恋月花

月那

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☆☆☆

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「うわーい! 相楽、約束で? 絶対で?」
 子供のようにまるで小躍りでもしそうな様子で喜ぶ小形は本当にかわいくて、和巳は宗像に苦笑して見せた。

 あちらこちらを流浪している身ではあるが、浅く広くの友人関係は今までもわりと簡単に作ってきた。
 そういった友人に対してであれば、こんな風に喜んでもらえるなら自分は多少の我慢をしよう、なんて殊勝なことを思ったことはない。
 けれど、ここでの友人はそんな和巳を覆してくれる。
 “友人”の定義が、変わる。

「ありがとな、相楽」
 小形ではなく宗像に言われ、和巳は“何が?”と目で訊いた。
「この間ゲーセンで会ったときさ、瑞貴ちゃんこころにおまえのこといいねって言ってたらしいんそ。でもおまえってそーゆーの得意じゃなさそうじゃし、嫌がるんじゃないかなーと思ってたけえさ」
 確かに、好んで行きたいとは思わない。

「彼女にするかしないかはこれから先瑞貴ちゃんに会って話しておまえが決めることじゃけど、とりあえずその機会くらいは誰かが協力せんとできんもんじゃろ? 嫌々でもとりあえずその機会ができるっちゅーんはやっぱりありがたいんそ。小形も喜ぶしね」
「祐斗の友達だし、俺も友達だと思うし。だったら友達が幸せになるのに協力するのは、まあ当然だしな」
「俺だって相楽んこと友達じゃと思っとるそ!」
 横から小形が言い切り、和巳は笑ってありがとうと呟いた。

「むなっちもこころちゃんに対しての面目が立つし、小形は彼女を紹介してもらえるわけだし、俺としても役に立てて嬉しいよ」
「瑞貴ちゃん、いい子だよ」
「うん。ま、それは会ってからってことで」
 会って、気持ちが動かされることは有り得ないだろうが、それでもまあいいかと和巳は笑った。
「土日でどこか日中空けるようにする。今日座長に相談してみるよ」
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