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旅
誕生日ケーキ
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久しぶりだった。お母さんが死んでから誕生日というものは存在しなかった。あったと言えば椿の誕生日会だけだった。
「お兄ちゃん!よかったね。」
椿が僕に向かって笑顔になった。僕も珍しく、笑顔だったと思う。
「あ、椿。先に食べるのはお兄ちゃんだからな。」
優しい声。いつも僕にはかけてくれない声。
お父さんは僕に大きめに切って皿に乗せ僕にくれた。
「あ、ありがとう。」
「いいんだぞ。今日は特別だからな。」
ケーキを切り分け、僕はケーキをフォークで小さくとって口に運んだ。運ぶ瞬間お父さんの顔を見た。その顔は何故か悲しい顔をしていた。『美味しい』という準備は出来ていた。でも、ケーキが舌に触れた瞬間吐いてしまった。咳き込み僕は服と床を汚してしまう。
「ご、ごめんっ。」
僕はお父さんの顔を見る。その顔には喜んでいるのと悲しい感情が混ざっているように思えた。
「お兄ちゃん!」
椿が嫌な顔をせずに片付けてくれた。お父さんは何も言わずに椿の前に出ていたケーキと自分のケーキを僕の目の前で捨てた。その時やっと僕は分かった。もうお父さんは僕を見てはくれないんだと。ケーキに何が入っていたのかは今でも分からない。ケーキに合わない不味いものでも入っていたのかもしれない。もうなんだったのかは聞けない。
「面白くない話をした。ツバキ。一つ頂戴。転生したし、この体は甘いもの好きかもしれない。食べてみる。」
キクはツバキからマカロンに似たものをもらった。
「これはねカマロンって言うんだよ。マカロンに似てびっくりした。名前も似てるし。」
「・・」
恐る恐る口にする。小さく噛み砕いた。
「ツバキ。ごめん。食べかけだけど。食べてくれるか?」
「え、あ、うん。大丈夫だよ。」
受け取って一口で食べる。
「やっぱりダメ?」
「美味しい。美味しいけど・・食べるまでが恐ろしい。」
「キク・・。貴方は。」
「サクラ?」
「へぇ?」
「何か言った?」
「い、いえ!何も。」
顔を赤くして首を横に振る。
「ツバキ、気にしなくていい。サクラも。ただの昔に過ぎない。それより氷狐はどうした?」
「精霊様は、『我はちと夜の街を歩いてくる。キクに伝えておけ、我の力が必要ならこう言え“我、トアキ・キクの名の元我の召喚に応じよ、我の精霊氷狐”。そうすれば我は一瞬でお前のところに帰って来れる』って言っていたよ。」
サクラが寄せて喋った。
「・・呼ばないどこ。」
「お待たせ。みんな。そろそろ宿に案内してあげる。」
いいタイミングを狙ったのかたまたまなのかアハマが走ってきた。走ってくる時のアハマの顔は少し気持ち悪かった。
「アハマさん~これ持って帰れますか~」
ツバキがそうアハマに聞く。「うん。持って帰れるよ。」と言って手を叩いた。すぐに包みを持って来てくれた。
「わーい!ありがとうございます。」
嬉しそうに低めに投げてキャッチをする。
「じゃあ出発しようか。」
「お願いします。アハマさん。」
「うん!じゃあ、行こうか。」
「「はい」」
アハマについていく。教会を出てすぐのところに宿はあった。
「お兄ちゃん!よかったね。」
椿が僕に向かって笑顔になった。僕も珍しく、笑顔だったと思う。
「あ、椿。先に食べるのはお兄ちゃんだからな。」
優しい声。いつも僕にはかけてくれない声。
お父さんは僕に大きめに切って皿に乗せ僕にくれた。
「あ、ありがとう。」
「いいんだぞ。今日は特別だからな。」
ケーキを切り分け、僕はケーキをフォークで小さくとって口に運んだ。運ぶ瞬間お父さんの顔を見た。その顔は何故か悲しい顔をしていた。『美味しい』という準備は出来ていた。でも、ケーキが舌に触れた瞬間吐いてしまった。咳き込み僕は服と床を汚してしまう。
「ご、ごめんっ。」
僕はお父さんの顔を見る。その顔には喜んでいるのと悲しい感情が混ざっているように思えた。
「お兄ちゃん!」
椿が嫌な顔をせずに片付けてくれた。お父さんは何も言わずに椿の前に出ていたケーキと自分のケーキを僕の目の前で捨てた。その時やっと僕は分かった。もうお父さんは僕を見てはくれないんだと。ケーキに何が入っていたのかは今でも分からない。ケーキに合わない不味いものでも入っていたのかもしれない。もうなんだったのかは聞けない。
「面白くない話をした。ツバキ。一つ頂戴。転生したし、この体は甘いもの好きかもしれない。食べてみる。」
キクはツバキからマカロンに似たものをもらった。
「これはねカマロンって言うんだよ。マカロンに似てびっくりした。名前も似てるし。」
「・・」
恐る恐る口にする。小さく噛み砕いた。
「ツバキ。ごめん。食べかけだけど。食べてくれるか?」
「え、あ、うん。大丈夫だよ。」
受け取って一口で食べる。
「やっぱりダメ?」
「美味しい。美味しいけど・・食べるまでが恐ろしい。」
「キク・・。貴方は。」
「サクラ?」
「へぇ?」
「何か言った?」
「い、いえ!何も。」
顔を赤くして首を横に振る。
「ツバキ、気にしなくていい。サクラも。ただの昔に過ぎない。それより氷狐はどうした?」
「精霊様は、『我はちと夜の街を歩いてくる。キクに伝えておけ、我の力が必要ならこう言え“我、トアキ・キクの名の元我の召喚に応じよ、我の精霊氷狐”。そうすれば我は一瞬でお前のところに帰って来れる』って言っていたよ。」
サクラが寄せて喋った。
「・・呼ばないどこ。」
「お待たせ。みんな。そろそろ宿に案内してあげる。」
いいタイミングを狙ったのかたまたまなのかアハマが走ってきた。走ってくる時のアハマの顔は少し気持ち悪かった。
「アハマさん~これ持って帰れますか~」
ツバキがそうアハマに聞く。「うん。持って帰れるよ。」と言って手を叩いた。すぐに包みを持って来てくれた。
「わーい!ありがとうございます。」
嬉しそうに低めに投げてキャッチをする。
「じゃあ出発しようか。」
「お願いします。アハマさん。」
「うん!じゃあ、行こうか。」
「「はい」」
アハマについていく。教会を出てすぐのところに宿はあった。
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