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第22話:アンカリング
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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
「………………正気か?」
「今日はまだ飲んでないだろ」
謙太の告白に、龍之介は思わず聞き返した。
身の置き場がなくてこの場から離れたくても手はまだ掴まれたまま。
リビングのソファーに座る龍之介の前に膝をつき、謙太は唇を結んで次の言葉を待っている。冗談でこんなことを言う男ではない。
「好きって、おまえ、それは……」
握られた手が緊張で汗ばむ。
この告白によって十年来の友人という関係は崩れた。嬉しい気持ちもあるが、それ以上に不安が大きくて素直に喜べずにいた。友人としての好意とは違う。わざわざ改まって伝えてきたのは、それが特別な感情だということだ。
「オレが嫌いならはっきり言ってくれ」
「ばか、そんなわけあるか」
嫌いだったら最初から一緒に住まないし同じベッドで寝たりしない、と龍之介はすぐさま否定した。
「オレは、もっとリュウに触れたい。そういう意味の『好き』だ。それでも平気で一緒にいられるか?」
「え」
つまり、これを受け入れれば、ただの同居や添い寝だけでは済まない。龍之介は返答に詰まった。
「イヤだったら殴っていい」
言葉で伝えるより実践した方が早い。
謙太はソファーに手をつき、顔を寄せた。びくりと身体を揺らし、龍之介は反射的に目を閉じる。そのまま固く閉じられた唇に、謙太が自分の唇を重ねた。
触れるだけの口付け。
すぐに唇は離されたが、龍之介は身動きひとつ取れなかった。手を掴まれていたからではない。キスされたことが嫌だと思わなかったからだ。
間近で見つめ合ったまま、謙太は更に言葉を続ける。
「一緒にいたらこれ以上のこともしたくなる」
「え、でも、おまえ性欲ないって」
「リュウ限定で復活した」
「はぁ???」
何度か抱き締められたことはあった。添い寝もした。キスも嫌ではなかった。
しかし、これ以上となると話は別だ。
「…………ちなみに、参考までに聞くんだけど、もし俺が嫌だって言ったらどーすんだよ」
「出てく」
「えっ」
「リュウが嫌なら、オレはここから出ていくよ」
返答次第で謙太はいなくなる。
そう考えた瞬間、龍之介は青褪めた。
「……ずるいだろ。そんなの、嫌だって言えるわけない」
「このまま側にいてもいい?」
「い、居てくれないと困る」
とりあえず叩き出されずに済んだ、と謙太は安堵した。
龍之介の寂しさに付け込んだ自覚はある。それでも、今回ばかりはどう反応されるか分からなかった。問答無用で拒絶されてもおかしくない話だ。
だからこそ、ここで退くわけにはいかない。
「じゃあ、もっと触っていい?」
「は?」
「さっき『これ以上のこともしたくなる』って言った」
「いやいやいや、待て。落ち着け。おまえに出ていかれるのはイヤだけど、それとこれとは話が」
「いつかは抱かせてほしいんだけど」
「抱っ……」
ストレートな物言いに龍之介は絶句した。
恋愛も性行為も女性としか経験がないのは二人とも同じ。となれば、より積極的な方が抱く側に回るのは当然のことだ。流石にそこまでの覚悟は出来ない。
フリーズする龍之介の手を握り直し、謙太は次の手に打って出た。
「じゃあキスだけ」
「…………そ、それくらい、なら」
予想通り、龍之介は要求を飲んだ。
最初に大きな要求をしてワザと断らせた後に小さな要求をすると受け入れられやすい。これは謙太が前の部署にいた時に覚えた交渉術のひとつ。
先ほどのキスを軽く済ませたのも、性的な接触に対する心理的なハードルを下げて後々承諾させるため。もちろん最初の要求もいずれ通すつもりだが、今はまだ少しずつ壁を取り払っていく準備段階。
「……なんか、うまく乗せられたような」
「気のせい気のせい」
やはり、龍之介は謙太に弱い。
「………………正気か?」
「今日はまだ飲んでないだろ」
謙太の告白に、龍之介は思わず聞き返した。
身の置き場がなくてこの場から離れたくても手はまだ掴まれたまま。
リビングのソファーに座る龍之介の前に膝をつき、謙太は唇を結んで次の言葉を待っている。冗談でこんなことを言う男ではない。
「好きって、おまえ、それは……」
握られた手が緊張で汗ばむ。
この告白によって十年来の友人という関係は崩れた。嬉しい気持ちもあるが、それ以上に不安が大きくて素直に喜べずにいた。友人としての好意とは違う。わざわざ改まって伝えてきたのは、それが特別な感情だということだ。
「オレが嫌いならはっきり言ってくれ」
「ばか、そんなわけあるか」
嫌いだったら最初から一緒に住まないし同じベッドで寝たりしない、と龍之介はすぐさま否定した。
「オレは、もっとリュウに触れたい。そういう意味の『好き』だ。それでも平気で一緒にいられるか?」
「え」
つまり、これを受け入れれば、ただの同居や添い寝だけでは済まない。龍之介は返答に詰まった。
「イヤだったら殴っていい」
言葉で伝えるより実践した方が早い。
謙太はソファーに手をつき、顔を寄せた。びくりと身体を揺らし、龍之介は反射的に目を閉じる。そのまま固く閉じられた唇に、謙太が自分の唇を重ねた。
触れるだけの口付け。
すぐに唇は離されたが、龍之介は身動きひとつ取れなかった。手を掴まれていたからではない。キスされたことが嫌だと思わなかったからだ。
間近で見つめ合ったまま、謙太は更に言葉を続ける。
「一緒にいたらこれ以上のこともしたくなる」
「え、でも、おまえ性欲ないって」
「リュウ限定で復活した」
「はぁ???」
何度か抱き締められたことはあった。添い寝もした。キスも嫌ではなかった。
しかし、これ以上となると話は別だ。
「…………ちなみに、参考までに聞くんだけど、もし俺が嫌だって言ったらどーすんだよ」
「出てく」
「えっ」
「リュウが嫌なら、オレはここから出ていくよ」
返答次第で謙太はいなくなる。
そう考えた瞬間、龍之介は青褪めた。
「……ずるいだろ。そんなの、嫌だって言えるわけない」
「このまま側にいてもいい?」
「い、居てくれないと困る」
とりあえず叩き出されずに済んだ、と謙太は安堵した。
龍之介の寂しさに付け込んだ自覚はある。それでも、今回ばかりはどう反応されるか分からなかった。問答無用で拒絶されてもおかしくない話だ。
だからこそ、ここで退くわけにはいかない。
「じゃあ、もっと触っていい?」
「は?」
「さっき『これ以上のこともしたくなる』って言った」
「いやいやいや、待て。落ち着け。おまえに出ていかれるのはイヤだけど、それとこれとは話が」
「いつかは抱かせてほしいんだけど」
「抱っ……」
ストレートな物言いに龍之介は絶句した。
恋愛も性行為も女性としか経験がないのは二人とも同じ。となれば、より積極的な方が抱く側に回るのは当然のことだ。流石にそこまでの覚悟は出来ない。
フリーズする龍之介の手を握り直し、謙太は次の手に打って出た。
「じゃあキスだけ」
「…………そ、それくらい、なら」
予想通り、龍之介は要求を飲んだ。
最初に大きな要求をしてワザと断らせた後に小さな要求をすると受け入れられやすい。これは謙太が前の部署にいた時に覚えた交渉術のひとつ。
先ほどのキスを軽く済ませたのも、性的な接触に対する心理的なハードルを下げて後々承諾させるため。もちろん最初の要求もいずれ通すつもりだが、今はまだ少しずつ壁を取り払っていく準備段階。
「……なんか、うまく乗せられたような」
「気のせい気のせい」
やはり、龍之介は謙太に弱い。
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