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和巳がそんな小さないじめらしきものに遭うのは、実はそれが初めてではなかった。
転入してすぐの頃は放課後何かと職員室に呼び出されることの多かった和巳は、誰もいないだろうと思っていた教室に数人の生徒がたむろっているのに気が付いた。
荷物を取りに教室に入り、それが噂に聞く“高柳一派”であることを知って内心眉を顰めた。
祐斗曰く“タチの悪い連中”であり、校外にも知られている連中である。
「カマみちゃーん、スカートはいて来んのんですかあ?」
教室に入った和巳に向かって言い放ったのは、高柳の横の机上に胡坐をかいていた遠山である。
一瞬何を言っているのかわからなかった和巳は動きを止めてそちらに目をやり、高柳以下五名がいいおもちゃを見つけたとばかりににやにやと嗤っているのに気が付いた。
「今からカレシに会うんじゃろ? キレーな顔してオトコだましちゃーいけんぞ」
和巳の仕事について誰かから聞いたのだろう、遠山が嬉しそうに言う。
実際小学校の頃にはそういった野次を飛ばす同級生も、中にはいた。
回った学校も数知れないわけだから、そういう連中にいじめられたこともある。
しかし、だ。
「……中学だろ、ここは」
ある程度分別の付く中学生になってからはさすがにそんなこともなく。
一座で女形をやっているということは日本の伝統芸の一つに携わっているのだというプライドを持っている和巳にしてみれば、彼等の言葉はあまりにもくだらな過ぎ、相手にする気にもなれない。
ぼそりと呟いた言葉はあいにく相手には聞き取れなかったらしく、黙ったままの和巳がショックを受けているのだろうと誤解し、嬉しそうに続ける。
「化粧して女子じゃあゆうて入ってくりゃー良かったんじゃないんか? そしたら結構モテとったで、カマみちゃんなら」
「そうそう。小月なんかは単純じゃけ騙しとるんじゃろ?」
「祐斗くーん、わたしと一緒に学校行きましょうってなー」
中浦たちと冗談で女性っぽい言葉を使うことはあるが、遠山のその口調は本当に気色の悪いもので。
「……くだらん」
和巳は軽くため息を吐くと、関わることの面倒を厭い、足早に教室を去ったのだった。
上履きがなくなる。という子供っぽいイジメなんて、恐らく連中の仕業に違いないと、和巳は確信していて。
だからと言って証拠を押さえているわけではないから、とりあえず放置するしかない。
祐斗たちがいることで、そんなくだらない“イジメ”なんて忘れかけていたから、久しぶりに奥歯で砂を噛む不快感を思い出していた。
和巳がそんな小さないじめらしきものに遭うのは、実はそれが初めてではなかった。
転入してすぐの頃は放課後何かと職員室に呼び出されることの多かった和巳は、誰もいないだろうと思っていた教室に数人の生徒がたむろっているのに気が付いた。
荷物を取りに教室に入り、それが噂に聞く“高柳一派”であることを知って内心眉を顰めた。
祐斗曰く“タチの悪い連中”であり、校外にも知られている連中である。
「カマみちゃーん、スカートはいて来んのんですかあ?」
教室に入った和巳に向かって言い放ったのは、高柳の横の机上に胡坐をかいていた遠山である。
一瞬何を言っているのかわからなかった和巳は動きを止めてそちらに目をやり、高柳以下五名がいいおもちゃを見つけたとばかりににやにやと嗤っているのに気が付いた。
「今からカレシに会うんじゃろ? キレーな顔してオトコだましちゃーいけんぞ」
和巳の仕事について誰かから聞いたのだろう、遠山が嬉しそうに言う。
実際小学校の頃にはそういった野次を飛ばす同級生も、中にはいた。
回った学校も数知れないわけだから、そういう連中にいじめられたこともある。
しかし、だ。
「……中学だろ、ここは」
ある程度分別の付く中学生になってからはさすがにそんなこともなく。
一座で女形をやっているということは日本の伝統芸の一つに携わっているのだというプライドを持っている和巳にしてみれば、彼等の言葉はあまりにもくだらな過ぎ、相手にする気にもなれない。
ぼそりと呟いた言葉はあいにく相手には聞き取れなかったらしく、黙ったままの和巳がショックを受けているのだろうと誤解し、嬉しそうに続ける。
「化粧して女子じゃあゆうて入ってくりゃー良かったんじゃないんか? そしたら結構モテとったで、カマみちゃんなら」
「そうそう。小月なんかは単純じゃけ騙しとるんじゃろ?」
「祐斗くーん、わたしと一緒に学校行きましょうってなー」
中浦たちと冗談で女性っぽい言葉を使うことはあるが、遠山のその口調は本当に気色の悪いもので。
「……くだらん」
和巳は軽くため息を吐くと、関わることの面倒を厭い、足早に教室を去ったのだった。
上履きがなくなる。という子供っぽいイジメなんて、恐らく連中の仕業に違いないと、和巳は確信していて。
だからと言って証拠を押さえているわけではないから、とりあえず放置するしかない。
祐斗たちがいることで、そんなくだらない“イジメ”なんて忘れかけていたから、久しぶりに奥歯で砂を噛む不快感を思い出していた。
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