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追加エピソード
第20話:自覚と覚悟
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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
不審者騒動のあと、夫婦と別れてマンションの部屋に入った二人は揃って盛大な溜め息をついた。
「本物の不審者じゃなくて良かったな」
「ホントにな」
「で、なんでこんな時間に外にいたの?」
「ポン酢切らしてた」
「なるほど」
買い物袋を掲げてみせると、謙太は納得したようだ。龍之介が二人の後を追っていたことには気付いていない。
「晩メシ、すぐ温め直すから待ってて」
そう言って背を向けた龍之介を謙太が後ろから抱きしめた。突然の抱擁に、持っていた買い物袋が手から落ち、ゴトン、と床に落ちる。
「──もう危ない真似すんなよ」
回された腕にぐっと力が込められた。耳元で聞こえる声はさっきまでとは違い、やや低い。心配させたのだと、そこで初めて龍之介は気が付いた。
「…………わ、わかった」
その返事を聞いて、謙太はパッと手を離した。そして、龍之介を追い越してキッチンへと入り、鍋の中身を覗き込む。
「今日豚汁と魚か。うまそうだな」
「あ、ああ」
「オレ着替えてくる」
声も表情も普段通りに戻っている。
変わり身の早さに戸惑いながら買い物袋を拾い上げて中身を確認する。幸いポン酢の瓶は何ともなかった。着替えのために謙太が寝室に入ったのを見届けてから、龍之介はコンロの火をつけた。
夕食も済ませ、交替で風呂に入る。
これまでは謙太が先に入っていたが、最近は後でいいと言って譲らない。どちらでも構わない龍之介は、特に何とも思わなかった。
実際は、入浴の度に謙太は自慰をするようになっており、匂いやら何やらでバレないように順番を後にしたのだ。風呂上がりの掃除で痕跡を消し、抜いてスッキリした状態で寝る。これならベッドで多少龍之介に触れても反応しなくなるからだ。
不審者らしき男を捕まえて問い質している龍之介の姿を見た時は驚きで胸が潰れそうになった。今回は違ったが、もしあれが本物の不審者だったら危険だ。ナイフを持っている可能性もあった。
もし龍之介に何かあったら、と考えただけで全身が粟立つ。
龍之介は男で、守られる側ではない。怪しい人物を見れば躊躇なく向かっていくような性格だ。以前気を付けるように伝えてもこれだ。似た状況に遭遇すれば、また同じことを繰り返すだろう。
さっきは思わず念を押すついでに抱き締めた。流石に不審に思ったかもしれない。邪まな思いを抱いていると勘付かれたかもしれない、と謙太は自分の迂闊な行動を後悔した。
でも、龍之介を失う恐怖の方が大きくて止められなかった。
──俺はリュウが好きなんだ。
たぶん、ずっと前から。
友人としてではなく、恋愛対象として。
一度自覚してしまえば歯止めがきかなくなる。
正直に打ち明けて早く楽になりたい。
この生活に完全に慣れて抜け出せなくなる前に。
謙太はようやく覚悟を決めた。
不審者騒動のあと、夫婦と別れてマンションの部屋に入った二人は揃って盛大な溜め息をついた。
「本物の不審者じゃなくて良かったな」
「ホントにな」
「で、なんでこんな時間に外にいたの?」
「ポン酢切らしてた」
「なるほど」
買い物袋を掲げてみせると、謙太は納得したようだ。龍之介が二人の後を追っていたことには気付いていない。
「晩メシ、すぐ温め直すから待ってて」
そう言って背を向けた龍之介を謙太が後ろから抱きしめた。突然の抱擁に、持っていた買い物袋が手から落ち、ゴトン、と床に落ちる。
「──もう危ない真似すんなよ」
回された腕にぐっと力が込められた。耳元で聞こえる声はさっきまでとは違い、やや低い。心配させたのだと、そこで初めて龍之介は気が付いた。
「…………わ、わかった」
その返事を聞いて、謙太はパッと手を離した。そして、龍之介を追い越してキッチンへと入り、鍋の中身を覗き込む。
「今日豚汁と魚か。うまそうだな」
「あ、ああ」
「オレ着替えてくる」
声も表情も普段通りに戻っている。
変わり身の早さに戸惑いながら買い物袋を拾い上げて中身を確認する。幸いポン酢の瓶は何ともなかった。着替えのために謙太が寝室に入ったのを見届けてから、龍之介はコンロの火をつけた。
夕食も済ませ、交替で風呂に入る。
これまでは謙太が先に入っていたが、最近は後でいいと言って譲らない。どちらでも構わない龍之介は、特に何とも思わなかった。
実際は、入浴の度に謙太は自慰をするようになっており、匂いやら何やらでバレないように順番を後にしたのだ。風呂上がりの掃除で痕跡を消し、抜いてスッキリした状態で寝る。これならベッドで多少龍之介に触れても反応しなくなるからだ。
不審者らしき男を捕まえて問い質している龍之介の姿を見た時は驚きで胸が潰れそうになった。今回は違ったが、もしあれが本物の不審者だったら危険だ。ナイフを持っている可能性もあった。
もし龍之介に何かあったら、と考えただけで全身が粟立つ。
龍之介は男で、守られる側ではない。怪しい人物を見れば躊躇なく向かっていくような性格だ。以前気を付けるように伝えてもこれだ。似た状況に遭遇すれば、また同じことを繰り返すだろう。
さっきは思わず念を押すついでに抱き締めた。流石に不審に思ったかもしれない。邪まな思いを抱いていると勘付かれたかもしれない、と謙太は自分の迂闊な行動を後悔した。
でも、龍之介を失う恐怖の方が大きくて止められなかった。
──俺はリュウが好きなんだ。
たぶん、ずっと前から。
友人としてではなく、恋愛対象として。
一度自覚してしまえば歯止めがきかなくなる。
正直に打ち明けて早く楽になりたい。
この生活に完全に慣れて抜け出せなくなる前に。
謙太はようやく覚悟を決めた。
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