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第19話:不審者
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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
なんとなくギクシャクしたまま数日が過ぎた。
謙太は親友相手に発情してしまったことを気にして、出来るだけ顔を合わさないようにしていた。
龍之介も、謙太との関係をハッキリさせたいのに何も言えずに悶々としていた。
その間にも、謙太は度々仕事帰りにマンションの同じ階に住む女性と駅から一緒に歩いて帰っていた。この辺りに出没する変質者から守るためだ。
近所のよしみでボディガードの真似事をしている。そう思っていたのだが……
「あっ」
その日の夜、龍之介は調味料を切らしていたことに気付いて近くのコンビニまで買い物に来ていた。焼き魚に大根おろしを添えるのだが、ポン酢が無いことに気付いたのだ。醤油でも構わないのだが、謙太はポン酢を好む。だから、帰ってくる前にと急いで出掛けた。
一番近くのコンビニで品切れだったため、もう少し離れた店に行き、ようやく目当てのものを購入した頃に、謙太からのメールが届いた。
現在地は駅とマンションの中間地点。このまま少し待って一緒に帰ろうか。そう思っていた。
しかし、謙太が女性と談笑しながら歩いてくるのを見掛け、無意識に物陰に隠れてしまった。
不審者のこともあるから、最寄駅で会えば一緒に帰るのだと聞いていた。だが、並んで歩く姿は初めて見た。
小柄の可愛らしい女性だ。数軒隣の部屋の住人だが、龍之介はあまり付き合いがない。エレベーターで何回か行き合ったことがある程度だ。
その女性を守るように車道側を歩く謙太の姿に、少しだけ胸が痛んだ。
見つからないように隠れながら、薄暗い夜道を歩く二人を追い掛ける。
「なにやってんだ俺は……」
声を掛けて一緒に帰ればいいものを、何故身を隠してしまったのか。完全に姿を現わすタイミングを失い、龍之介はやや焦りを感じていた。
しばらく進み、次の角を曲がればマンションに着くといった所で龍之介は前方に不審な人物を発見した。サングラスとマスクで顔を隠している中肉中背の男だ。電柱の陰に隠れ、謙太と女性の姿を目で追っている。
──件の変質者か。
気付かれぬよう後ろからそっと忍び寄り、男の肩を掴む。
「あの二人に何か用ですか」
「ヒッ!」
突然声を掛けられた男は飛び上がって悲鳴をあげた。逃げようとしたが、肩を掴まれていて動けない。
「すいません、すいません、違うんです」
半泣きになりながら男が喚くので通行人たちの注目を集めてしまった。そして、その騒ぎを聞きつけ、前を歩いていた謙太も振り向いた。
「あれ、リュウ。なにしてんの」
龍之介に気付き、笑顔で駆け寄ってくる。
「怪しい人を見つけて声掛けたとこ」
「え?」
それを聞いて謙太は笑みを消し、龍之介が捕まえている男を睨み付けた。
しかし。
「トモ君! なにやってんの!!」
「ゆ、ユカちゃあん!!」
なんと、不審者だと思われていた男は謙太が送っていた女性の夫だった。
たまたま妻より早く帰宅した日に駅まで迎えにいったところ、知らない男と笑いながら歩いていたので、後をつけていたのだという。しかも、今日が初めてではないらしい。もしかしたら不審者情報の原因はこの人かもしれない。
「雨戸さんは親切で送ってくれてたのに、浮気相手だと勘違いしたですって!?」
「だ、だってぇ」
可愛らしい外見だが、随分気の強い女性である。夫である男性は終始タジタジの様子だ。
「すぐ声を掛けてくれればいいのに、そりゃあ不審者に間違われても文句は言えないわよ!」
女性の言葉は龍之介に刺さった。声を掛けられなかったのは自分も同じだからだ。
「うちのダンナがホントすみません!」
「いえ。こちらこそ疑って失礼しました」
そう言って、マンションの廊下で夫婦と別れた。
なんとなくギクシャクしたまま数日が過ぎた。
謙太は親友相手に発情してしまったことを気にして、出来るだけ顔を合わさないようにしていた。
龍之介も、謙太との関係をハッキリさせたいのに何も言えずに悶々としていた。
その間にも、謙太は度々仕事帰りにマンションの同じ階に住む女性と駅から一緒に歩いて帰っていた。この辺りに出没する変質者から守るためだ。
近所のよしみでボディガードの真似事をしている。そう思っていたのだが……
「あっ」
その日の夜、龍之介は調味料を切らしていたことに気付いて近くのコンビニまで買い物に来ていた。焼き魚に大根おろしを添えるのだが、ポン酢が無いことに気付いたのだ。醤油でも構わないのだが、謙太はポン酢を好む。だから、帰ってくる前にと急いで出掛けた。
一番近くのコンビニで品切れだったため、もう少し離れた店に行き、ようやく目当てのものを購入した頃に、謙太からのメールが届いた。
現在地は駅とマンションの中間地点。このまま少し待って一緒に帰ろうか。そう思っていた。
しかし、謙太が女性と談笑しながら歩いてくるのを見掛け、無意識に物陰に隠れてしまった。
不審者のこともあるから、最寄駅で会えば一緒に帰るのだと聞いていた。だが、並んで歩く姿は初めて見た。
小柄の可愛らしい女性だ。数軒隣の部屋の住人だが、龍之介はあまり付き合いがない。エレベーターで何回か行き合ったことがある程度だ。
その女性を守るように車道側を歩く謙太の姿に、少しだけ胸が痛んだ。
見つからないように隠れながら、薄暗い夜道を歩く二人を追い掛ける。
「なにやってんだ俺は……」
声を掛けて一緒に帰ればいいものを、何故身を隠してしまったのか。完全に姿を現わすタイミングを失い、龍之介はやや焦りを感じていた。
しばらく進み、次の角を曲がればマンションに着くといった所で龍之介は前方に不審な人物を発見した。サングラスとマスクで顔を隠している中肉中背の男だ。電柱の陰に隠れ、謙太と女性の姿を目で追っている。
──件の変質者か。
気付かれぬよう後ろからそっと忍び寄り、男の肩を掴む。
「あの二人に何か用ですか」
「ヒッ!」
突然声を掛けられた男は飛び上がって悲鳴をあげた。逃げようとしたが、肩を掴まれていて動けない。
「すいません、すいません、違うんです」
半泣きになりながら男が喚くので通行人たちの注目を集めてしまった。そして、その騒ぎを聞きつけ、前を歩いていた謙太も振り向いた。
「あれ、リュウ。なにしてんの」
龍之介に気付き、笑顔で駆け寄ってくる。
「怪しい人を見つけて声掛けたとこ」
「え?」
それを聞いて謙太は笑みを消し、龍之介が捕まえている男を睨み付けた。
しかし。
「トモ君! なにやってんの!!」
「ゆ、ユカちゃあん!!」
なんと、不審者だと思われていた男は謙太が送っていた女性の夫だった。
たまたま妻より早く帰宅した日に駅まで迎えにいったところ、知らない男と笑いながら歩いていたので、後をつけていたのだという。しかも、今日が初めてではないらしい。もしかしたら不審者情報の原因はこの人かもしれない。
「雨戸さんは親切で送ってくれてたのに、浮気相手だと勘違いしたですって!?」
「だ、だってぇ」
可愛らしい外見だが、随分気の強い女性である。夫である男性は終始タジタジの様子だ。
「すぐ声を掛けてくれればいいのに、そりゃあ不審者に間違われても文句は言えないわよ!」
女性の言葉は龍之介に刺さった。声を掛けられなかったのは自分も同じだからだ。
「うちのダンナがホントすみません!」
「いえ。こちらこそ疑って失礼しました」
そう言って、マンションの廊下で夫婦と別れた。
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お付き合いはお試しセックスの後で。
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