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はじまり
Part 2
しおりを挟む「「大変申し訳ございませんでした!!」」
僕、立花宗則と。
共犯者、熊本太郎は一騎打ちの後、仲良く並んで正座をしていた。
「はいまずムネリンの罪。この新聞今日のまだ私が目を通してないやつね。そしてタロー。お前の罪は存在だ」
「そんな! 御無体な!」
哀れ熊本くん。
逆らったが最後、熊本くんの両の太腿にどこから取り出したか不明なダンベル(10kg)が舞い降りてきた。
「くっ!」
言葉にならない声。
僕はその悲痛な音の根源に目を向けることが出来なかった。
魔王さま。
それがこのサークルでの立ち位置であり、生物ヒエラルキーの頂点。
魔王さまの憂鬱みたいな理由でこのサークルを発起し、一時代でその名を大学全土に轟かせ続ける(色んな意味で)我等が部長、知里千景その人が、我々愚者らの前で仁王立ち、否、魔王立ちして此方を見下ろしている。
「なに? 君達暴れたいの?」
21歳といえば成人した歳から1年が過ぎ、やがて成人としての心構えを持ち始め、各々に定められた運命を受け入れ、落ち着きはじめるお年頃。
僕、立花宗則も多分に漏れずその21歳の青年であり、この目の前の魔王さまも畏れ多いことながら同窓である。
だが、彼女は多分に漏れることなく。
余すところない自己主張により、他の追随を許さない傍若無人の権化と化しておられた。
「知里ちゃん。僕はこんなことがしたかったわけじゃないんだ。この愚者がいけないんだよ? この愚者が僕に愚物を見せた挙句に愚考を開示し、愚鈍な動きで僕を苛立たせたんだ」
キッ! と音がなった気がした。
その根源を見ると、気がしたと表現するのを躊躇うほどにキッ! とした顔の愚者がこっちを睨め付けている。
「タロー。ムネリンに何を見せ、何を開示し、どんな動きをしたのか事細かに説明せよ」
「はっ! 私めは! 先輩が以前より申されておられましたラノベを書きたいという御所望に答えるべく! 持参していたノートにオーソドックスな異世界転生物のファンタジーをつらつらと1ページほど書きましてそれをお見せしましたところ! 先輩のお眼鏡に適わず、叱咤されました。私めは! その叱咤に言われようのないファンタジー世界への冒涜ともとれる一文があったことの非を認めるよう要求させていただきましたが、間髪いれずに鉄拳制裁を喰らい、これでは私めの信じたファンタジーを陵辱されたまま引くこととなってしまう! そう思うに至り、剣を手にとって相対。臨戦態勢をとってしまうに至ります!」
「長ったらしい割に、私が聞いた質問に寄り添った回答が無いようだが、これはその発言を解釈して。私が! この頭で! それを紐解けと! 貴様はそう言っておるのか?」
どんなに語気が強く、波動を発しておられるような気魄を出されておられても、末尾になって艶やかかつ囁くような声に堕ちて行く独特な喋り方は、小心者は序盤で気圧され、豪胆な者は終盤でほだされてしまう。
「もうよい。その愚物なる物を寄越せ」
はっ! っと立ち上がり一枚のルーズリーフを手に取りすぐ知里ちゃんの元へ届ける熊本くん。
従順な犬。
それが僕の彼に対する最大の賛辞だ。
ルーズリーフを受け取った知里ちゃんは、何も持っていない手を腰に当てながらふんふんと読み連ねていく。
時折、ははは。などの笑いが聞こえる。
まさか? お気に召したのか?
「見事な愚物だ」
そう言ってルーズリーフを四つに折っていき、ちぎりはじめた。
紙吹雪ばりに舞ったドラグーンドラコの肉片。ドラゴンすらも勝てないうちの魔王さまは不敵に笑い、椅子にどっかりと腰掛けた。
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