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第一章 はじまり
【ヘンリー視点】貴女を想う
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貴女は麻薬みたいに中毒性のある方だ。
気の強そうな外見とは裏腹に、子供を愛し、無償で行動が出来る。
かと思えば、令嬢の立場では考えられないような発想で周囲を圧倒させる。
あぁ、私は貴女という人間性に魅入られた、しがない男の一人だ。
貴女に会いたい。
貴女に会いたい。
貴女に会いたい。
今すぐこの場を離れ、貴女との時間を過ごしたい。
「殿下……殿下? サインの筆が止まっておりますが」
イザベル嬢は、今何をしているのだろう。
アイツ……アルフに迫られたりしてはいないだろうか。
イザベル嬢を見る、アルフのあの眼。
あれは、義妹を想う眼ではない。
それに、あの態度。
今まで何かに執着する様子などなかったアルフが、イザベル嬢の事になると立場を捨て、なりふり構わずに行動する。
あれは、どこか狂気めいた物を感じる。
……アルフが暴走する前に、イザベル嬢と早く結婚をした方が良さそうだ。その方が彼女の身を守れるだろう。
「ヘンリー殿下!」
「ん、何だ」
「先程から筆が止まっております。サインをお願い致します」
「ああ、すまない。考え事をしていた」
「またですか? 最近物思いに耽る様子が多く見受けられますが」
「そうか? いや、そうかも知れないな」
「はぁ」
「悪い、一旦外出をする。急ぎの用件はこれ以外にはないな?」
「はい、至急の案件はこちらのみですが。って、殿下どちらへ!?」
「アルノー領まで用事があるのを思い出したから馬で出掛ける。出来たら護衛は最小限にしたい」
「で、でしたら騎士団に声掛けをしてみます」
「ああ、悪いな」
本来なら馬車で行くところだが、敢えて馬で行くのはイザベル嬢と相乗りが出来るからだ。
イザベル嬢は隠しているようだが、彼女はどうやら乗馬が好きな様で、馬に乗っているといつも楽しそうだ。
ちなみに、ここ最近のイザベル嬢の予定については調べが付いていて、今日なら馬を飛ばせば会えるだろう。
そんな事を考えながら用意された馬に跨った。
それにしても、イザベル嬢の発想には毎回驚かされる。
保育園の設立や教育改革。
とても通常の令嬢教育だけでは思い付かない発想だ。
アルフも非常に優秀だが、あの着眼点の鋭さはアルノー家の血筋なのだろう。
それに、子供達の接し方。
あれは、母親が我が子に向けるような、深い愛を感じさせる。
そう……イザベル嬢は子供達といると、いつも慈愛に満ちた眼をしており、接し方も手慣れている。
最初にその光景を見た時は本当に衝撃的だった。
しかし、私は気付いていた。
子供と接している時に、ふと見せるイザベル嬢の、悲しげな表情に。
イザベル嬢の過去に、何かあったのだろうか。
しかし、イザベル嬢は一人娘で、アルフ以外に兄妹はいない。
自分より幼い子と接する機会があったとは思えないのだが……。
イザベル嬢に関する報告を思い出しても、イザベル嬢の今までの行動を見てきても、答えは出ない。
そして、時折り見せるその悲しげな表情とは裏腹に、イザベル嬢は子供達といるとよく笑う。
仮面のような笑顔を纏った令嬢達とは違う、飾り気のないその表情に強く惹かれた。
まぁ、イザベル嬢が私に向ける顔は困惑したような表情ばかりなのが悲しいところだが……。
今は貴女のことを欲するばかりの私だが、それと同時に貴女の笑顔を守りたいのも事実だ。
そして、出来ることなら貴女にもっと寄り添いたい。そして、貴女を大切にしたい。
……さぁ、アルノー領に入った。
もう間もなく貴女に会える。
どうか、私にまたあの笑顔を見せてくれ。
気の強そうな外見とは裏腹に、子供を愛し、無償で行動が出来る。
かと思えば、令嬢の立場では考えられないような発想で周囲を圧倒させる。
あぁ、私は貴女という人間性に魅入られた、しがない男の一人だ。
貴女に会いたい。
貴女に会いたい。
貴女に会いたい。
今すぐこの場を離れ、貴女との時間を過ごしたい。
「殿下……殿下? サインの筆が止まっておりますが」
イザベル嬢は、今何をしているのだろう。
アイツ……アルフに迫られたりしてはいないだろうか。
イザベル嬢を見る、アルフのあの眼。
あれは、義妹を想う眼ではない。
それに、あの態度。
今まで何かに執着する様子などなかったアルフが、イザベル嬢の事になると立場を捨て、なりふり構わずに行動する。
あれは、どこか狂気めいた物を感じる。
……アルフが暴走する前に、イザベル嬢と早く結婚をした方が良さそうだ。その方が彼女の身を守れるだろう。
「ヘンリー殿下!」
「ん、何だ」
「先程から筆が止まっております。サインをお願い致します」
「ああ、すまない。考え事をしていた」
「またですか? 最近物思いに耽る様子が多く見受けられますが」
「そうか? いや、そうかも知れないな」
「はぁ」
「悪い、一旦外出をする。急ぎの用件はこれ以外にはないな?」
「はい、至急の案件はこちらのみですが。って、殿下どちらへ!?」
「アルノー領まで用事があるのを思い出したから馬で出掛ける。出来たら護衛は最小限にしたい」
「で、でしたら騎士団に声掛けをしてみます」
「ああ、悪いな」
本来なら馬車で行くところだが、敢えて馬で行くのはイザベル嬢と相乗りが出来るからだ。
イザベル嬢は隠しているようだが、彼女はどうやら乗馬が好きな様で、馬に乗っているといつも楽しそうだ。
ちなみに、ここ最近のイザベル嬢の予定については調べが付いていて、今日なら馬を飛ばせば会えるだろう。
そんな事を考えながら用意された馬に跨った。
それにしても、イザベル嬢の発想には毎回驚かされる。
保育園の設立や教育改革。
とても通常の令嬢教育だけでは思い付かない発想だ。
アルフも非常に優秀だが、あの着眼点の鋭さはアルノー家の血筋なのだろう。
それに、子供達の接し方。
あれは、母親が我が子に向けるような、深い愛を感じさせる。
そう……イザベル嬢は子供達といると、いつも慈愛に満ちた眼をしており、接し方も手慣れている。
最初にその光景を見た時は本当に衝撃的だった。
しかし、私は気付いていた。
子供と接している時に、ふと見せるイザベル嬢の、悲しげな表情に。
イザベル嬢の過去に、何かあったのだろうか。
しかし、イザベル嬢は一人娘で、アルフ以外に兄妹はいない。
自分より幼い子と接する機会があったとは思えないのだが……。
イザベル嬢に関する報告を思い出しても、イザベル嬢の今までの行動を見てきても、答えは出ない。
そして、時折り見せるその悲しげな表情とは裏腹に、イザベル嬢は子供達といるとよく笑う。
仮面のような笑顔を纏った令嬢達とは違う、飾り気のないその表情に強く惹かれた。
まぁ、イザベル嬢が私に向ける顔は困惑したような表情ばかりなのが悲しいところだが……。
今は貴女のことを欲するばかりの私だが、それと同時に貴女の笑顔を守りたいのも事実だ。
そして、出来ることなら貴女にもっと寄り添いたい。そして、貴女を大切にしたい。
……さぁ、アルノー領に入った。
もう間もなく貴女に会える。
どうか、私にまたあの笑顔を見せてくれ。
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