いきなり異世界って理不尽だ!

みーか

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変化

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 監視カメラ映像を見ると、奥さんに使い方を教えてもらいDVDを見て田んぼ作りを勉強している。もちろん機械なんかなくて、全て手作業だ。
 汚れたりするから、田んぼの作業着は3着出して渡したし、洗濯板も渡してある。
 奥さんの服はずっと同じに見えるけど毎日綺麗な物に着替えてもらっている。草の汁などで同じ所を同じように染めて汚れのように見えるようにしてあるから同じ服に見える。

 真面目に田んぼ作りも始めたし、野菜も沢山の種類が育ってきた。
 果物の苗木も野菜と引き換えに渡したり、鶏のヒヨコを育てさせたりと次々に仕事を増やしていった。
 もちろん1人で何とか出来るくらいの量だ。なので夜はぐっすり寝てくれ、奥さんとゆっくり関われる。
 奥さんも、全く何もせずにいるより動いた方が良いので食事作りやヒヨコのお世話など無理のない範囲で働いてくれていた。

「さぁチール、今日も収穫の半分を渡しなさい。」
「おぉ。ほらよ!」
「わぁ、立派なトマト!美味しそう。」
「だろ!!そのトマトは俺の出した水で育ててみたんだ。色も良いし、美味しそうだろ!!」
「本当ね!それに、ここの野菜は湧き水から流れてくる水を使って育てているからか、味が濃くて美味しい!」
「そうだろぅ!!このスイカなんてめちゃくちゃ甘くて美味いんだ!」
「へぇー、すごいね!!今切って一緒に食べよう!!」
「よし、待ってろ!!」
 チールが包丁を取りに行った。
「おい、陽菜………。悪役はどうした?」
「あっ………ついうっかり……。」
 アルに言われて思い出した。でも、そんなに美味しいスイカなら食べてみたい!!

「ほら!」
 檻の隙間からチールが渡してくれる。
 一口食べると、今まで食べた中で1番の美味しさだった。
「んんんんーーーーー、あま~い!美味しい!!!」
「だろだろ!!昨日初めて収穫出来たんだ。食べてみたら、美味くて!!ほら、アルも食えよ!」
「……あ、ありがとう。」
 アルも目を見開いて驚いている。
「う、美味い!俺が作ったのより甘い!!」
「だろ!!」
 チールが得意そうにドヤ顔をしている。
「ここの野菜食ったら、絶対元気な子どもが産まれてくるぞ!」
「そーだね。頑張ってチール!」
「おぉ!!」
「今日の苗は、メロンと苺。それからスイカのお礼に何か欲しい物一つだけ出してあげる。」
「うーーーん、じゃあ肉がほしい!」
「OK!」
 一度チールの小屋やベットを消して、少し大きくした家の中に床と冷蔵庫とキッチンを出した。テーブルと椅子も出しておいた。
 奥さんもお腹が大きくなってくるとしゃがむのが辛いだろうから、椅子を用意した。
 ベットの他に布団も一組、そして2人分のパジャマも出した。
 奥さんは、毎晩着替えてから寝てるけど、チールはずっと作業着のまま地面に寝ていたから、少しは体も休まるだろう。
「これでどう?冷蔵庫の中にはお肉も入ってるよ。」
「……………いいのか?」
「だから、スイカのお礼だって言ったじゃない。本当に美味しかったから。ねっ、アル?」
「あぁ、悔しいが美味かった。俺も畑仕事がしたくなった。」
「あ…………ありがと………。」
「じゃ、メロンと苺も楽しみに待ってるね!」

 かなりチールが変わってきた。自分の育てた野菜が美味しいと言われて嬉しいのだろう。まともに話しが出来るようになってきた。
 監視カメラ映像を見ても、毎日真面目に働いている。
 
 その日の夜は、柔らかい布団で爆睡している。奥さんを呼んでお風呂に入ってもらったり着替えを渡したりして、少し話しをする。
「家をありがとうございます。お肉も、チールはとっても喜んでました。」
「良かったです。そろそろ次の作戦に移りましょうか。」
「次ですか?」
「はい、他のエルフ達とも会う機会を作ってみようかなと。また同じような事をするようならこのまま。もし、お互いに上手くやっていけそうならさらに次の作戦を考えてみます。」
「わかりました。あっ、ヒヨコちゃんとっても可愛くて、もぅ数匹増やしてもらえませんか?」
「あはははは、わかりました。なら、次は山羊とかどうですか?畑の野菜が食べられちゃうかもしれないけど。」
「山羊がどんな物かわかりませんが、是非、お願いします。」
「わかった。じゃあ、杭を打って縄で繋げるようにしておくね!」

 次の日、また野菜を回収して、山羊を2匹渡した。仔山羊が生まれたら山羊の乳も搾れるようになるし、キャベツなどの外側の葉などを餌にすればいいし、雑草も食べてくれる。
 
 人が近くを通るようになり、何かするかな?と思って監視カメラで見ていたけど、畑仕事や家畜の世話で大忙しで相手にする時間はないようだ。
 私達が収穫の半分を持っていくし、自分達が食べる分は頑張らないと減ってしまう。奥さんのお腹は目立ってきたし、しっかりと食べさせてあげたいという思いがあるようだ。
 山羊も可愛いようで、チールの癒やしにもなっていた。名前をつけて大切な野菜の美味しい所をあげたりしている。ちなみに山羊の名前は、ヤーとギーらしい。雌がヤー。雄がギー。そのまんまだ。
 奥さんが楽しそうに笑いながら夜に教えてくれた。

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