21 / 40
英雄集結
Part 7
しおりを挟む
白夜とは自律神経にとって、だいぶ悪影響を及ぼす自然現象なのだとはっきりわかった。
眠っているのか眠っていないのか。
それは覚醒した時に発覚する。
あ、今寝てたのか。
そんな風にして僕は目を覚ました。
浅い眠りから覚めると、それほど次の行動に支障はきたさないのだが、疲れが取れたという感覚には至らない。
今が何時なのかはこの世界に於いては死語である。
そんなの関係ねえとばかりに部屋には時計がない。
日が昇り起き、日が沈み寝る。
いやいや、日が沈まないならどうすれば?
恐らくアナナキの事だから、そのくらいは考慮していて、僕達の体調面には弊害がないのだろうけれど、精神的にはキツイものがあった。
「こんな時でもこいつは図太いな」
少し離れたところにあるもう一つのベッドの上で、口を大きく開け鼾をかいている後輩、熊本くん。
呆れるというより羨望に近い。
だから僕は嫌がらせのように身支度に音を立てた。
「起きやしない」
生活音とは気にしだすと、意外に大きいものだと感じる。
しかも僕はそれを殊更に強調しているにもかかわらず、だ。
痺れを切らした僕は、その大きく開かれた口にコップ並々に注がれた水を注ぎ込む。
ほどなくゴボッゴボッと溺れているようにしてやっとその無神経は目を覚ました。
「なにしやがんですか!」
御立腹のご様子。
「お前の鼾が五月蝿いのと、白夜も重なって不眠気味だ。機嫌が悪いので気をつけ給え」
威嚇である。
予想以上に熊本くんの怒気が大きかった為、身の安全を考慮しての高圧的な態度。
これぞ年輩の所業。
「あぁ、すみません」
ふふふ。覚醒したばかりで目の前に不機嫌を公言している人間がいたら、日本人はとりあえず謝罪する生き物である。
案ずるな虚勢だ。
「しかし結構時間は経った感覚だが、そろそろ集まってもおかしくないんじゃないか?」
「んー? そうですね、そろそろみたいです」
ん? なぜわかる?
ムクッと起き上がった熊本くんは、枕元に置いてある謎の球体を手にして、まるで時間がわかるかのような素振りをしてみせた。
「説明の時にデートとかしているから聞き逃すんスよ。これがこっちの世界の時計的なものです」
「あー、それが時計なの? てかこの世界に時計の概念あったんだ」
「アナナキ自体は時間の概念はないそうっス。これはクリーチャーが襲撃してくるまでのタイムリミット用らしいすよ」
なるほど。
だから球体の中に4/100とか書いてあんのね。
「この数字が4になったらロビーに集合って言われてました」
ん!?
そろそろどころかもう4じゃね!?
「おい! 準備しろ!」
まだ寝ぼけ眼の熊本くんを急かし、僕達は早々に部屋を切り上げた。
結果的には僕達は遅刻とはみなされなかった。
正確には遅刻だったんだが、それよりも遅い奴らが沢山いたのだ。
「世界の時間に対する価値観が物凄い顕著に現れたな」
比較的早い方だった我々日本人は、少し遅れただけでも冷や汗をかいたにも関わらず、堂々と遅れてやってくる面々を見て、僕は安心と不安が綯い交ぜになった。
各々欠伸したり、周りの人と談笑したりしてこれからの移動を待つ英雄たち。
みんな部屋に置いてあった黒のジャージに着替えている光景は、さながら修学旅行のようだった。
「それでは今から聖地まで移動します。各担当と一緒においでください」
ぽっちゃりアナナキはそういうと、デイジーを連れて颯爽と姿を消した。
「それではタチバナ様。我々も行きましょう」
移動は例によってルー〇、じゃなくてポータルによっての瞬間移動。
「あいよ。ってもう着いた」
間髪入れずに移動したアナナキっちのせいで舌噛むところだった。
「うお! なんじゃこりゃ!!」
僕の目の前に、いきなり白い物体が現れた。
「え!? 雲!?」
草原にポツポツとその白い物体は浮遊していた。それが雲だとわかるまで驚きのあまり少し時間がかかった。
「ここ標高何メートルよ」
「9200メートルです」
死ぬわ!!
そんな高さまで瞬間移動して、身体耐えれるのか?
と、言う疑問に僕は自分が一般的な人間とはもうかけ離れている事を思い出した。
「高所トレーニングって! 高橋尚子か!!」
少し離れたところから熊本くんの声が聞こえた。
あ、熊本くん忘れてた。
どうやら知里ちゃんと一緒に来た模様。
「高橋尚子が高所トレーニングしてたかは知らないけど、これはまた特殊なトレーニング場だな」
「ここはモリヤという山です。山自体から気魄が発生している不思議な場所で、もしかしたらこのモリヤは生きているのじゃないか?と昨今研究者の間で興味の的になっている聖地です」
「聖地すら研究対象にするその知識欲に乾杯」
「あ、聖地とは研究の聖地という意味で、ここでアナナキが生まれたとかそういう伝承的なものではありませんよ?むしろ我々には伝承などはないんですがね」
そういう意味!?
研究バカ過ぎるだろ!
その研究の成果の高等技術で伝承する必要が皆無ってか。
「はい。皆様集まられましたね?」
眠っているのか眠っていないのか。
それは覚醒した時に発覚する。
あ、今寝てたのか。
そんな風にして僕は目を覚ました。
浅い眠りから覚めると、それほど次の行動に支障はきたさないのだが、疲れが取れたという感覚には至らない。
今が何時なのかはこの世界に於いては死語である。
そんなの関係ねえとばかりに部屋には時計がない。
日が昇り起き、日が沈み寝る。
いやいや、日が沈まないならどうすれば?
恐らくアナナキの事だから、そのくらいは考慮していて、僕達の体調面には弊害がないのだろうけれど、精神的にはキツイものがあった。
「こんな時でもこいつは図太いな」
少し離れたところにあるもう一つのベッドの上で、口を大きく開け鼾をかいている後輩、熊本くん。
呆れるというより羨望に近い。
だから僕は嫌がらせのように身支度に音を立てた。
「起きやしない」
生活音とは気にしだすと、意外に大きいものだと感じる。
しかも僕はそれを殊更に強調しているにもかかわらず、だ。
痺れを切らした僕は、その大きく開かれた口にコップ並々に注がれた水を注ぎ込む。
ほどなくゴボッゴボッと溺れているようにしてやっとその無神経は目を覚ました。
「なにしやがんですか!」
御立腹のご様子。
「お前の鼾が五月蝿いのと、白夜も重なって不眠気味だ。機嫌が悪いので気をつけ給え」
威嚇である。
予想以上に熊本くんの怒気が大きかった為、身の安全を考慮しての高圧的な態度。
これぞ年輩の所業。
「あぁ、すみません」
ふふふ。覚醒したばかりで目の前に不機嫌を公言している人間がいたら、日本人はとりあえず謝罪する生き物である。
案ずるな虚勢だ。
「しかし結構時間は経った感覚だが、そろそろ集まってもおかしくないんじゃないか?」
「んー? そうですね、そろそろみたいです」
ん? なぜわかる?
ムクッと起き上がった熊本くんは、枕元に置いてある謎の球体を手にして、まるで時間がわかるかのような素振りをしてみせた。
「説明の時にデートとかしているから聞き逃すんスよ。これがこっちの世界の時計的なものです」
「あー、それが時計なの? てかこの世界に時計の概念あったんだ」
「アナナキ自体は時間の概念はないそうっス。これはクリーチャーが襲撃してくるまでのタイムリミット用らしいすよ」
なるほど。
だから球体の中に4/100とか書いてあんのね。
「この数字が4になったらロビーに集合って言われてました」
ん!?
そろそろどころかもう4じゃね!?
「おい! 準備しろ!」
まだ寝ぼけ眼の熊本くんを急かし、僕達は早々に部屋を切り上げた。
結果的には僕達は遅刻とはみなされなかった。
正確には遅刻だったんだが、それよりも遅い奴らが沢山いたのだ。
「世界の時間に対する価値観が物凄い顕著に現れたな」
比較的早い方だった我々日本人は、少し遅れただけでも冷や汗をかいたにも関わらず、堂々と遅れてやってくる面々を見て、僕は安心と不安が綯い交ぜになった。
各々欠伸したり、周りの人と談笑したりしてこれからの移動を待つ英雄たち。
みんな部屋に置いてあった黒のジャージに着替えている光景は、さながら修学旅行のようだった。
「それでは今から聖地まで移動します。各担当と一緒においでください」
ぽっちゃりアナナキはそういうと、デイジーを連れて颯爽と姿を消した。
「それではタチバナ様。我々も行きましょう」
移動は例によってルー〇、じゃなくてポータルによっての瞬間移動。
「あいよ。ってもう着いた」
間髪入れずに移動したアナナキっちのせいで舌噛むところだった。
「うお! なんじゃこりゃ!!」
僕の目の前に、いきなり白い物体が現れた。
「え!? 雲!?」
草原にポツポツとその白い物体は浮遊していた。それが雲だとわかるまで驚きのあまり少し時間がかかった。
「ここ標高何メートルよ」
「9200メートルです」
死ぬわ!!
そんな高さまで瞬間移動して、身体耐えれるのか?
と、言う疑問に僕は自分が一般的な人間とはもうかけ離れている事を思い出した。
「高所トレーニングって! 高橋尚子か!!」
少し離れたところから熊本くんの声が聞こえた。
あ、熊本くん忘れてた。
どうやら知里ちゃんと一緒に来た模様。
「高橋尚子が高所トレーニングしてたかは知らないけど、これはまた特殊なトレーニング場だな」
「ここはモリヤという山です。山自体から気魄が発生している不思議な場所で、もしかしたらこのモリヤは生きているのじゃないか?と昨今研究者の間で興味の的になっている聖地です」
「聖地すら研究対象にするその知識欲に乾杯」
「あ、聖地とは研究の聖地という意味で、ここでアナナキが生まれたとかそういう伝承的なものではありませんよ?むしろ我々には伝承などはないんですがね」
そういう意味!?
研究バカ過ぎるだろ!
その研究の成果の高等技術で伝承する必要が皆無ってか。
「はい。皆様集まられましたね?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる