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「あ、まっくろくろすけ」
ゲームセンター入り口付近に連立しているユーフォーキャッチャーの前で祐斗が立ち止まった。
話題のアクションムービーを四人で見終わった後、残りの時間をここで過ごそうという話になったのである。
「そういえばこの間花香ちゃん、トトロのぬいぐるみ抱えてたよな?」
言って、和巳は小さな黒い物体に狙いを定めている。
小形と中浦は二人して対戦型ガンアクションで白熱した闘いを始めており、祐斗と和巳はのほほんと三歳児のためのお土産を物色していたのである。
「こいつがかわいいかな」
山積みのぬいぐるみから、取れそうな物を選び、更によりかわいらしい物に狙いを付ける。
和巳のそんな様子は祐斗にはかなり新鮮で、くすくすと笑ってあれがいいこれはどうだと指差した。
「花香ちゃん喜んでくれるかな?」
「相楽ってばロリコンかよ? 俺、おまえにお兄さんだなんて呼ばれとーないで?」
「ちがーう。俺にとっても花香ちゃんは妹なんだ! 妹に気に入ってもらえる努力をするのは当然なんだよ」
「でも相楽は花香にとってはお兄さんちゅーよりはお姉さんだよなー。着物姿のおまえにしか懐かんしなー」
「そーなんだよ。悔しいからこいつで手懐けてやる!」
二回目にして見事取り出し口に落として見せた掌サイズの“まっくろくろすけ”を手にガッツポーズ。
「そいじゃーお兄さんはかわいい妹の為にねこバスでもゲットしちゃろーかいね」
ちょっと大きい“ねこバス”のぬいぐるみは、メインディスプレイとでも言いたいほど大きな回転式の機械の中に納まっている。値段もちょっとお高めであるが、祐斗はそれに狙いを付けた。
と、そのとき。
「あれ。小月じゃん? 相楽もー」
目的の方へと向かっていた二人に声をかけてきたのは同級生の宗像だった。
「あ、むなっち。……デート?」
祐斗の視線の先には宗像の隣に立つ女の子がいる。
「ははは、うん、まあね」
ちょっと照れた様子で宗像が笑った。
髪の長い色白の彼女は宗像の隣で、取ってもらったのだろうくまのプーさんのぬいぐるみを抱えて会釈などしてくれる。
祐斗は斎藤とその隣の女の子にも気付き、かなり驚く。
宗像と斎藤の仲がいいことは知っていたが、まさか彼女までもが友達同士だとは。
それよりも、一匹狼な斎藤に彼女がいることも衝撃の事実である。
「おまえらもデート?」
斎藤の姿に呆然としている祐斗に、宗像が茶化して訊いてきた。
「ははは、そうそう。男ばっか四人でデートなんそ。ほら、あっちに小形と中浦もおるじゃろ?」
祐斗はガンファイトに夢中になっている二人を指差した。
「相楽が珍しく自由になったけ、たまにはデートしちゃろうかねーゆうて。仕事ばっかりじゃあ山口の良さは教えちゃれんけーな」
今日の行程には観光の“か”の字もないのに、土地の良さも何もあったもんじゃないのだが、祐斗の台詞に和巳は苦笑しながら頷いた。
「そっかー。相楽って仕事しとるけあまり遊べんのんじゃったっけ? 大変じゃなあ?」
宗像が感心したように言い、和巳は「別に」と軽く首を横に振る。
「ね、あたしたちプリクラのトコ先に行っとくよ?」
宗像の彼女が退屈したのかそう言い、女の子二人は連れ立って店の奥にあるプリクラのブースへと去って行った。
「なんか、邪魔したんかな?」
心配した祐斗に宗像は「気にしなくていいよ」と軽く返した。
「こころと瑞貴ちゃんのデートに俺等が便乗しただけじゃけ」
「こころ? 見た目だけじゃなくまたかわいい名前だな」
和巳の台詞に宗像は照れて赤面する。
「いや別におまえ褒めたわけじゃないんだけど」
「るせ。でも、名前どおりかわいいじゃろ?」
「のろけるなよ、そこで」
和巳に突っ込まれて更に赤くなり、祐斗も見てられないと呆れたように肩を竦めた。
「あ、まっくろくろすけ」
ゲームセンター入り口付近に連立しているユーフォーキャッチャーの前で祐斗が立ち止まった。
話題のアクションムービーを四人で見終わった後、残りの時間をここで過ごそうという話になったのである。
「そういえばこの間花香ちゃん、トトロのぬいぐるみ抱えてたよな?」
言って、和巳は小さな黒い物体に狙いを定めている。
小形と中浦は二人して対戦型ガンアクションで白熱した闘いを始めており、祐斗と和巳はのほほんと三歳児のためのお土産を物色していたのである。
「こいつがかわいいかな」
山積みのぬいぐるみから、取れそうな物を選び、更によりかわいらしい物に狙いを付ける。
和巳のそんな様子は祐斗にはかなり新鮮で、くすくすと笑ってあれがいいこれはどうだと指差した。
「花香ちゃん喜んでくれるかな?」
「相楽ってばロリコンかよ? 俺、おまえにお兄さんだなんて呼ばれとーないで?」
「ちがーう。俺にとっても花香ちゃんは妹なんだ! 妹に気に入ってもらえる努力をするのは当然なんだよ」
「でも相楽は花香にとってはお兄さんちゅーよりはお姉さんだよなー。着物姿のおまえにしか懐かんしなー」
「そーなんだよ。悔しいからこいつで手懐けてやる!」
二回目にして見事取り出し口に落として見せた掌サイズの“まっくろくろすけ”を手にガッツポーズ。
「そいじゃーお兄さんはかわいい妹の為にねこバスでもゲットしちゃろーかいね」
ちょっと大きい“ねこバス”のぬいぐるみは、メインディスプレイとでも言いたいほど大きな回転式の機械の中に納まっている。値段もちょっとお高めであるが、祐斗はそれに狙いを付けた。
と、そのとき。
「あれ。小月じゃん? 相楽もー」
目的の方へと向かっていた二人に声をかけてきたのは同級生の宗像だった。
「あ、むなっち。……デート?」
祐斗の視線の先には宗像の隣に立つ女の子がいる。
「ははは、うん、まあね」
ちょっと照れた様子で宗像が笑った。
髪の長い色白の彼女は宗像の隣で、取ってもらったのだろうくまのプーさんのぬいぐるみを抱えて会釈などしてくれる。
祐斗は斎藤とその隣の女の子にも気付き、かなり驚く。
宗像と斎藤の仲がいいことは知っていたが、まさか彼女までもが友達同士だとは。
それよりも、一匹狼な斎藤に彼女がいることも衝撃の事実である。
「おまえらもデート?」
斎藤の姿に呆然としている祐斗に、宗像が茶化して訊いてきた。
「ははは、そうそう。男ばっか四人でデートなんそ。ほら、あっちに小形と中浦もおるじゃろ?」
祐斗はガンファイトに夢中になっている二人を指差した。
「相楽が珍しく自由になったけ、たまにはデートしちゃろうかねーゆうて。仕事ばっかりじゃあ山口の良さは教えちゃれんけーな」
今日の行程には観光の“か”の字もないのに、土地の良さも何もあったもんじゃないのだが、祐斗の台詞に和巳は苦笑しながら頷いた。
「そっかー。相楽って仕事しとるけあまり遊べんのんじゃったっけ? 大変じゃなあ?」
宗像が感心したように言い、和巳は「別に」と軽く首を横に振る。
「ね、あたしたちプリクラのトコ先に行っとくよ?」
宗像の彼女が退屈したのかそう言い、女の子二人は連れ立って店の奥にあるプリクラのブースへと去って行った。
「なんか、邪魔したんかな?」
心配した祐斗に宗像は「気にしなくていいよ」と軽く返した。
「こころと瑞貴ちゃんのデートに俺等が便乗しただけじゃけ」
「こころ? 見た目だけじゃなくまたかわいい名前だな」
和巳の台詞に宗像は照れて赤面する。
「いや別におまえ褒めたわけじゃないんだけど」
「るせ。でも、名前どおりかわいいじゃろ?」
「のろけるなよ、そこで」
和巳に突っ込まれて更に赤くなり、祐斗も見てられないと呆れたように肩を竦めた。
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