【完結】かみなりのむすめ。

みやこ嬢

文字の大きさ
65 / 98
定められた運命

第64話:落ちた先

しおりを挟む


 音もなく現れた歩香あゆかちゃんに背中を押され、真っ黒な空間に突き落とされた。
 見えないだけで床があるのでは?なんて思ったけど何もない。二階から一階へ……ではなく、もっと際限なく落ちていく感覚がある。

「ひゃああああ!!」

 情けない悲鳴をあげながら落ちていく。
 すると、急にパッと視界が開けた。
 でも、手も足もまだ何処にも触れてない。

「なっ、なに?」
『信じられん、ここは……』
この町の上・・・・・だよ!』
「なんでぇ~!?」

 小凍羅コトラさんの言う通り、あたしがいるのは町の上空だった。正確に言うと、山の麓の上空。どれくらいの高さなんだろう。町全体が見渡せちゃうくらいの高さ。下を見れば町の明かりがある。田舎だから夜景と呼ぶには寂しい程度の明かり。

 今いる場所を理解した瞬間、あたしは現在も落下中だということを思い出した。

「し、しんじゃうってーー!!」

 まさか近所の家にクラスメイトを探しに入ってこうなるなんて完全に予想外。

 夜の空気がビシバシと身体に当たり、冷たいやら痛いやらで涙目になる。迫ってくるのは山の斜面に生えているたくさんの木々。直接地面に落ちるよりはマシだろうけど痛そうだなあ、なんてことを考えてる間にもどんどん落ちていく。

『心配いらねえよチビ助。俺らが助ける』
「う、うんっ!」

 太儺奴タナドさんが風を起こし、落下速度をゆるめてくれた。さっきまでの空気を切るような痛みや冷たさ、息苦しさを感じなくなり、かなり楽になった。

 その時、あたしの横を何かが落ちていった。

 歩香ちゃんだ!!

 あたしを突き落とした後、自分もあの空間に入ったんだろう。ものすごい勢いで頭から落ちていく。

「歩香ちゃんも助けて!」
『なんであんなヤツ──』
「おねがい」

 手を合わせて頼み込むと、渋々だけど太儺奴さんは風で歩香ちゃんの落下速度もゆるめてくれた。
 それでも、宙に浮けるようになったわけじゃない。自然落下よりはマシ、くらいの速度で落ちていく。

 木に当たる瞬間、枝や葉っぱが動き、歩香ちゃんの身体を包み込むように受け止めた。ギリギリ、と枝や幹が軋む音がする。遅れてあたしも葉っぱにキャッチされた。
 これは緑色の光……瑪珞バラクさんの力だ。

 そのまま伸びた蔦のようなものが身体を支えてくれて、あたしと歩香ちゃんは無事に地面へと降ろされた。

「……こっ、怖かったぁ~!!」

 手足が震えて立つことすら出来ず、あたしは落ち葉だらけの地面に手と膝をついた。

 すぐ側には歩香ちゃんがいる。あれだけ高い場所から落ちたにも関わらず、平然と立っている。表情はない。やっぱり様子がおかしい。

「歩香ちゃ……」
『待て、近付くな』
「え、なんで?」

 御水振オミフリさんに止められてる間に、歩香ちゃんは真っ暗な森の中に歩いていってしまった。

 ていうか、ここ何処???

『神社の裏にある森のようだ。少し先に拝殿がある』
「じゃ、じゃあ家からそんなに遠くないね」

 言われてみれば、周りには木々の間に大小の岩がゴロゴロと転がっているし、地面もやや傾斜がある。確かに近所の神社の裏にある森だ。

 歩香ちゃんが向かったのは……
 あれ、神社の拝殿と真逆の方向???
 山の方に行っちゃった!
 なんで!!?

「すぐ追いかけなきゃ」
其方そなたが行く必要はない。ここは忌み地ではないのだから、捜索は大人に任せるべきだ』
『そーそー、こっから先は危ないよ』
「でも……」

 どういう原理か分からないけど、忌み地である八十神やそがみくんの家からは離れられた。こんな岩だらけの山の中を探すなら、確かに大人の人に任せた方がいいかもしれない。

『ちゃんと気配は追ってるから安心しなチビ助。……ん? この先にもう一人いるぞ』

 風で周辺を探っていた太儺奴さんが、歩香ちゃんが消えた先にもう一人の気配を感じ取った。

 それ、間違いなく八十神くんだよね。

「みんな、もう少しだけ付き合って」
『ええ~っ? もう帰ろうよぉ』
「だって、二人ともあたしのクラスメイトなんだもん。一番近くにいるのはあたしなんだから、あたしが何とかしなきゃ」
『はあ、お嬢ちゃんの悪い癖だよ……』

 もし一人だったら行こうなんて思わない。
 あたしには頼れるボディーガードたちがいるから無茶が出来るんだよ。
しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/  香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。  シリアス成分が少し多めとなっています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

処理中です...