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キュートなSF、悪魔な親友
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いつものように田村の部屋を訪れた鹿倉を、その日の田村は硬い表情で迎え入れたから。
扉を閉めて、足元に擦り寄って来たソラを抱き上げながら鹿倉が、
「どした?」
と首を傾げた。
「……いいの?」
「何が?」
意味不明な発言に訝しげに問い返して、鹿倉はとっととリビングへと進む。
ソラの顎を撫でてやったが、どうやら抱かれてくれる気分ではないらしく、腕の中から逃げ出してしまう。
「何だよもー。気まぐれだなー、ソラ」
チリチリと鈴を鳴らしながら走り去ったソラにちょっとだけ膨れて、当たり前のようにソファに脱いだジャケットをかけると、前のラグにころんと横になった。
「かぐ……」
「だから、どしたの? 俺今日、来ちゃまずかった?」
「てゆーか、まじでウチ来てていいの?」
田村が何を言おうとしているのかがわからなくて、鹿倉は起き上がり、田村の目を見る。
スウェットにエプロンといういつもの姿で、先ほどまで台所に立っていただけあって何やら美味しそうな匂いに包まれている田村は、けれども表情がいつものようなふわふわな雰囲気を纏っていなくて。
「……えっと。座る?」
本当に何かあるのかと思い、促すと素直にソファに腰かけたから、鹿倉も横に座った。
しかし、田村は鹿倉の目を見つめて黙ったまま、硬い表情を崩さない。
「田村が何言いたいのか、ほんっきで俺にはわかんない」
このままでは埒が明かないと思い、お手上げ、とばかりに鹿倉から素直に訊いた。
すると少しだけ逡巡したけれど、田村は意を決したように口を開く。
「かぐ、さ。堀さんと付き合ってるんじゃないの?」
真面目な表情で、真面目な声で。まっすぐに問うからコレは本気の質問なのだろう。
いつもの鹿倉ならココで肯定してへらへらとバレちゃったー?なんてふざけた返しをするところなのだが、さすがにそれをできる空気じゃなくて。
「……最近ちょっと、やり過ぎたかなあ?」
大きくため息を吐いて、頭を掻きむしって呟いた。
しかし田村は真剣な表情のまま、
「別に、それならそれで俺には黙ってることないし、俺だってちゃんと弁えるよ?」
と真面目に続ける。
「えー、おまえ弁えねーじゃん。据え膳絶対食っちゃうじゃん」
「そんなことしねーし。かぐが堀さんとそーゆー関係になってんなら、ちゃんと言ってよ。俺だって、人のモノに手を出すのはやだよ」
「じゃあ、食っちゃえばいいじゃん」
いつにない硬い田村にそろそろ飽きてきた鹿倉は、めんどくさくなってさらりと言う。
「何?」
「人のモノじゃないんだから、食ってくれていいよ?」
ほれ、と自分のネクタイを緩めてカッターシャツのボタンを外す。
「かぐ?」
「いや、まあちょっと反省はしてるよ。最近堀さんが結構ノってくれるから、嬉しくてさ」
楽しくなってどんどん堀へのスキンシップが激しくなってきているのは確かで。
しかも、女子の集団がいる時にそれをやっているとやたらと受けがいいのもあって、堀がどんどん喜ぶから。
「…………」
珍しく鹿倉が本当のことを話しているのに、田村は信じていないのか訝しげに眉をしかめたまま固まっていて。
「あの人、俺のこと絶対にそーゆー目で見ないから、面白いんだよね」
とりあえず、ネクタイだけ外す。さすがに裸になるのは、ちょっと待とう、と鹿倉が田村の混乱している様子を見ながら話し続けた。
「ほんと、田村ってピュアピュアだねえ。あんなふざけてんのに、まーっすぐ受け取っちゃうし」
「……ちょっと、待て」
「田村だけだよ、まじで。もっさんも志麻さんも最近は放置だもんなー」
「かぐ…………でもでも! かぐは堀さんのこと、好きでしょ?」
「好き好き大好き」
食い気味に言ってやる。
嘘じゃないのは確かだから。とりあえず、チームメンバーは同列で好きなのは、真実。
「……じゃ、俺は?」
「好き好き大好き」
当然、一本調子のセリフである。ここまで来れば大丈夫だろうと、いつものようにくふくふと鼻の奥で笑いながら言うと。
「おい!」
やっと。田村の表情が変わる。どうやら漸く自分が大きく勘違いしていたことに気付いたらしい。
「あれ? 嬉しくねーの?」
くるん、とキャラメル色の瞳を丸く輝かせ、ここぞとばかりに可愛さを演出する。本心なんて絶対に見せない鹿倉の常套手段である。
「……鬼かよ?」
「えー、こんな可愛い鬼なんて、いるー?」
「まじ、ふざけんなよなー」
田村が頭を抱えていて。
ほんとに、純粋無垢な可愛いヤツだなーと鹿倉は微笑むと。
「田村さー、俺が堀さんのこと好きだとしたら、身を引くつもりだった?」
ソファからするりと降り、リビングでの定位置という、ラグにぺたんと座り込む形になると、下から見上げるように田村の顔を覗き込んだ。
「当たり前じゃん、そんなの」
即答が返ってくる。
「でも俺、田村が志麻さんのこと好きって知ってるのに、ずるずるこんな関係続けてるけど?」
鹿倉に言われ、さすがに少し口ごもった。が。
「……それとこれとは話が別」
「都合良すぎない?」
「いんだよ。俺、志麻さんのこと好きだけどおまえのことも好きだから」
ストレートにそんなことを口走る。鹿倉は何を言い出すのかと眉を寄せた。
「……恥ずかしくね?」
「何で!」
「いや……あなたそんなに俺のこと好きでした?」
「好きだよ!」
興奮しているのか、食い気味の答えが返ってくるから、冷静なままの鹿倉は腕を組んで自分の顎を摘まむと。
「あー、まあ体はね。好きだよね」
「ちっがう! それだけじゃない!」
「あのねえ。田村さん、ちょっと落ち着こうか。俺、ここで愛の告白されてもどーもしよーがないんですわ」
「そんなんしてねーし」
「してねくねーし……」
「だって俺、かぐが傍にいないのって考えらんないし」
「おーい、田村さーん」
「いつだってかぐのこと、抱きたいって思っちゃうし」
「まあ、お望みならいつでもどーぞ」
「堀さんに取られるの、やだし!」
「いや、取らないって、あの人は」
もはや、鹿倉のふざけた返答なんて耳に届いていない田村は、
「俺の傍にいろよ!」と叫ぶように言うと鹿倉を抱きしめた。
どうやら完全に自分を見失っているようで。
きっと、恋人同士ならここで涙を流して愛の言葉なんて囁いてやるのが正解なのだろう、と鹿倉はされるがままに大人しく抱かれながら思う。
実際、田村のことを好きか嫌いかの二択から選ぶのであれば圧倒的に前者なわけで。
学生時代からもう十年も一緒にいるのだから、それはもはや何の名前を付けたらいいのかわからない「情」で、こうして声高に気持ちをぶつけてくる田村のことを愛おしいと思うのは当然で。
でも。
じゃあ自分が今この瞬間に田村以外のオトコから迫られたら嫌がるかというと、そうでもなく。
まかり間違って堀さんに押し倒されたら、流されるのはアリかなーとか。志麻さんが思い詰めて抱きたいなんて言ってくれたら、それはそれで全然抱かれるつもりだし。もっさんがちょっと恥ずかしそうに求めてきてくれたりなんてしたら、確実にオとされる気満々だし。
そんな、ふらふらと自分の「好き」な相手との情事を簡単に妄想できるくらい、田村だけに執心しているわけではないから。
それに。
ぐりぐりと、性的な雰囲気ではなく自分を抱きしめて離さない田村が、じゃあ本気で鹿倉だけを「愛している」のかと問えば、確実にそれは否定するだろうことは、鹿倉もわかっている。
田村はきっと今、ほんのりと志麻に対する気持ちが芽生えてきたけれど、相手が相手なだけに進むものも進まない関係の中で、手元にあるお手軽な温もりをライナスの毛布のように抱えていたいだけなのだろう、と鹿倉は思っているから。
ポンポン、と田村の頭を撫でた。そして、黙ったまま暫くぬいぐるみのように抱かれていると、田村も少し落ち着いてきたようで。
「……俺、何ゆったっけ?」
ぽそ、と田村が言ったけれど、鹿倉を抱く手を離さない。どうやら落ち着いたことで、自分が何を言ったのかに気付いたようで。その言葉を反芻し、その挙句何をやっているのかと思うと恥ずかしくて鹿倉の顔を見ることができなくなった。というのが田村の内心だろう。
鹿倉はいつものようにくふくふと笑った。
今度は温もりを確かめるのではなく、ただただ照れを隠す為の蓑としてのぬいぐるみになった鹿倉は、
「……とりあえず。えっちは食後に置いといて、先、メシ食おっか?」
と、言葉を選んで問いかけた。
頭から湯気が出てきそうな田村の羞恥心を察し、さすがにこれ以上皮肉るのは可哀想に思えて。
「…………うん」
田村は小さく頷くと、ガバっと鹿倉から離れ、一目散にキッチンへと逃げ出した。
鹿倉はそのまま自分の両膝を抱いて丸まると、
「まじ、可愛いヤツだなー」と小さく呟いて、くふくと鼻の奥で笑っていた。
扉を閉めて、足元に擦り寄って来たソラを抱き上げながら鹿倉が、
「どした?」
と首を傾げた。
「……いいの?」
「何が?」
意味不明な発言に訝しげに問い返して、鹿倉はとっととリビングへと進む。
ソラの顎を撫でてやったが、どうやら抱かれてくれる気分ではないらしく、腕の中から逃げ出してしまう。
「何だよもー。気まぐれだなー、ソラ」
チリチリと鈴を鳴らしながら走り去ったソラにちょっとだけ膨れて、当たり前のようにソファに脱いだジャケットをかけると、前のラグにころんと横になった。
「かぐ……」
「だから、どしたの? 俺今日、来ちゃまずかった?」
「てゆーか、まじでウチ来てていいの?」
田村が何を言おうとしているのかがわからなくて、鹿倉は起き上がり、田村の目を見る。
スウェットにエプロンといういつもの姿で、先ほどまで台所に立っていただけあって何やら美味しそうな匂いに包まれている田村は、けれども表情がいつものようなふわふわな雰囲気を纏っていなくて。
「……えっと。座る?」
本当に何かあるのかと思い、促すと素直にソファに腰かけたから、鹿倉も横に座った。
しかし、田村は鹿倉の目を見つめて黙ったまま、硬い表情を崩さない。
「田村が何言いたいのか、ほんっきで俺にはわかんない」
このままでは埒が明かないと思い、お手上げ、とばかりに鹿倉から素直に訊いた。
すると少しだけ逡巡したけれど、田村は意を決したように口を開く。
「かぐ、さ。堀さんと付き合ってるんじゃないの?」
真面目な表情で、真面目な声で。まっすぐに問うからコレは本気の質問なのだろう。
いつもの鹿倉ならココで肯定してへらへらとバレちゃったー?なんてふざけた返しをするところなのだが、さすがにそれをできる空気じゃなくて。
「……最近ちょっと、やり過ぎたかなあ?」
大きくため息を吐いて、頭を掻きむしって呟いた。
しかし田村は真剣な表情のまま、
「別に、それならそれで俺には黙ってることないし、俺だってちゃんと弁えるよ?」
と真面目に続ける。
「えー、おまえ弁えねーじゃん。据え膳絶対食っちゃうじゃん」
「そんなことしねーし。かぐが堀さんとそーゆー関係になってんなら、ちゃんと言ってよ。俺だって、人のモノに手を出すのはやだよ」
「じゃあ、食っちゃえばいいじゃん」
いつにない硬い田村にそろそろ飽きてきた鹿倉は、めんどくさくなってさらりと言う。
「何?」
「人のモノじゃないんだから、食ってくれていいよ?」
ほれ、と自分のネクタイを緩めてカッターシャツのボタンを外す。
「かぐ?」
「いや、まあちょっと反省はしてるよ。最近堀さんが結構ノってくれるから、嬉しくてさ」
楽しくなってどんどん堀へのスキンシップが激しくなってきているのは確かで。
しかも、女子の集団がいる時にそれをやっているとやたらと受けがいいのもあって、堀がどんどん喜ぶから。
「…………」
珍しく鹿倉が本当のことを話しているのに、田村は信じていないのか訝しげに眉をしかめたまま固まっていて。
「あの人、俺のこと絶対にそーゆー目で見ないから、面白いんだよね」
とりあえず、ネクタイだけ外す。さすがに裸になるのは、ちょっと待とう、と鹿倉が田村の混乱している様子を見ながら話し続けた。
「ほんと、田村ってピュアピュアだねえ。あんなふざけてんのに、まーっすぐ受け取っちゃうし」
「……ちょっと、待て」
「田村だけだよ、まじで。もっさんも志麻さんも最近は放置だもんなー」
「かぐ…………でもでも! かぐは堀さんのこと、好きでしょ?」
「好き好き大好き」
食い気味に言ってやる。
嘘じゃないのは確かだから。とりあえず、チームメンバーは同列で好きなのは、真実。
「……じゃ、俺は?」
「好き好き大好き」
当然、一本調子のセリフである。ここまで来れば大丈夫だろうと、いつものようにくふくふと鼻の奥で笑いながら言うと。
「おい!」
やっと。田村の表情が変わる。どうやら漸く自分が大きく勘違いしていたことに気付いたらしい。
「あれ? 嬉しくねーの?」
くるん、とキャラメル色の瞳を丸く輝かせ、ここぞとばかりに可愛さを演出する。本心なんて絶対に見せない鹿倉の常套手段である。
「……鬼かよ?」
「えー、こんな可愛い鬼なんて、いるー?」
「まじ、ふざけんなよなー」
田村が頭を抱えていて。
ほんとに、純粋無垢な可愛いヤツだなーと鹿倉は微笑むと。
「田村さー、俺が堀さんのこと好きだとしたら、身を引くつもりだった?」
ソファからするりと降り、リビングでの定位置という、ラグにぺたんと座り込む形になると、下から見上げるように田村の顔を覗き込んだ。
「当たり前じゃん、そんなの」
即答が返ってくる。
「でも俺、田村が志麻さんのこと好きって知ってるのに、ずるずるこんな関係続けてるけど?」
鹿倉に言われ、さすがに少し口ごもった。が。
「……それとこれとは話が別」
「都合良すぎない?」
「いんだよ。俺、志麻さんのこと好きだけどおまえのことも好きだから」
ストレートにそんなことを口走る。鹿倉は何を言い出すのかと眉を寄せた。
「……恥ずかしくね?」
「何で!」
「いや……あなたそんなに俺のこと好きでした?」
「好きだよ!」
興奮しているのか、食い気味の答えが返ってくるから、冷静なままの鹿倉は腕を組んで自分の顎を摘まむと。
「あー、まあ体はね。好きだよね」
「ちっがう! それだけじゃない!」
「あのねえ。田村さん、ちょっと落ち着こうか。俺、ここで愛の告白されてもどーもしよーがないんですわ」
「そんなんしてねーし」
「してねくねーし……」
「だって俺、かぐが傍にいないのって考えらんないし」
「おーい、田村さーん」
「いつだってかぐのこと、抱きたいって思っちゃうし」
「まあ、お望みならいつでもどーぞ」
「堀さんに取られるの、やだし!」
「いや、取らないって、あの人は」
もはや、鹿倉のふざけた返答なんて耳に届いていない田村は、
「俺の傍にいろよ!」と叫ぶように言うと鹿倉を抱きしめた。
どうやら完全に自分を見失っているようで。
きっと、恋人同士ならここで涙を流して愛の言葉なんて囁いてやるのが正解なのだろう、と鹿倉はされるがままに大人しく抱かれながら思う。
実際、田村のことを好きか嫌いかの二択から選ぶのであれば圧倒的に前者なわけで。
学生時代からもう十年も一緒にいるのだから、それはもはや何の名前を付けたらいいのかわからない「情」で、こうして声高に気持ちをぶつけてくる田村のことを愛おしいと思うのは当然で。
でも。
じゃあ自分が今この瞬間に田村以外のオトコから迫られたら嫌がるかというと、そうでもなく。
まかり間違って堀さんに押し倒されたら、流されるのはアリかなーとか。志麻さんが思い詰めて抱きたいなんて言ってくれたら、それはそれで全然抱かれるつもりだし。もっさんがちょっと恥ずかしそうに求めてきてくれたりなんてしたら、確実にオとされる気満々だし。
そんな、ふらふらと自分の「好き」な相手との情事を簡単に妄想できるくらい、田村だけに執心しているわけではないから。
それに。
ぐりぐりと、性的な雰囲気ではなく自分を抱きしめて離さない田村が、じゃあ本気で鹿倉だけを「愛している」のかと問えば、確実にそれは否定するだろうことは、鹿倉もわかっている。
田村はきっと今、ほんのりと志麻に対する気持ちが芽生えてきたけれど、相手が相手なだけに進むものも進まない関係の中で、手元にあるお手軽な温もりをライナスの毛布のように抱えていたいだけなのだろう、と鹿倉は思っているから。
ポンポン、と田村の頭を撫でた。そして、黙ったまま暫くぬいぐるみのように抱かれていると、田村も少し落ち着いてきたようで。
「……俺、何ゆったっけ?」
ぽそ、と田村が言ったけれど、鹿倉を抱く手を離さない。どうやら落ち着いたことで、自分が何を言ったのかに気付いたようで。その言葉を反芻し、その挙句何をやっているのかと思うと恥ずかしくて鹿倉の顔を見ることができなくなった。というのが田村の内心だろう。
鹿倉はいつものようにくふくふと笑った。
今度は温もりを確かめるのではなく、ただただ照れを隠す為の蓑としてのぬいぐるみになった鹿倉は、
「……とりあえず。えっちは食後に置いといて、先、メシ食おっか?」
と、言葉を選んで問いかけた。
頭から湯気が出てきそうな田村の羞恥心を察し、さすがにこれ以上皮肉るのは可哀想に思えて。
「…………うん」
田村は小さく頷くと、ガバっと鹿倉から離れ、一目散にキッチンへと逃げ出した。
鹿倉はそのまま自分の両膝を抱いて丸まると、
「まじ、可愛いヤツだなー」と小さく呟いて、くふくと鼻の奥で笑っていた。
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