異世界では人間以外が日本語でした

33 差し入れ

　カメラを隠してから1ヶ月ほど経ったけど、かなり俺達の食事も良くなって牢の中の人達も少し元気になって来たように見える。
　
　城の中も、前ほどピリピリしてないし、余裕が出てきているようだな。やっぱり美味しい物を食べる事って心にも元気が戻るんだ！早くアニマ国に帰って畑仕事がしたいなぁ。俺の作った野菜をお腹いっぱい食べたい！

　他の貴族達も、美味しい食事を知ってしまったからか、少し余裕が出てきてるような気がする。お金の使い道も、虐待や性的趣味に使うんじゃなくて、色々な食材や腕の良い料理人を探す事に使っているって兵士達が話してた。

「シオン君、これを見て！」
「ん？……あぁ、やっぱり平民達の税が上がったんだ。」
「そうみたいだね。畑仕事が忙しそうだ。下級貴族達は、料理人になってお金儲けしようと必死みたいだし。」
「今度は、平民や貧民をなんとかしないとな。」
「そうだねぇ、でも人数が多すぎて……。」
「なぁ、貴族以外アニマ国に逃げるってのはどうだ？」
「どうだろう。シオン君も知ってるだろうけど、アニマ国は怖い所だって教えられているから、全員は無理なんじゃないかな？」
「そう……だよな。俺も森には入るなって言われてた。」
「だから、逃げたいと思う人だけでいいんじゃないかな。」
「わかった。」
「ごめんね。」
「なんでトーマスさんが謝るんだよ。」
「あはは、そうだね。でも、シオン君のみんなを助けたいって優しさを否定するような事しか言えなかったから。」
「……でも、それはトーマスさんのせいじゃないし、本当の事だから。」
「うん。そうだね。」
「あっ、侍女と兵士がご飯運んできた！」
「急いで戻って研究してるフリしないと。」

　俺も急いでベットに入って魔力を取られて苦しい演技を始めた。

　ご機嫌で兵士も侍女も魔力の入った入れ物を持って出て行った。

「……ふぅ。」
「あっ、ポンタさん、コインさん！」
「よぉ、シオン！元気そうだな！」
「うん。見てよ、この食事！かなりマシになったんだ！」
「おぉ本当だ！量も増えてる。」
「だろ？俺の魔力は質がいいんだってさ。だから、かなりの量の食料が出せるから、最近食事が良くなってきたんだ。」
「さすがシオンだな！」
「まぁね～！」
「コインさん、私の家族をありがとうございます。」
「いや、俺の方こそ頼られると嬉しいから。」
「コインさん、また照れてる～！」
「おい、シオン！揶揄うなよ！」
「あははは！」
「トーマスさん、頼んだ物は？」
「これです。」
「OK！バッチリです。」　
「後、これ。ニーナから手紙預かってきた。クーンやケーンからの手紙も入ってるって。」
「メリーからの差し入れもあるよ。」
「ポンタさん、ついにメリーって呼び捨てにしてるんだ！」
「ま、まぁ……その、婚約者だしね。」
「ポンタさん真っ赤になってる！！」
「は、恥ずかしいから……！」
「兵士達が来たら困るから早く飯食べろ。」
「わかった。トーマスさんも差し入れ一緒に食べよう！」
「ありがとう。」
「俺達の分もあるから、一緒に食べよう。」
「うん。」

　4人で話しながらメリーさん達からのおにぎりや野菜の煮物、デザートのパウンドケーキをお腹いっぱい食べた。

　もう少しで色々と下準備が整うとコインさんが言ってた。
　貴族以外の人達にもアニマ国から野菜や果物を持ってきて配っていて、その人達にはトーマスさんが教えたニーン国の文字で『アニマ国より』と書いて家の前などに置いてるらしい。初めは、怪しんでいたようだけど、10日に一度ほど届く食べ物を楽しみにしているみたいだ。
　字が読めない人達も、読める人が口で伝えてる。コインさんもポンタさんもガリガリに痩せてふらふらしている人達を見るのが辛く、何かできないかと考えて動いてくれた。
　貴族にバレると取り上げられるのがわかっているから、バレないよう皆んな必死に隠しているから、まだ気付かれていないって言ってた。
　ニーナからの手紙は、心配だ会いたいって書いてある。俺も早くアニマ国に帰りたい。