りました。
今から8時間後の、午後3時前後。アンリ様がいらっしゃる日、となって――
「エリーズ様!! 緊急の報告がございます!!」
――え……? まだ午前7時過ぎなのに、アンリ様が屋敷にいらっしゃいました。
緊急……? 何があったのでしょうか……?
「ああ、そうだな」
執務室にいたわたしとお父様は、揃って時計を眺めていました。
今日の午後4時。サンフォエル伯爵邸でサンフォエル家とダツレットス家の当主が会い、報酬が渡されるそうです。
「……その報酬を受け取って戻って、その日の夜。決行される……」
アンリ様のお父様は大仕事が成功した際には盛大にお祝いをするタイプで、その時は自分自身――だけではなく側近も交えてたくさんのお酒を飲むとのこと。それにより普段はならない『泥酔』状態に本人も周りも陥り、邪魔者が居なくなった隙をついて盗み出すそうです。
「わたしたちにできることは、もうありません。この場で成功を祈っていましょう」
「やれることは全てやった。きっと上手くいくさ」
「そうですね」
胸の前で両手を組んでいたわたしは頷き、両目を瞑って祈りを捧げます。
((…………上手くいきますように))
成功の祈りを捧げ、もうひとつ。お祈ります。
((…………アンリ様も、幸せになれますように))
『……できることなら僕自身も直接お詫びを行いたいのですが、その……諸事情がありまして、叶いそうもありません。このような形となってしまうことを、お許しください』
その内容は分かりませんが、あまりよくないことを考えていらっしゃるのは分かりました。
アンリ様だけが不幸になることが、ないように。もしわたしにできることがあれば、お力を貸すことができるように。
とにかくアンリ様もこれまでのように平和に過ごせますように、とお祈りをしました。
「エリーズ、私もアンリ殿は気に入っている。次にお会いした時に、できることがないか打診してみるつもりだ」
「お父様……」
「これでも説得は得意な方だ。任せておきなさい」
「はい。よろしくお願いします」
お父様のおかげで心が軽くなり、苦しさが和らいだ状態で時が流れていって、沈んだ太陽が再び昇りました。
今から8時間後の、午後3時前後。アンリ様がいらっしゃる日、となって――
「エリーズ様!! 緊急の報告がございます!!」
――え……? まだ午前7時過ぎなのに、アンリ様が屋敷にいらっしゃいました。
緊急……? 何があったのでしょうか……?
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