異世界では人間以外が日本語でした

31 完成

　数日が過ぎて、トーマスさんが頼まれていた機械を完成させた。
　さすがトーマスさんだ。

「シオン君、これが完成したら、かなり楽に脱走できるようになるよ。」
「トーマスさん、本当に天才だ！」
「あははは、まだ試作だからね。一度試してみよう。」

　風呂場で試す事にして、俺が実際にやってみる事にした。
　もちろん魔力で動く機械だから俺の魔力を流してからスイッチを押す。

「トーマスさん、これでいいの？」
「うん。普通に動いててね。」
「わかった。」
「声も出してみて。」
「えーっと、美味しいご飯食べたい。」
「もういいよ。」

　俺は、風呂場でスクワットしながら美味しいご飯食べたいと機械に向かって言っただけだ。

「じゃあ、再生してみるね。」
「うん。」

　俺が動いた通りに、俺の映像が立体的に再生される。
　
「おぉー！俺が2人いる。」
「うん。成功だ！！」
「これで牢の中の人達を助けられる。」
「ただ、これに触る事ができないからすぐにバレると思うんだ。」
「んー、確かに。でも、時間は稼げるよ！」
「そうだね。沢山作って全員で逃げられるようにしよう。」
「そうだな。1人づつしてたらバレた時に次の人から逃げられなくなる。」
「そうなんだよ。もう少し改良してみるよ。」
「他にも何か作れたのか？」
「そうなんだ。これだよ。シオン君が言ってた監視カメラってやつを作ってみた。」
「おぉ、すげー！」
「小型カメラも作れたよ。」
「さっすが！！これを城のあちこちに隠して、モニターで確認したら、逃げやすい時や兵士の場所もわかる。」
「かなり逃げやすくなるね。」
「あとは、コインさんに透明になって来てもらって、カメラを隠してもらわないと。」
「そうだね、早く毎日の兵士のスケジュールを確認しよう。」
「もし、できそうなら王が食事する部屋とか、調理場とかにもカメラをつけてもらおう。」

　それから兵士に魔力装置が壊れて部品が足りないとか、もっと魔力消費が少ない機械が作れそうだからと言ってトーマスさんが大量の部品や素材を持って来させた。
　すでにトーマスさんは、少しの魔力で食べ物を出す機械を完成させているけど、まだもう少しかかると引き伸ばしている。
　他にも色々と便利な物を頼まれているけど、本当は完璧な物が作れるのに、すぐに壊れるようにしたり、ちょっと不便な物を渡したりしている。
　俺が来る前からずっとそうしてきたと言ってたから、完璧な物をすぐに作ってしまうと家族もトーマスさんもどうなるかわからない。用済みにならないように考えているようだ。

　コインさんに連絡を取って、明日城に来てもらうように頼んだ。

「シオン、来たぞ！」
「俺も来たよ！」
「コインさん、ポンタさん！！どう？上手くいってる？」
「なかなか難しいな。もっと早く助ける事もできるけど、居なくなったのがバレて、騒ぎになったら他の屋敷でも警戒するだろうからな。」
「あまり目立たない仕事をさせられている人達から助けてる。」
「そうか。難しいな。」
「そうそう、トーマスさん。奥さんと娘さんかなり話せるようになったぞ！それに、少しづつ体力も戻ってきて元気そうだ。」
「ありがとうございます。夜に少し話すだけですが、声も元気そうになってきました。それに、コインさんにとてもよくしてもらってると嬉しそうに話してくれます。」
「いや、俺はそんな礼を言われるほどの事は……。」
「いえ、本当に助かりました。」
「よせよ、照れる！」
「コインさん顔赤いよ～！」
「うるせー！」
「あははははは。」
「それにしてもトーマスさん、すごくスラスラ話せるようになったね。ビックリしたよ。」
「シオン君と毎日会話してますからね。それに新しい事を覚えるのは楽しいですから。」
「トーマスさん、すげーな。俺は勉強なんざしたくない！」
「俺も。」
「俺も。」
「3人とも、勉強は楽しいですよ？」
「いやー、じっとしてる事が無理だ。」
「俺は畑仕事してる方が楽しい。」
「シオンは、畑仕事大好きだもんな。」
「まぁね。」
「俺達も鍬で畑耕している方が勉強するより楽しい。」
「私は、体動かすのが苦手ですから。」
「あははははは、まぁそれぞれ得意な事をしよう！」
「だな！！」