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キュートなSF、悪魔な親友
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「おつー」
と、ビールの入ったグラスを堀がぶつけてきたから、田村も
「おつかれまっス」と返してグラスに口を付けた。
堀から「ちょっと呑もう」という短いラインが入り、指定の店に行くとそこは堀の行きつけだというバーで。
田村は恐る恐る堀の横に座ると、緊張しながら「何か、ありました?」と訊いたが、堀はいつものふにゃふにゃした笑顔で「まあまあまあまあ」とビールだけ注文して。
「そんな、緊張しなくていいじゃん。取って食ったりしないからさ」
グラスを置いた堀が言って、ナッツを一つ口に入れた。
堀とサシで呑むのは初めてだから、緊張しないではいられない。
田村は仕事のことで何か話があるのだろうと思っていたから、当然ここには鹿倉にも誘いが入っているものと信じていただけに、まさかのサシ呑みに驚いていた。
「たむちゃんは、アレだろ? かぐちゃんのことが好きなんだよね?」
いきなり、そんなことを言われて目を見開いて堀を見た。
「あ、大丈夫大丈夫。別に、偏見とかないつもりだから。おいら、高校時代のツレに男夫婦いるから、その辺は全然理解してるつもりだから」
「え……あ……いや、そんな……」
「全然ね、気にしなくていいよ。こないだほら、多津屋でたむちゃんが泣きそうな顔してたから。あー、そっかーって思っただけだから」
「いや。違います。全然、あの……そーゆーんじゃ、ないです」
否定するけれど。誤解だと、ちゃんと言いたいけれど。あながち間違ってないのも確かで。
「かぐちゃんはねえ。可愛いよね、ほんと。誰にでも気さくに話できるし、空気読んで何でも対応できるし」
「まあ、はい。ですね」
「ずっと一緒にいると辛かったりする?」
「え? なんで?」
「ほら、かぐちゃんは全然お友達って感じじゃん? おいらにもちょっかいかけてくるし、たむちゃんも結構遊ばれてるみたいだし」
「あいつ、鬼ですよね、まじで」
そこだけはきっちり肯定。
ほんと、くふくふと可愛い顔して自分や堀に対して無邪気にじゃれてくるし。
「かぐちゃんは、知ってるの?」
「何をですか?」
「たむちゃんがかぐちゃんのこと好きって」
「…………さあ?」
いや、うん。これに関しては一体どう返すのが正解なのか。田村は悩みながら曖昧に答えた。
まさか、自分たちが体の関係を持っているなんて、さすがに言えないから。
しかも“恋人同士”なんて言う綺麗な関係ならともかく、ただただ性欲処理の為だけの行為として繋がっている関係だなんて、ほんとに言えないから。
「そかそかー。なかなか、言えんよな、そりゃ。ま、でも。かぐちゃんがおいらにちょっかいかけてくるのは、あんまりいい気はしないだろ?」
「……………」
しないです。なんてはっきり言いたいけど。ちょっかいかけてるのは鹿倉だし。
「やめろ、ってゆってんだけどね、いつも」
「いや、あいつがそんなん聞く気ないっスから」
「わかってんだ?」
「付き合い長いっスからね。あいつ堀さんのこと、気に入ってるから余計に」
「あー、なるほどね。甘えてくるんだね、おいらに」
堀がドヤ顔で言うから、田村は拗ねたように軽く睨んだ。
するといつものようにふにゃふにゃした笑顔でビールを飲んだ堀が、
「ジェラってんねー」と面白がった。
「悪いっスか?」
「悪くない、悪くない」
「ジェラついでに訊きますけど、かぐと泊まりの時になんかありました?」
「何かって?」
堀が悪い顔をして返した。
「…………」
そして、それにどう切り返していいかわからなくて黙っている田村に、
「一緒に寝たよ」と。
その一言に、田村は本気で、表情が固まった自分がわかった。
いつかの夢の映像が頭を過る。
「なーんつって」
へろーんと舌を出して堀が言う。
「たむちゃん、知ってる? かぐちゃん、お化け怖いんだって」
「は?」
「なんかさー、ちょっと古い旅館だったんだけどさ。和室、一部屋ずつ用意して貰ってたんだけど、かぐちゃん何か見えたんだか聴こえたんだか、半泣き状態でおいらの部屋に来て、怖いから一緒に寝てって」
そんな話は聞いたことがないが。田村は眉を顰めた。
「さすがに可哀想だったからさ、おいでおいでって一緒に寝てあげたけど。アレ、女の子だったら美味しかったんだけどなー」
「……女子だったら食ってンスか?」
「食っちゃうでしょーそりゃ。俺、据え膳は美味しく頂く主義だし」
堀がふにゃふにゃと虫も殺せないような柔らかい笑顔で、がっつり肉食発言をするから。
田村は大きくため息を吐いた。
鹿倉が再三言っている「あの人は男は抱かないよ」という言葉が、急に真実味を帯びる。
確かに、どんな熟女にもきゃあきゃあ言われて喜んで、言い寄ってくる女の子を片っ端から食い散らかしているだろう堀が思い浮かぶわけで。
「たむちゃんなら、かぐちゃんのこと美味しく頂いちゃうんだろうけど。おいらはごめん、かぐちゃんは可愛いけど、可愛いだけだなー」
「あいつが堀さんに色仕掛けしてきたとかじゃないンスか?」
お化け怖い、なんて話は聞いたことがないし、本当はそうやって鹿倉が堀のことを試したのかもしれない、と田村は思ったから。
「俺に色仕掛けしてどーすんだよ。半泣きで震えてるかぐちゃんは実際可愛かったけど、ほんとに怖がってたよ。たむちゃんも、お化け屋敷誘って口説いたら?」
「別に、口説くつもりはないっス」
「友達のまま一緒にいる?」
「そーっスね。仕事、あるし」
気持ちを通わす、なんてつもりはないから。鹿倉とは今のまま、ずっと一緒にいられればそれでいいから。
今の関係を壊すなんて、あり得ないから。
田村の本心だっただけに、堀がさっきまでのふざけた笑顔ではなく、優しくふっと笑いかけた。
「たむちゃん、イイコだね。じゃ、今度のヤマはちょっと頑張って、かぐちゃんと二人でイイモノ見せてよ」
言われて、田村も頷いてもう一度グラスを合わせた。
と、ビールの入ったグラスを堀がぶつけてきたから、田村も
「おつかれまっス」と返してグラスに口を付けた。
堀から「ちょっと呑もう」という短いラインが入り、指定の店に行くとそこは堀の行きつけだというバーで。
田村は恐る恐る堀の横に座ると、緊張しながら「何か、ありました?」と訊いたが、堀はいつものふにゃふにゃした笑顔で「まあまあまあまあ」とビールだけ注文して。
「そんな、緊張しなくていいじゃん。取って食ったりしないからさ」
グラスを置いた堀が言って、ナッツを一つ口に入れた。
堀とサシで呑むのは初めてだから、緊張しないではいられない。
田村は仕事のことで何か話があるのだろうと思っていたから、当然ここには鹿倉にも誘いが入っているものと信じていただけに、まさかのサシ呑みに驚いていた。
「たむちゃんは、アレだろ? かぐちゃんのことが好きなんだよね?」
いきなり、そんなことを言われて目を見開いて堀を見た。
「あ、大丈夫大丈夫。別に、偏見とかないつもりだから。おいら、高校時代のツレに男夫婦いるから、その辺は全然理解してるつもりだから」
「え……あ……いや、そんな……」
「全然ね、気にしなくていいよ。こないだほら、多津屋でたむちゃんが泣きそうな顔してたから。あー、そっかーって思っただけだから」
「いや。違います。全然、あの……そーゆーんじゃ、ないです」
否定するけれど。誤解だと、ちゃんと言いたいけれど。あながち間違ってないのも確かで。
「かぐちゃんはねえ。可愛いよね、ほんと。誰にでも気さくに話できるし、空気読んで何でも対応できるし」
「まあ、はい。ですね」
「ずっと一緒にいると辛かったりする?」
「え? なんで?」
「ほら、かぐちゃんは全然お友達って感じじゃん? おいらにもちょっかいかけてくるし、たむちゃんも結構遊ばれてるみたいだし」
「あいつ、鬼ですよね、まじで」
そこだけはきっちり肯定。
ほんと、くふくふと可愛い顔して自分や堀に対して無邪気にじゃれてくるし。
「かぐちゃんは、知ってるの?」
「何をですか?」
「たむちゃんがかぐちゃんのこと好きって」
「…………さあ?」
いや、うん。これに関しては一体どう返すのが正解なのか。田村は悩みながら曖昧に答えた。
まさか、自分たちが体の関係を持っているなんて、さすがに言えないから。
しかも“恋人同士”なんて言う綺麗な関係ならともかく、ただただ性欲処理の為だけの行為として繋がっている関係だなんて、ほんとに言えないから。
「そかそかー。なかなか、言えんよな、そりゃ。ま、でも。かぐちゃんがおいらにちょっかいかけてくるのは、あんまりいい気はしないだろ?」
「……………」
しないです。なんてはっきり言いたいけど。ちょっかいかけてるのは鹿倉だし。
「やめろ、ってゆってんだけどね、いつも」
「いや、あいつがそんなん聞く気ないっスから」
「わかってんだ?」
「付き合い長いっスからね。あいつ堀さんのこと、気に入ってるから余計に」
「あー、なるほどね。甘えてくるんだね、おいらに」
堀がドヤ顔で言うから、田村は拗ねたように軽く睨んだ。
するといつものようにふにゃふにゃした笑顔でビールを飲んだ堀が、
「ジェラってんねー」と面白がった。
「悪いっスか?」
「悪くない、悪くない」
「ジェラついでに訊きますけど、かぐと泊まりの時になんかありました?」
「何かって?」
堀が悪い顔をして返した。
「…………」
そして、それにどう切り返していいかわからなくて黙っている田村に、
「一緒に寝たよ」と。
その一言に、田村は本気で、表情が固まった自分がわかった。
いつかの夢の映像が頭を過る。
「なーんつって」
へろーんと舌を出して堀が言う。
「たむちゃん、知ってる? かぐちゃん、お化け怖いんだって」
「は?」
「なんかさー、ちょっと古い旅館だったんだけどさ。和室、一部屋ずつ用意して貰ってたんだけど、かぐちゃん何か見えたんだか聴こえたんだか、半泣き状態でおいらの部屋に来て、怖いから一緒に寝てって」
そんな話は聞いたことがないが。田村は眉を顰めた。
「さすがに可哀想だったからさ、おいでおいでって一緒に寝てあげたけど。アレ、女の子だったら美味しかったんだけどなー」
「……女子だったら食ってンスか?」
「食っちゃうでしょーそりゃ。俺、据え膳は美味しく頂く主義だし」
堀がふにゃふにゃと虫も殺せないような柔らかい笑顔で、がっつり肉食発言をするから。
田村は大きくため息を吐いた。
鹿倉が再三言っている「あの人は男は抱かないよ」という言葉が、急に真実味を帯びる。
確かに、どんな熟女にもきゃあきゃあ言われて喜んで、言い寄ってくる女の子を片っ端から食い散らかしているだろう堀が思い浮かぶわけで。
「たむちゃんなら、かぐちゃんのこと美味しく頂いちゃうんだろうけど。おいらはごめん、かぐちゃんは可愛いけど、可愛いだけだなー」
「あいつが堀さんに色仕掛けしてきたとかじゃないンスか?」
お化け怖い、なんて話は聞いたことがないし、本当はそうやって鹿倉が堀のことを試したのかもしれない、と田村は思ったから。
「俺に色仕掛けしてどーすんだよ。半泣きで震えてるかぐちゃんは実際可愛かったけど、ほんとに怖がってたよ。たむちゃんも、お化け屋敷誘って口説いたら?」
「別に、口説くつもりはないっス」
「友達のまま一緒にいる?」
「そーっスね。仕事、あるし」
気持ちを通わす、なんてつもりはないから。鹿倉とは今のまま、ずっと一緒にいられればそれでいいから。
今の関係を壊すなんて、あり得ないから。
田村の本心だっただけに、堀がさっきまでのふざけた笑顔ではなく、優しくふっと笑いかけた。
「たむちゃん、イイコだね。じゃ、今度のヤマはちょっと頑張って、かぐちゃんと二人でイイモノ見せてよ」
言われて、田村も頷いてもう一度グラスを合わせた。
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