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エルフとドワーフ

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 マンションも公民館も取り囲んで矢を飛ばしたり石を投げたり。
 念の為、雪も多いから全てのガラスは強化ガラスで、割れないようにしてあるし壁も傷はつくかもしれないけど、それで壊れるような弱い物じゃないから安心だ。
「ここは雪も多くて、食料も少ない。だから奪える所から奪うのは当たり前だという考えのやつらが多いんだ。特にエルフやドワーフは魔力が強いから自分達は特別だと思ってる。そうじゃないエルフ達も沢山いるんだが、狭い空間の中で長く暮らして行くから考え方も狭くなるんだろうな……。すまない、陽菜さん!」
「なんでジガが謝るの。関係ないよ。あいつらみたいなのは前にも出会ったから大丈夫!少し様子を見よう。ジガは、マンションの人達に状況を伝えてきて。」
「わかった。」
 ナナガにルイ君に大丈夫と伝えに行ってもらい、ワーガと2人で外を見ていると、もぅ矢が無くなり、投げる石も無くなったようで、エルフもドワーフも肩で息をして疲れているようだ。
 勝手に攻撃して、勝手に疲れている。……しらんがな!!
 心の中で突っ込んで、もう少し様子を見る。

 そのうち何か大声で叫び出した。
全く聞こえないから、外の監視カメラ映像に切り替えて音声を聞く。
『俺達が誰かわかっているのか?この辺りを守ってやっているエルフだぞ!!』
『そーだ!この辺りで暮らすのなら俺達に許可がいるだろう!!俺達はここを管理しているドワーフ様だ!!』
『ここが使いたいなら、食べ物を全部渡せ!!』
 アルが増えた……。せっかくアルは頑張って畑仕事したりするようになったのに、また同じようなのが出てきてしまった。
 温室も夜の間は扉が開かないようになっているから食べ物を取る事もできない。

『私達が先に家を建てたんです。あなた達は山に帰ってください。寒いから外には行きません。』

 外に付けたスピーカーで、それだけ言って無視して寝る事にした。
 ギャーギャー騒ぐ声はしたけど防音効果もある建物だから、そんなに気にならない。一階の電気は公民館もマンションも消して真っ暗にしておいた。

 ゆきちゃんが2回ほど起きたけど、今日もゆったり寝れた。

 朝起きて、外を見ると雪だるまになりながらもまだ外にいる。
 知らん顔しながら、マンションまで移動して食堂で美味しい朝ご飯を食べる。
 多分、パンの焼ける良い香りなどが外に換気扇で流れてる事だろう。
 今日は、通路を通って温室に行き仕事をしてもらう。
 温室もガラス張りだから外から丸見えだ。中は暑いくらいだから働く人達は半袖を着て仕事している。
 それを見てエルフ、ドワーフ達がビックリしているようだ。
 
 公民館に戻ってルイ君にゆきちゃんを任せて外の様子を監視カメラで見る。
『さささささむむむいいいいーーー。』
『もももももぅ、だだだだめだー。』
 ガタガタ震えている。そんなに寒いなら帰ればいいのに。
 それにそんな格好してたら凍死するんじゃないの?というような格好だ。
 一度帰るのかと思ってたら、その場で焚き火をして温まり始めた。
 少し温まって元気になったのか、またギャーギャー言い始めた。
『どうしてもと言うなら、許可をやらん事もないぞ!』
『俺達の下僕として働くのなら許してやろう。俺達は優しいからな!』
 ダメだこりゃ。食べ物が少ないだけで戦争になったりするんだから、過酷な環境だとこんな風になってしまうのかなぁ。でも、このままだと一緒には暮らせないし、ここの人達も守らなきゃダメだ。

 うーん、何か良い方法ないかなぁ?ワーガと目が合った。
 そうだ、ワーガやリリガに出会った時は目の前にご馳走を並べて美味しく食べたんだった!そしたらヨダレを垂らして頼むから食べさせてほしいと頼んできて、それから仲良くなったんだ。
 食料不足や寒さで自分の事で精一杯の間は仲良くは無理かもしれない。この環境でも人の事を思いやれる人達はいるから、元々の性格もあるのかもしれないけど……。でも、試してみよう!
 昼になりエルフ、ドワーフ達は空腹でグッタリしている。もしかしたら食べ物が無くなったからここに来たのかもしれない。
 少し意地悪をしてみよう。カレー粉を換気扇の近くに置いて匂いが外に広がるようにした。
 
『もぅ……ダメだ。刺激的な匂いが………。』
『リーダー、頭を下げて食べ物分けてもらいましょうよー!』
『親分、おいらお腹が空きすぎて目が回ってきました。』
『どう考えても、俺達よりこっちの奴の方が強いですよ~。家だってこんなに立派なんだし。』
『素直に食べ物が無いから恵んでくださいってお願いしましょうよ~!!』
『俺、子ども達が腹空かして待ってるんです!!何か食いもん持って帰ってやりたい!!』
『もぅ限界ですよ~!!』
 トドメだ!!バニラエッセンスも換気扇に近づけてる。
 半笑いになったエルフやドワーフが換気扇に近づいてきてる。

 まだリーダー達は、やせ我慢を続けていて、いらん事を言うな!腹は減っとらん!!とかぶつぶつ言っていた。

 そっと換気扇の下辺りに、箱を出してその中にラーメンを入れる。ギリギリラーメンの器が通るくらいの隙間しか開けず、トレーに乗せて押し出す。
 換気扇の下にいた下っ端の人達が急に箱が出てきた事に気付いて、箱の扉をパカッと開いた。

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