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「うわ。なんかもー、店入るだけでテンション上がる」
 櫂斗が目をキラキラさせて、言う。
 朋樹も、実際ココに来るのは初めてだから同じ感想。

 電車でちょっと遠出して、郊外の某北欧系家具量販店に来てみた。
 家族連れが殆どのようだが、若いカップルもいて。
 カートを押しながら家具を見ていると、それだけでワクワクしてくる。

「トモさんちのお部屋コーデって、自分の趣味?」
 ソファやベッドなどの大型家具は、完全に眺めるだけだけど、それでも楽しくなって二人して座ってみたり寝てみたり。
「趣味って言う程のもんじゃないよ。一人暮らし、初めてだったから殆ど母親の思うがまま」
 基本的にはモノトーンで、とにかくシンプル。という朋樹の部屋だから、すっきりしていて“オトナ”だなーと櫂斗はいつも思う。

「あ、クッション! ね、おソロでトモさんちに置いときたい」
「あのね、櫂斗。俺ら、電車だよ? 嵩張るものは今度レンタカー借りて来よう」
「え! トモさん運転できるの?」
「そりゃ、免許あるし。実家帰ったら親父の車運転してるし」
「……トモさんって、オトナだったんだ」
「どーゆー意味だよ」

 下らない会話。でも、なんだかいかにも“恋人”みたいな感じが嬉しくて、櫂斗は朋樹に指を絡める。
 普通に恋人繋ぎ。どうせ誰も他人なんて見てないだろうから、もうそんなの当たり前で。

「トモさんち、緑なくない? 観葉植物とか」
「いや、俺枯らすのわかってるから無理。一回実家のなんとかって植物が増え過ぎたから持ってけって言われたけど、断った。そいえば、櫂斗の部屋には何かあったな」
「ん、アンスリウムとモンステラ。かーちゃんが世話してる」
「てことは、部屋は自由に入られてるってこと?」
「別に、見られて困るもんねーし。かーちゃん俺の部屋に自分のマンガ置きまくってるし」
 そう言えば“タッチ”は女将さんのだと言っていたな。
 朋樹は櫂斗の部屋を思い出す。

 一人っ子だからなのか、結構広い面積を占有していた。
 ベッドに勉強用の机は当然ながら、大き目の本棚――マンガばっかり――と、野球をやっていた頃に貰った表彰状やメダルなどを飾る棚なんてものもあって。
 そして女将さんが育てているといういくつかの観葉植物の鉢。
 きっと当たり前に女将さんが出入りして、掃除しているのだろう。

「俺、高校ん時はもう、立ち入り禁止とか言ってたと思うけど」
「トモさんエロ本とか堂々と置いてたからじゃない?」
「置かねーわ、そんなもん」
 彼女を部屋に連れ込んでいたからだ、とはさすがに言わない。というか言えない。
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