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十五・みんないなくなった

みんないなくなった(3)

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「……加川(かがわ)、さん」 
「何やってる?落ちたらただじゃすまないぞ?」後ろから準に引きもどされた。
 そんなつもりはなかったんだけど。
「ごめん、なさい」
 消えてしまった恩田桜(おんだ・さくら)を思って、そう言葉が出た。
 わたしもケガをしてしまえば、きっとバトルはできなくなる。
 勝つこともできず元の世界にもかえれないけど、こんないやな思いもせずにむ。

 でも、それは正しい解決法かいけつほうじゃない。
 だって、図書館の仲間みんなの分までがんばらなきゃいけないんだ。
 それくらいしか、もうできることがないから。
 あの人たちのいたあかしを今、数字にしてわたしはかかえているんだから。

「本当にそうなのか?……信じるぞ?」
 準の真剣しんけんな目つきに、思わずうなずく。
「信じて下さい。わたしは、最後まであきらめない」
「わかった。おれも力をくす」
 な、何だろうこれは?どうして、こんなことをちかい合ってるの?
 それも、なかなか人と一緒いっしょに行動しないこの人と?


 夕食も、夜ミーティングも円が一人ケラケラとしゃべっていた。よく覚えていない。

 わたしは部屋に戻った。 
 それにしても。本当に人がった。最初十五人いたのが、今は三人。
 最多得点さいたとくてん六のわたしと準、それにくらべて点数てんすうのない紗英。どうしてこの三人がここまで残ったのだろう?ノートにこれまでのことを書いてみる。
 ああ、これを書くために用意よういされてたんだ。今さら気づいた。

「何、これまでの復習ふくしゅうかい?勉強家べんきょうかで何より」
 と、目の前に円のホログラムが現れた。目障めざわりな。
 って言うか、あんたがリストを落としたせいで、図書館組としょかんぐみはすべて消えた。
 わたしはそれを絶対ぜったい忘れない。
邪魔じゃまなの。今すぐに出てって」
「いい情報じょうほうを持ってきたのにつれないね?」
「だから何?」どうせ黒情報くろじょうほうなのはわかってる。聞かない方がいい。

「加川準(かがわ・じゅん)のこと。何でバトルでってるか。リストだけじゃないよ」
 手が止まってしまった。
「聞きたいでしょう?やっぱりね。莉々亜(りりあ)モテモテだし。いいなあー」
 モテモテ?さっきの準との会話かいわのこと?やっぱりカメラで音は聞いているのか?
 顔から火が出るほどずかしい。
「準は得意とくいげに言ってるよ。”おれのは当たるわけがない、そういう答えだから”ってさ。実際じっさい、バトルをしかけられているがはずれまくってるしね」
 そんなこと言うだろうか?あの準が。
「莉々亜の答えは、当然ぼくも知ってるよ。きみのは、それほど当てにくいわけじゃない。頭使ってよく考えればね。でも準はそう言ったんだって。どう思う?」
「どう思うって……」
 ああ、つい準の答えを考えてしまう自分がいる。
 それは、バトルのためというよりは準のひととなりが気になる……から?
 準の”大切なもの”って……何?

 こんなときに、何をひまなことやってるんだわたしは!

「だってもう、きみか宮内(みやうち)さんしかいないでしょ。準を当てる人」
 今まで話したときのことを思い出して、いくつかの言葉を思いかべて……。
 そしてどうするつもり?
 考えて、思いついた言葉でバトルして、準を消す?

 さっき思いがけずにちかったのに。最後まであきらめない、と。
 そんな裏切うらぎり、できるわけがない。
「あは。バカだな莉々亜。考えたってムダだって。準のは当てられないんだからさ。じゃあね!」
 円は意地悪いじわるに言うと、ひゅん、とジャンプして消えた。 

         <お兄ちゃん、どこ?帰りたい。家に帰りたい!>
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