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海神コンビ解散
海神コンビ解散16
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「海!そのまま動くな!一時停止プリーズ!!」
そう言って、俺はスタートを切る。今日は妄想の踏み切り板はいらない。だってこれは跳び箱ではなく、ただの馬跳びだ。
ぽんぽんと弾むように地面を蹴って、最後の一歩は両足で。海の背中は広くて大きい海のよう。扇の如く手を目一杯広げても、俺をしっかり受け止めてくれる。
「な、なんっだてめえ!!」
海の背中へ両手を着いたその時、濱口の声がすぐそこでした。このまま両足を前へ送って、その無防備な胸板にダブルキックをお見舞いしてもいいのだけれど、それだと少し攻撃が弱い気もする。彼を一発で確実に眠らせるには、やっぱり首から上を狙いたい。
「オーバーヘッドォォオ──」
だから俺は、自分の股から刹那、逆さの景色を眺めたんだ。己の体重はそのまま両腕へ預けて逆立ちをし、海の背から手を離す時はバレーボールのトスをイメージ。肘を使い、なるべく身体が上へと跳ねるように。
俺の指先が離れるその瞬間、海が俺を送り出すように背の位置を上げたのは、彼が最後の力を振り絞ってくれた証拠。その10センチがなければきっと、この技は失敗に終わっていただろう。
「ポセイドォォオン!!!」
俺の利き足は右だ。だから右の踵を落とした。この技で一番苦労したことは、180度真逆だった世界が徐々に元通りとなる際に、素早く濱口の頭頂部へとポインターをセットすることだ。左足だけでの着地は自信がないし、万が一空振りで終わってしまえばそれは死を意味する。何故ならもう、濱口はバットを振り上げてしまっているから。振り下ろす動作へ移るのには、子供だってカンマ一秒も要さない。
ドキドキしなかったとは言わない。すごく勇気のいる判断と行動だった。だから確かに感じた踵への感触と、濱口の呻き声が耳に入った時、俺は気分が高揚したんだ。
そう言って、俺はスタートを切る。今日は妄想の踏み切り板はいらない。だってこれは跳び箱ではなく、ただの馬跳びだ。
ぽんぽんと弾むように地面を蹴って、最後の一歩は両足で。海の背中は広くて大きい海のよう。扇の如く手を目一杯広げても、俺をしっかり受け止めてくれる。
「な、なんっだてめえ!!」
海の背中へ両手を着いたその時、濱口の声がすぐそこでした。このまま両足を前へ送って、その無防備な胸板にダブルキックをお見舞いしてもいいのだけれど、それだと少し攻撃が弱い気もする。彼を一発で確実に眠らせるには、やっぱり首から上を狙いたい。
「オーバーヘッドォォオ──」
だから俺は、自分の股から刹那、逆さの景色を眺めたんだ。己の体重はそのまま両腕へ預けて逆立ちをし、海の背から手を離す時はバレーボールのトスをイメージ。肘を使い、なるべく身体が上へと跳ねるように。
俺の指先が離れるその瞬間、海が俺を送り出すように背の位置を上げたのは、彼が最後の力を振り絞ってくれた証拠。その10センチがなければきっと、この技は失敗に終わっていただろう。
「ポセイドォォオン!!!」
俺の利き足は右だ。だから右の踵を落とした。この技で一番苦労したことは、180度真逆だった世界が徐々に元通りとなる際に、素早く濱口の頭頂部へとポインターをセットすることだ。左足だけでの着地は自信がないし、万が一空振りで終わってしまえばそれは死を意味する。何故ならもう、濱口はバットを振り上げてしまっているから。振り下ろす動作へ移るのには、子供だってカンマ一秒も要さない。
ドキドキしなかったとは言わない。すごく勇気のいる判断と行動だった。だから確かに感じた踵への感触と、濱口の呻き声が耳に入った時、俺は気分が高揚したんだ。
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