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完全復活
完全復活06
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大晦日から元旦に変わる頃、海と俺は高校近くの神社にいた。新年の願掛けをしようと集まった人々で、参拝の列は長く伸びる。
パーソナルスペースなど皆無なこんな場所でも、俺等ふたりは腕を組んだ。
「なあ海、なに願うんー?」
海は「そうだなあ」と白い息を吐く。
「ふつーに、金かな」
「かね」
「指輪の六万、だいぶ痛手だったし」
「ろくまん」
結局俺等はクリスマスを一緒に過ごせなかったから、プレゼントはなし。何も贈っていないのはお互い様だし、心の片隅に残る蟠りは、このまま時が解決するのを待つしかない。
悶々とする俺の隣、海の手元がチャリンと鳴る。
「神。手ぇ見せて」
「手?」
言われるがままに開いた手の平。そこにはキーホルダーが乗せられた。
「うわ、なにこいつ強そうっ」
「海の神、ポセイドンだよ」
「え!そうなん!?」
「お前、姿も知らねえで叫んでたの……?」
見事なシックスパックに豪華な髭。先端が三つに分かれた槍を携え、勇ましい表情のポセイドン。
「オー マイ ゴッド」
一瞬にして、憧れた。
くるくると彼を回転させながら、四方八方から眺めていると、海の手元が再び鳴る。
「おソロだから」
そこには俺の憧れの人が、同じままの表情で揺れていた。
「今はすっからかんだからこんなもんしか買えねえけど、また金入ったら一緒になんか買い行こーぜ」
「海……」
「それまではこのポセイドン様、学校鞄の目立つとこに付けとけ」
お揃いのキーホルダーを、毎日通学で使う鞄につけるなんてそんなの、そんなのもう。
「カップルじゃあん……」
最近の俺が涙脆いのか、じーんと胸にくる出来事が最近多いのか。どちらかはわからぬが、俺は泣いた。海の腕にぎゅっとしがみつき、ポセイドンにチュッチュして。
「まじで愛してるうううう!」
そう叫んだところで、年は明けた。
パーソナルスペースなど皆無なこんな場所でも、俺等ふたりは腕を組んだ。
「なあ海、なに願うんー?」
海は「そうだなあ」と白い息を吐く。
「ふつーに、金かな」
「かね」
「指輪の六万、だいぶ痛手だったし」
「ろくまん」
結局俺等はクリスマスを一緒に過ごせなかったから、プレゼントはなし。何も贈っていないのはお互い様だし、心の片隅に残る蟠りは、このまま時が解決するのを待つしかない。
悶々とする俺の隣、海の手元がチャリンと鳴る。
「神。手ぇ見せて」
「手?」
言われるがままに開いた手の平。そこにはキーホルダーが乗せられた。
「うわ、なにこいつ強そうっ」
「海の神、ポセイドンだよ」
「え!そうなん!?」
「お前、姿も知らねえで叫んでたの……?」
見事なシックスパックに豪華な髭。先端が三つに分かれた槍を携え、勇ましい表情のポセイドン。
「オー マイ ゴッド」
一瞬にして、憧れた。
くるくると彼を回転させながら、四方八方から眺めていると、海の手元が再び鳴る。
「おソロだから」
そこには俺の憧れの人が、同じままの表情で揺れていた。
「今はすっからかんだからこんなもんしか買えねえけど、また金入ったら一緒になんか買い行こーぜ」
「海……」
「それまではこのポセイドン様、学校鞄の目立つとこに付けとけ」
お揃いのキーホルダーを、毎日通学で使う鞄につけるなんてそんなの、そんなのもう。
「カップルじゃあん……」
最近の俺が涙脆いのか、じーんと胸にくる出来事が最近多いのか。どちらかはわからぬが、俺は泣いた。海の腕にぎゅっとしがみつき、ポセイドンにチュッチュして。
「まじで愛してるうううう!」
そう叫んだところで、年は明けた。
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