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第一章 はじまり

【閑話】イザベルの休日 1

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 んん………

 ベッドのなかでググーッと伸びをしながら、時計に目をやるとまだ明け方だ。
 今日は珍しく何も予定がないのに、こんなに早く起きてしまうとは。
 せっかくの休日だしもう少し寝ようかな、と思い体勢を変えるも一度目が覚めてしまうとなかなか寝付けない。

 んー仕方ない、起きるか。

 ベットから体を起こしてペタペタと部屋を歩く。

 ちょっと散歩でもしたいけど、勝手に出るとまたアニーを心配させてしまうしなぁ。

 そうだ、アニーがくるまでヨガでもやって身体をあたためよう。
 明け方の澄んだ空気の中やるヨガって結構好きなのよね。
 前世の時も、子供達が産まれる前は朝の公園や早朝のヨガイベントなんかで身体を整えていたっけ。

 そんな事を思いながら静かな空間の中で気持ちよく身体を伸ばしているとコンコンッと小さく扉を叩く音が聞こえた。

「あ、はい」
「お嬢様、おはようございます。あら、夜着がだいぶ乱れていますが」
「あ、今ヨガをやっていたの」
「ヨガ?」

 あ、やば。
 こっちの世界にヨガって言葉なかったんだった。

「あ、えーと。ヨーッとガーッと身体を伸ばしていたの」
「は、はぁ。ヨーッとガーッと、ですか? お嬢様はユーモアのある表現をされますね」
「そ、そうかしら。おほほほ」

 良かった、なんとか誤魔化せたっぽい。

「あ、そういえばお嬢様は本日のご予定は空いていらっしゃるようですが、もし宜しければスペシャルマッサージでも如何でしょうか。私共が魂を込めて丹念にお手入れ致しますわ」

 げっ、せっかくのお休みなのに一日エステ地獄とか勘弁して!?

「え!? えーっと、今日は何か予定があったかも?」

 下手な断り方だとアニー泣くしなぁ。
 どうしよう……あ! そうだ。保育園の子供達のために何か買ってきてあげよう。

「か、買い物! 市井に買い物に行きたくて」
「買い物、ですか?」
「そうなの。保育園の子供達用の物を買ってこようと思って」
「ですが、先日もおもちゃや子供用衣類を購入されていらっしゃいましたよね」
「ま、まぁそうなんだけど」

 アニーは何かを考えているのか、暫く黙り込んだが、何かを思いついたようで徐に口を開いた。

「お嬢様、どうしても園児用のものが必要でしたらご購入されれば宜しいかと思いますが、たまにはご自身の物を購入されては如何でしょう」
「え? 自分用?」
「ええ。お嬢様はいつも周りの方々を気遣って下さいますが、たまにはご自身のために投資されても宜しいかと」

 むむ、それは全く頭になかった発想だわ。

「香油やハーブティーなんて如何ですか? お気に入りの香りに包まれながらゆったり過ごすと身も心もリラックス出来ますわ」
「うーん」

 香油やお茶かぁ。
 お茶は嗜みとして必要だけど、香油はアニーのマッサージやお手入れの時しか基本的には使わないしなぁ。

「最近リラックス用の香油というものが流行っているようで、身体や衣類には直接付けずに、専用の器に入れて水と数的の香油を垂らして温めて使う物があるそうですわ」

 あ、それもしかしてアロマのことかな?
 前世ではヨガの時に焚いたりしていたっけ。

「へぇ、そんなものがあるの。アニーは詳しいのね」
「美容に関して最先端の情報を仕入れるのも私共の仕事だと思っております。もしご興味がございましたらお店までご案内いたしますが」

 んー、そうだなぁ。
 そんなに香りが強くないものなら買いに行ってもいいかも?
 ま、お外にも出たかったし、そのまま市井を散策するのも良さそうね。

「じゃあお願いしてもいいかしら」
「はい、畏まりました。では身支度を整えますので鏡台までお願い致します」

 鏡台に案内されると、アニーはいつも通りにテキパキとした動きで私の身支度を手伝ってくれた。
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