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追加エピソード
第5話:別格の存在
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*同居開始~本編最終話ラストに至るまでの話*
突然の抱擁に茫然としていると、謙太の手のひらが龍之介の前髪を掻き分けて額に触れた。
「……あれ、熱ないな」
「なんの話だ」
突拍子も無い言動に、龍之介は呆れて問い返した。
「さっき小千谷さんから、リュウが風邪だって聞いて」
「小千谷……ああ、管理人さんか」
「それにメールに返信ないし」
「あ、すまん。寝てた」
どうやら昨日の龍之介の言葉を信じた管理人から話を聞いて慌てたらしい。スマホを見れば、一時間ほど前に帰宅予定時刻を告げるメールが届いていた。返信がない上に風邪だと聞けば、部屋で一人で倒れているのではと心配する気持ちも分かる。
「昨夜あんまり眠れなかったからさっきまで寝てたんだ。悪い、まだ晩メシ出来てない」
「メシなんかいいって。なんともないなら良かった」
申し訳なさそうに俯く龍之介の頭を、謙太は笑ってわしわしと撫でた。
「なんか食いに行く?」
「あ、土産の牛タンあるぞ」
「いいね、じゃあ今日はそれ焼くか」
出張土産の牛タンはその辺の焼き肉屋で食べるものより分厚くて食べ応えがある。白飯とみそ汁さえあれば立派な夕食だ。
向かい合って食べながら、不意に謙太が笑った。
「実はオレもあんまり眠れなかった」
「おまえも?」
「今回の出張で同僚と同じ部屋に泊まったんだけどさ」
「え、まさか同じベッド……」
「んな訳あるか気持ち悪い。ツインだよ」
シングルを二部屋取るよりツイン一部屋の方が安くつく。これは会社の経費削減のためである。
気持ち悪いと聞いて龍之介は首を傾げた。自分とは平気で一緒に寝ているのだから、同僚とだって平気なはずだ。
だが、謙太はそれを否定した。
「……なんだろな、匂いが違うっつーか」
「体臭? タバコとか」
「いや、同僚も喫煙者じゃないし臭いわけじゃない。同期で仲も良い方なんだけど、同じ部屋に他人がいるのが落ち着かないっつーか」
「俺も他人だろ」
「リュウは別格」
「ふうん?」
これまで謙太は離婚のショックから人肌恋しくなっているだけだと思っていた。その寂しさを埋めるために人と寝たがるのだと。
しかし、今の話を聞いた限りでは相手は誰でもいいという訳ではなさそうだ。
──それはつまり、どういうことだ?
「……牛タン美味いな」
「美味いけど、もうちょい量が欲しいよな。次行ったら二箱買ってくる」
「え、また出張あるのか」
「来月下旬に行く予定」
「そっか」
その夜は二人とも朝まで熟睡した。
突然の抱擁に茫然としていると、謙太の手のひらが龍之介の前髪を掻き分けて額に触れた。
「……あれ、熱ないな」
「なんの話だ」
突拍子も無い言動に、龍之介は呆れて問い返した。
「さっき小千谷さんから、リュウが風邪だって聞いて」
「小千谷……ああ、管理人さんか」
「それにメールに返信ないし」
「あ、すまん。寝てた」
どうやら昨日の龍之介の言葉を信じた管理人から話を聞いて慌てたらしい。スマホを見れば、一時間ほど前に帰宅予定時刻を告げるメールが届いていた。返信がない上に風邪だと聞けば、部屋で一人で倒れているのではと心配する気持ちも分かる。
「昨夜あんまり眠れなかったからさっきまで寝てたんだ。悪い、まだ晩メシ出来てない」
「メシなんかいいって。なんともないなら良かった」
申し訳なさそうに俯く龍之介の頭を、謙太は笑ってわしわしと撫でた。
「なんか食いに行く?」
「あ、土産の牛タンあるぞ」
「いいね、じゃあ今日はそれ焼くか」
出張土産の牛タンはその辺の焼き肉屋で食べるものより分厚くて食べ応えがある。白飯とみそ汁さえあれば立派な夕食だ。
向かい合って食べながら、不意に謙太が笑った。
「実はオレもあんまり眠れなかった」
「おまえも?」
「今回の出張で同僚と同じ部屋に泊まったんだけどさ」
「え、まさか同じベッド……」
「んな訳あるか気持ち悪い。ツインだよ」
シングルを二部屋取るよりツイン一部屋の方が安くつく。これは会社の経費削減のためである。
気持ち悪いと聞いて龍之介は首を傾げた。自分とは平気で一緒に寝ているのだから、同僚とだって平気なはずだ。
だが、謙太はそれを否定した。
「……なんだろな、匂いが違うっつーか」
「体臭? タバコとか」
「いや、同僚も喫煙者じゃないし臭いわけじゃない。同期で仲も良い方なんだけど、同じ部屋に他人がいるのが落ち着かないっつーか」
「俺も他人だろ」
「リュウは別格」
「ふうん?」
これまで謙太は離婚のショックから人肌恋しくなっているだけだと思っていた。その寂しさを埋めるために人と寝たがるのだと。
しかし、今の話を聞いた限りでは相手は誰でもいいという訳ではなさそうだ。
──それはつまり、どういうことだ?
「……牛タン美味いな」
「美味いけど、もうちょい量が欲しいよな。次行ったら二箱買ってくる」
「え、また出張あるのか」
「来月下旬に行く予定」
「そっか」
その夜は二人とも朝まで熟睡した。
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