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本編
第4話:やっぱり自覚が無さ過ぎる
しおりを挟む「頼むから一緒にいてくれよぉ!」
奥さんに家出されてしまった謙太は親友である龍之介に助けを求めた。
この男、なんと今まで自分の子どもと二人きりで過ごしたことがないという。
「いや、寧花がトイレの時とか見てたし」
「長くても数分じゃねーか威張んな」
このレベルの低さである。
さすがに知らん顔して帰るほど龍之介も鬼ではない。謙太もまだ落ち着いておらず、父親とはいえ子どもの命を預けるには心許ない。これも陽色を死なせないためと割り切り、泊まることに決めた。
「はぁ~……なんかハラ減ってきた」
「リュウ、晩飯まだだったのか」
「久々の休みで昼からずっと寝てたんだよ。誰かさんから電話がかかってくるまでな」
「わ、悪い」
「なんか買ってくる。近くにコンビニあったよな」
「ああ、マンション出て左曲がったとこに……エッ待って待って、おまえコンビニ行っちゃうの?」
「ハラ減ってんだもん」
「オレ! オレが行くから! リュウはここで待ってろ!」
「いやいやいや、待てよ。おかしいだろ。久々に会った友人に留守を任すな。第一、ケンタが居ない間に寧花さん帰ってきたらどーすんだ。俺めちゃくちゃ気まずいじゃん」
「そんなすぐ帰ってくるならむしろ大歓迎だわ!」
それもそうかと龍之介が納得している隙を突き、謙太はさっさとコンビニに出掛けていってしまった。こういう時ばかりフットワークが軽い。
急に人の家で一人にされ、龍之介は部屋の中を見回した。さっきは必要にかられて家探しをしたものの、謙太の手前まじまじと見ることはできなかった。
いま龍之介が座っているのはリビングだ。カウンターの向こうにキッチンがあり、冷蔵庫や造り付けの食器棚が見えた。動き始めの乳幼児がいるからか室内は片付いている。部屋の壁には結婚式の写真や陽色が生まれた時の写真が可愛らしい額に入れて飾ってあった。
「なんで大事にしないんだか……」
絵に描いたような幸せな夫婦だったのに、と龍之介は思わずボヤいた。
更に見て回ると、部屋の隅に陽色のための絵本やおもちゃを片付けるための専用の棚があった。その一番下の段に紙オムツやおしり拭き、子どもの手が届かない上段には、爪切りや綿棒などの細々とした乳幼児用のお世話セットを発見した。とりあえず数日保つくらいの在庫はある。
「ただいま~」
「……おかえり」
そうこうしているうちにコンビニに行っていた謙太が帰ってきた。
両手に下げているビニール袋はパンパンだ。
「オレもメシまだだったし、とりあえず弁当買ってきた。好きなほう先に選んで」
「おう、サンキュ……そっちの袋は?」
「久々に会ったから飲み明かそうかと思って」
なんと、もう片方の袋には缶ビールや缶酎ハイ、おつまみなどが入っていた。
得意満面でローテーブルに缶を並べていく謙太に、龍之介はわなわなと肩を震わせた。感動しているわけではない。呆れを通り越して怒りが湧いているのだ。
「──こンの馬鹿ッ! 二人で酔い潰れてる間に陽色になんかあったらどーすんだ!!」
「え、でも寝てるし」
「夜中に急に熱出したりとかあんだろ!」
「……? ……、ああ!!」
言われるまでその可能性に思い至らなかったようである。
やはりコイツに任せてはおけない。
謙太の性根を叩き直し、父親の自覚を持たせてやると龍之介は心に誓った。
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