【完結】知られてはいけない

ひなこ

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十六・準の目的

準の目的(1)

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 次の朝。食事と朝ミーティングが終わる九時までは、だれかと会って話してもいい。ただ、バトル動作が禁止きんしされているだけだ。
 わたしは食事前、準(じゅん)の部屋をノックする。廊下ろうかで会った紗英(さえ)も着いてきた。
 今となっては、別に聞かれてもいいことだけど。
 少し間があって、ドアが開く。ねむそうな顔の準が出た。

「おはようございます。あの、実は提案ていあんがあるんですけど」
「……何。寝起ねおきは頭が回らないんだ。ちょっとってて」
 二分くらいして、またドアが開く。わたしと紗英は準の部屋へ入った。

「提案って?」
「わたしはゲームじたいを、ご破算わさんにしたい」
「えっ?何言ってるの?」紗英は目をぱちくりした。

「遠野、今きみは六点。おれか宮内(みやうち)にバトルして勝てば、優勝ゆうしょうだろう。それではいけないのか?」
「加川(かがわ)さん、あなたもです。どうするつもりですか?」
「準でいい。これだけ人間が減って、学年のなんて意味がない」
「わかりました。では準」わたしは息をって続けた。
「わたしはどうしてもゲームをこわしたい。円の言う通りに進みたくない」
 それは、恩田桜(おんだ・さくら)が大事に毎日見ていた、パソコンの言葉ことばを信じたいからだ。

 ”ルール通りに勝ち残ってはいけない。悲劇ひげきの始まり。”

「昨日心配してくれて、わたしうれしかったです。何となくだけど、わたしと同じ思いで、ここにいるんだと思えたから。あなたの目的もくてきも、ただ勝つだけではないのでは?」
 顔が赤らんでいくのがわかった。また、告白こくはくめいている。でも、これはこいの告白じゃない。
 同じ思いをたしたい、という仲間としての告白。……の、はずだ。
 そばで紗英がいるのに、こんな真剣しんけんになってしまってずかしい。
 紗英はだまって聞いている。

「ゲームを壊したい、か。おれも壊したいものはあるが、ゲームじゃない。壊したいのは、ゲームマスターの円だ」
「えっ!」
 しいっ、と指を立てる準。でも、わたしにはもうわかっていた。
大丈夫だいじょうぶですよ。監視かんしカメラは、音の方は聞いてない」
「……ホントか?」
「ええ。何度か試して、確信かくしんしてます」
 ほっとため息をついて、また話しだす準。
「そうなのか。たしかに、聞いてたとしたらさっきのきみの”ゲームを壊したい”の時点じてんでアウトだよな」
「はい。で、円を壊したいって、どういうことです?」
「ああ、実はな……」

 ピンポンパンポーン!あの耳障みみざりな音が鳴った。
「食事か。じゃあ続きはまた後で。食べながらできる話でもないしな」
 一番聞きたいところで、話は終わった。
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